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文章内で、数字が漢数字なのは、縦書きで執筆している関係ですのでご了承下さい。
架空の言語が出てきますが、掲載先の使用フォントの都合上、不揃い、または、半角に見えない場合があることをご理解下さい。
<登場人物 設定抜粋>
ア-kyihi・Zolu・サlutane/あーきひ・ぞる・さるたん
TeイLeki.Iv<w|アタタカ|IO(ていれき いんせんふんひくとずうすん ねん あたたか せつ いんぜる にいち)(帝歴1423年暖か節10日) Tokyo (とこ)(男)
体格:年齢に相応した、鍛えられ引き締まった体つき。見た目は中肉。
頭髪:黒が基本の焦げ茶の髪。分け目はないが、ざんばらではない。耳が半分ほど隠れる長さ。
顔 :釣り目気味。ややグレーが入った瞳。耳はとがっておらず、現代の日本人と同じ。鼻筋は通っており白人風。
性格:喜怒哀楽は必要以上に出さないようにしているが、身内のみの場合は、その分激しく出る。一方で、沈着冷静が服を着ている、と称されるほどである。この辺りは、皇太子となった関係もある。
安芸 智/あき さとし
西暦1980年10月10日 男
体格:ほぼ、日本人と言える体格。同と足の比率は半々。
頭髪:黒が基本の焦げ茶の髪。分け目はないが、ざんばらではない。耳が半分ほど隠れる長さ。
顔 :釣り目気味。ややグレーが入った瞳。耳はとがっておらず、現代の日本人と同じ。鼻筋は通っており白人風。
性格:荒くれ者はなりを潜めているが、こと戦闘になると箍が外れることもある。お人好し寄りで、来るものは拒まない。だが、出て行こうとすると引き留めようとするもろさがある。
桃井 美郎/ももい よしろう
西暦1953年6月18日 男
体格:昭和の漢であるためか、良く鍛えており、所謂おじさん太りはしていない。
頭髪:黒で短め。耳は出ており、七三で分けられている。
顔 :真一文字の細めの目。瞳は黒。鼻筋は見えない小鼻。やや薄い唇。
性格:生真面目であるが、温厚であり、計算高い。仕事の姿勢と同じだが、他者に対して厳しいところがある。
この性格は栄太、栄二郎とも似たようなもので、桃井家の宿命と言える。
遠くに砂塵が上がっている。これを捉えた者が、「Tekyiウ/(意訳:敵襲!)」と声を張り上げて伝えると、「ウzekyi○カナエ/NokyusiZoハtuzekyisulu○Tuタleイ/(意訳:遊撃構え! 目視次第射撃に移る。伝令!)」と、地球の東洋人に似た容姿の指揮官と思しき人物が伝令を走らせる。
エsuheliアタイlikyu(惑星の北半球にある大陸)。その南東の外れに位置する半島=hizasiho(同大陸南端にある半島の名前)の付け根に位置し、森林部の中央付近が開けた場所である。元々森であったSihohulesu(ヒザシホの首あるいは付け根にある森林地帯の名前)の中央を開墾したところである。その左右のやや小高い場所に弓隊を控えさせているのには理由がある。カzoSineLenezoウ(カゾシンとは、神の加護という意味があり、レンゾウとは日本語に訳すと連合になる)は、教義の解釈を何事もまっすぐに(直線的な意味にも捉えている)、あるいは真正面に突き進む、と言う行動しかしないためである。
上がる砂塵が近づくにつれ、聞こえてくる雄叫びも大きくなってきたのである。
「ⅰハneHuni、カナエ/∠ハneHuni、Zunezi○зハneアtonu、Tekyinezi○ZoleイTononi、|Tikyuzuneziハtuzekyi○(意訳:一番弓、構え! 二番弓、準備。三番以降も適時準備。号令と共に、逐次放つように)」
左右の木々の間に、指揮官の声が低く響いていた。
ドドドドドと、サイに似ているが馬のような走りをする動物のウナの大地を蹴る音が大きく近づいてくるが、射程を考慮しているのか号令は出ない。目視でウナを捉えても尚号令は出ず、数列の棒状で飛ばすウナが、とうとう森の中央に差し掛かっていた。と「ハtuzekyi/(和訳:放て!)」の号令と共に、無数の矢が直線的に、あるいは弧を描いて放たれたのである。
雨のように降りしきる矢の中、それでもカzoSineLenezoウは、一直線に進むのを止める事はないかのように見えた。挙げ句、途中で分断されても突き進んでいた軍勢が、突如として反転したのである。
