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ヒロインの立場が危うくなる

 王都の王宮は、完璧なまでに整えられた、巨大な「芸術作品」だった。


 心春は、アルベルトの隣を歩きながら、その美しさに息をのんだ。床の大理石は、完璧に磨き上げられ、靴音が「カツ、カツ……」と響く。壁に飾られた絵画は、一枚として乱れたものはない。だが、その完璧さは、心春の心を「ちりちり……」と刺した。まるで、完璧なプラスチックに覆われた、巨大な温室のようだった。


 「……大丈夫か?」

 アルベルトの声は、いつもの「硬い石」のように、感情を持っていなかった。だが、その声の奥底に潜む、かすかな温かさが、心春の心を「とろり……」と溶かす。


 「はい」

 彼女は、胸の奥にある、あの「いびつなパン」のレプリカを、そっと握りしめた。それは、彼の温かさそのものだった。


 二人が案内されたのは、広大な謁見の間だった。その中央には、豪華な椅子に座った、一人の男がいた。宰相、ザイフリート・アルヴァレス。彼は、完璧な笑顔で、二人を出迎えた。だが、その笑顔は、「プラスチック」のように冷たく、無機質だった。彼の瞳の奥には、すべてを支配しようとする、底知れない闇が潜んでいた。


 「ようこそ、『心を込める』パン屋の店員さん」

 彼の声は、「氷」のように冷たく、私の心を「きりきり……」と締め付けた。

 「早速だが、質問がある。君のパンは、なぜこの世界の魔法理論を揺るがすのか」


 ザイフリートの言葉は、「剣」のように鋭く、心春に突き刺さる。

 「それは……心を込めているからです」

 私の言葉に、ザイフリートは、完璧な笑顔のまま、首を傾げた。


 「心を込める? そんな曖昧なものが、この世界の完璧な魔法理論を揺るがすなど、ありえない」

 彼の言葉に、周囲の貴族たちが「ひそひそ……」と笑い始める。その笑い声は、心春の耳に「ざらり……」と響いた。


 「彼女は、辺境の娘だ。魔法の真理など、知る由もない」

 「完璧な魔法理論は、感情を排除してこそ成立する。彼女の力は、この世界の秩序を乱す『未知の変数』だ」


 心春の心臓は「きゅっ……」と縮こまる。彼女の立場は、この完璧な王宮の中で、危ういものへと変わっていった。



 心春の言葉が、私の心を「ちりちり……」と刺した。


 私は、完璧な魔法理論を確立するために、日夜、研究に没頭していた。私の師は、私に、感情を排除し、論理だけを信じろと教えた。


 だが、私の唯一の友人だった研究者は、私の完璧な理論の犠牲となった。彼は、私に言った。

 「ザイフリート、君の完璧は、なんの役にも立たない」

 彼の声は、私の心を「ぐつぐつ……」と煮え滾らせる。

 私は、彼が死んだ後も、完璧を追い求めた。だが、私の心は「からから……」と乾ききっていた。



 心春のパンの温かさが、私の心を「ざわ……」と掻き乱す。

 「……完璧を追求する私の研究を、あの女は、馬鹿にしている」

 私の心の中では、二つの感情が「がっちゃん…がっちゃん…」とぶつかり合っていた。一つの感情が「ひゅう…」と風を切り、もう一つの感情が「どすん」と重く落ちる。その不協和音は、静かに「むずむず」と胸を掻きむしり、やがて「ぐつぐつ」と煮え滾る怒りへと姿を変えていった。



 「アルベルト卿。君は、この女を擁護するのか?」

 ザイフリートの声は、アルベルトに突きつけられた「挑戦状」だった。

 「はい。彼女の力は、完璧な魔法理論を補完するものです。排除すべきものではない」


 アルベルトの言葉は、完璧な論理で構築されていた。だが、ザイフリートは、彼の言葉の裏にある「温かさ」を見抜いていた。

 「ならば、証明しろ。その『心を込める』力が、私の完璧な理論を凌駕することを」

 ザイフリートは、完璧な笑顔のまま、心春に告げた。

 「さあ、目の前で、パンを焼いてみせろ」

 心春の瞳は、絶望に「きゅっ……」と縮こまる。

 彼女は、震える手で、バッグからパンのレプリカを取り出した。それは、完璧な形をしていない、どこか「いびつ」な、けれど、温かい光を放つパンだった。


 「さあ、見せてくれ。君の『心を込める』力を」

 ザイフリートの声が、「がんがん……」と私の頭に響く。

 心春は、目を閉じ、心を込めて、パンを焼く。

 その瞬間、彼女の手から、「ぽかぽか……」と温かい光が放たれた。それは、王宮の冷たい空気に「ぶつかり合い」、微かな音を立てる。


 パンから放たれる微かな「温かさ」が、ザイフリートの冷たい心を「ちくり……」と刺し、彼の完璧な笑顔を「ぱりっ」とひび割れさせた。

 心春は、パンを焼き終えると、力が尽きたかのように、その場に「どさっ」と倒れ込んだ。


 「心春!」

 アルベルトは、彼女を抱きかかえ、王宮を後にした。彼の瞳は、もはや「アイスピック」のように冷たくはなかった。それは、心春を守るという、強い決意の「炎」を宿していた。

 ザイフリートは、パンから放たれた温かさに、過去の「温かさ」を思い出し、心の奥底で「ざわ……」と嵐が吹き荒れるのを感じた。

 アルベルトは、心春を抱きかかえ、決意を新たにする。「今度こそ、君を、そしてこの世界を、完璧な理論ではなく、この手で守る」と。



お読み頂きありがとうございます。

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この小説は、単なる恋愛ではなく 文芸、ファンタジー、スローライフ、グルメなど多岐にわたるジャンルを詰め込みました。その為、色々な方に楽しんでもらえると思っています。


どうか、宜しくお願いします。

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