「SukyosizenoカzuオHeluse○オイtinoナアオタナsuナ/(意訳:少しでも数を減らせ。追い打ちの矢を絶やすな!)」
分断され、迂回して進み始めた軍勢を伴って、軍勢は引き返していったのである。その情報は、軍を預かる司令官にも報告された。
「Hokyokyu/(意訳:報告!)」
「ナタKyuluカ/(意訳:また来たか?)」
「Luオ/ⅰ〇huHozoエ、カzoSineLenezoウnoHitoKyuカアluアラウエアluオウkyokyuZuneイザ、SihohulesunoTo-ハKyolonilu、アsizaHuniZuneイnoハtuzekyizeハnetene○Zeタneイ○イzizesu○(意訳:はっ! 一〇分程前、カzoSineLenezoウの筆頭国であるアラウエアluオウkyokyu軍が、Sihohulesuの突破を試み、我が弓兵部隊の攻撃により反転。撤退しました。以上です)」
「カカイタ○Zokyuluナ○(意訳:分かった。ご苦労だったな)」
「Luオ/(意訳:はっ!)」
伝令は敬礼をした後、拠点となっている城の司令部を出て行ったようである。
「ナleナle○イtuzeオsuzuzeSezekyiカ、ナタハナsiウsuluナイカ/(意訳:……やれやれ。いつまで直線で攻めてくるのやら、あいつらには学習する事がないのか?)」
ため息でもつきそうな程に呟いている人物がいた。「Heイカ○Sonoウナイウtuタエハイkyeナsene○(意訳:陛下。そのような言い方はいけません)」と、陛下と呼ばれた人物から見て長机の左に座っている人物が小言のように呟く。「Soウzesu○ナタzuハアイkyoluハオshitiカzaアrunosu○(意訳:そうです。彼らにもそれ相応な教義があるのですから)」今度は、右に座っている人物が同調するように呟いたのである。
――サナte○TuzinoイteハZosuluカ/(意訳:――さて。次の一手をどうするか……)
「イナ、オイtiオSiカkyeluカ○アイナ、Suzeniオsoイカ○Siカsi○ナハli、アsiラSezekyiカ○アイナ、Zosuluカ○(意訳:今、追い打ちを掛けるべきか、いや、既に遅いか。しかし……。やはり、こちらから攻めるべきであろうか……。いや、どうするべきであろうか)」
「Heイカ○オsoナザ、オイtiハSuzuniZuneziザTonoウナイ○Zesuno、アラnelusuluto、SihohulesunoNukoザアナザラカタkyuneneカ、Hiラnozu、ナlisuluナ○(意訳:陛下。恐れながら、追い打ちは直ぐに準備が整いません。ですので、改めてとなりますと、シホフレスの向こう側のなだらかな斜面か、平野部、に成りますな)」
「Heイカ○オsoナザ、ZokyonoウナイkyusaLikyuzituザsuカ○Kyizuナイザsu、ハkyuカカイタsulu○|アナliHoウteナイ《あなりほうてない》○(意訳:陛下。恐れながら、どのような戦術をとるか、ですが。木々もありませんし、幾分早く察知されます。余り手はないかと……)」
陛下と呼ばれた男。アラウエアluオウkyokyu(エsuheliアタイlikyuでは領土が広い王国であり、カzoSineLenezoウの筆頭である)との戦争をしている国、ア-kyihiZoTeイkyokyuの皇帝ア-kyihi・Zolu・サlutaneである。細くはない吊り目気味で、ややグレーがかった瞳。鼻筋が通っており地球の白人に近い小鼻、耳は地球人寄りで顔は丸顔。そこに、黒であるが光の加減で焦げ茶に見える頭髪は、襟足に向かって長くなっているため、耳が半分程隠れる長さとなっているようである。容姿のイメージは地球の東洋人に似ているようである。
この場にいる人物達は、海を渡って一ヶ月はかかる南半球にあるサ-zesutoタイlikyuから来ている者達だが、半島であるhizasihoにこの大陸唯一の拠点を構えている。そのア-kyihiZoTeイkyokyuは、既にサ-zesutoタイlikyuの統一を成し遂げている。よって、大陸=国である。
「Soウナluカ○ウnu-○(意訳:そうなるな。んー)」
「HuナneナHoウtetoSisiteハ、SihohulesuオZeteオziteカイsiteSunuZuneイsuluザオsuアliザsu○(意訳:無難な手としましては、Sihohulesuを出てから扇展開しつつ進軍するのが妥当かと)」
「ウ-○(意訳:んー)」
「Kyosozeハ、Hiliniliザオleluナイカ/(意訳:それでは、左右が遅れないか?)」
「Siウkyizotoハneザneアナliザナsuタ、イナサラTeカイnoSunuZuneイハ、カzoSineLenezoウザTukyekyoleluオsoleluザ○(意訳:小規模と判断ミスがありましたから、今更展開しての進軍は、カzoSineLenezoウに付け込まれる恐れが……)」
「Kyosoハ、Soウザナ○Kyosozeハ、Kyoナluタナ○(意訳:それは、そうだな。なんとも困ったものだ)」
サlutaneは、家臣達の言葉に同意しつつ、どう攻めるべきであるか思案していたのである。しかし、この悠長な作戦会議が、この後とんでもない事態を招くとは予想だにしていなかったのである。
数時間後。「アzeハカluハSitusuナ○(意訳:……議論はし尽くしたな)」とサlutaneが一言述べると、「Site、イカザsuluナsuカ/(意訳:して、いかがしますか?)」と家臣から指示を出すように促される。
「アsuタZezuイne○SilolizoザナカZuneイオзkyozeSunuZuneイsulu○|SihohulesunoHuni∠ShiウZuneイオ|SihohulesunoHiラnozuzeタkyunori、∠ナカZuneイザオziteカイ、ササエタkyuKyuラオkyuzeSunuZuneイ○NokyolunoShiウZuneイハ、ShilizoウshiloziSoナエluTikyuzuneziHiラnozuzeタイkyi○Hiラnozuオイkyusaサカイtoオnoサnelusulu○Kyosozeハ、ナカザnoサluウハアsiハサluウsulu○ナカShiウZuneイnoアnuナluハナselu○(意訳:明朝。砦から中隊を三つで進軍。Sihohulesuの弓兵二小隊をSihohulesuの平野側で援護させつつ、二中隊が扇展開後、支援位置まで前進。残りの小隊は、撤退時に備え順次平野側で待機。平野部を戦闘域と想定する。それから、中央の指揮は私が執る。中小隊の編成は任せる)」
「Heイカ/(意訳:へ、陛下!)」
「ナninoKyokyoze○(意訳:何もそこまで)」
「イナイ○Sokyokyozeザteluza、Sukyosiハカtuナkyuサsekyulu○(意訳:いや。ここまで出張ってきたのだ、少しは活躍させてくれ)」
「ナ-○イナイ、Siカsi○(意訳:はぁ。いや、しかし……)」
「ウnu-○(意訳:むむむ)」
「サナte○Hiサshili|ナタウーカハKyeneオナziエluナ○サライkyiハアザluzo○(意訳:なぁに。久し振りにあの馬鹿とも剣を交えたいしな。士気も上がるぞ)」
「ナ-/Heイカ○ウleshiShinazeイタkyiタイ○(意訳:あぁ。陛下。嬉しそうにしないで頂きたい)」
「Nu/ウleshiSoウナluカ/Soウザナ○オkyuタnonu(意訳:ん? 嬉しそうか? そうだな。よろしく頼む)」
翌朝。ア-kyihiZoTeイkyokyu軍は、前日決定した作戦を実行に移したのである。
「Heイカ○SunuZuneイnoZoleiオ○(意訳:陛下。出陣の号令を)」
「ウnu-○SunuZuneイ/(意訳:うむ。出撃!)」
雄叫びと共に、ウナが土煙を上げて砦の正門から怒濤のごとく走り出していったのである。その様は、勇壮であり、防衛に残る兵士達からも歓喜の声が上がっていた。
Sihohulesuを抜けると、予定通り三つの中隊がきれいに扇に広がり、更に、中隊の間隔を広めに展開していったのである。後を追うように、Sihohulesuの際に展開していた弓兵が徒歩で移動をはじめ、乱戦に巻き込まれないいちどりを確保していくのである。
走るウナの前方から、雄叫びが近づいてきていたのである。カzoSineLenezoウの筆頭アラウエアル王国軍であろう。そして、その先頭を疾走するのは、サlutaneが言っていた馬鹿。アlaウエアlu・lu・huluteハ-luであろう。
「Kyuluカ○Nu/(意訳:来たか。ん?)」
――Shiカleタ/ZutuHoウzeHiliniliオナziナラウカ/(意訳:しまった! ZutuHoウで左右を薙ぎ払うきか!)
これまでの経験則から、カzoSineLenezoウが大規模のZutuHoウ(日本で実現されている道具などの言葉はないが、架空であれば魔法に相当する言葉である)を使う事は考慮していなかったようである。サlutaneを始めとする誰一人として……。
「イナアラタlu、アラタshiイサluウハザseluナイzo○HuタtuサnoナカZuneイオサniナseluShiカナイ○Siカsi、オsuzuオShineziウsuluカzoSineLenezoウzaオkyuzo、ZokyonoウナHoウteオTuカウKyotoniイタluカ○アkyosolezaSeイtiウアluSeイtishinezo、カleナタハアカlunoカ○(意訳:今更、新たな指示など出せんぞ。両翼の中隊長に任せるしかない。しかし、真っ直ぐを信条とするカzoSineLenezoウがよくぞ、このような手を使う事に至ったか。これが成長であり進歩だぞ、彼らは分かっているのかな)」
カzoSineLenezoウも進軍してきている今となっては、進軍を止める事は出来ない。カzoSineLenezoウとの接敵を考えても、若干の進路変更に止まるため、左右の中隊も針路を維持せざる終えなかったのである。
――オカshiイ○ナniエZutuHoウオハtuzoウsuluナイ○TeカイハSunuイluSoウzaカNiエlunozaカ○(意訳:おかしい。何故ZutuHoウを発動させない。展開は済んでいそうに見えるのだが……)
疾走するウナ上で、サlutaneは未だに発動されないZutuHoウに違和感を覚えていたのである。ZutuHoウは、小規模であれば陣を展開する事で発動される。大規模になればなるほど、陣の展開に時間を要するため、展開完了までの維持も必要となってくる。つまり、ZutuHoウを使う者の疲労が激しくなるため、発動時期から逆算して陣の展開を始めるのである。しかし、陣の展開が完了しているように見えるのにもかかわらず、発動する気配がない事に疑問を感じたのである。
――ナsaカ、ナ○nisusesuナnoカ/イカne○ナタウーカオToneアluzaサkyiカ○(意訳:……まさか、な。……nisusesuなのか? ……いかん。あの馬鹿を止めるのが先か)
軽く首を振り、目を開き直して思いを振り払うサlutane。近しい人物なのであろう。その思いを余所にそれほど時間を要す事なく、両軍が接触したのである。これから無慈悲な戦場と化すと思われたその時……。
大気が揺らいだかと思った直後、雷鳴のような轟音が響き渡ったのである。
「ナnezaアkyosoleカzeハ○(意訳:……何だこの風は)」
「Heイカ-○(意訳:陛下ぁ!)」
近くで接敵していた中隊長が、馬ですら止まるのがやっとの風を受けながら、一歩一歩近づいてきていた。
「ウnu-○イkyusaTokyolozeハナイzo、ナnezazaオkyoluタカ○(意訳:うむ。戦闘どころではないぞ、何が起こった)」
「アカluアlisene○Siカsi、Kyonoナzeハ、HukyuTozasuアlisene○(意訳:分かりません。しかし、このままでは、吹き飛ばされかねません)」
「/ZineハZoウナタ/(意訳:! 陣はどうなった!)」
サlutaneは、発動されなかった陣の事を思い出したようであるが、既に、周囲は巻き上げられた砂塵で覆われつつあり、陣の確認をする事は出来なかった。
「カzeza、イナサラTuオkyuナlu○(意訳:風が、更に強くなって……)」
サlutaneの言葉を遮るように突風が吹き荒れ、戦場は災害現場へと変貌するに至っていたのである。
「ウnuオ-/(意訳:う、うおぉ!)」
「ナカZuneイオサ/ウnuオ-/(意訳:中隊長! お、おぉ)」
吹き荒れる風は唸りを上げ、戦場にあった、|TitekyiエneZineであろうが馬であろうが、吹き上げられる全てを巻き上げ、天高くに運んでいったのである。そして、ア-kyihiZoTeイkyokyuの砦とカzoSineLenezoウの陣地に残っていた|TitekyiエneZine達は、この世で、再び聞く事はないのではないかと言う程の、空から割れるような破裂するような轟音を聞いたのであった。
――ZokyoナzeHukyitozaサleluカ○イナイ、ZotinonitiタsuカluHoウteナイカ○(意訳:何処まで飛ばされるのか。いや、どのみち助かる事はないか……)
小枝のように天高く巻き上げられたサlutaneは、助かる事はないと確信したところで、風圧と気圧の急激な変化によって意識を手放すのであった。
*
ピチチチ。カァ。鳥のさえずりが聞こえる場所で、「んっ」と目覚めたかのような唸りを上げた者がいた。
――Kyosozeハ/(意訳:ここは?)
「イkyiteイluカ/Sinoziluナイ○Siナータ/(意訳:! 生きているのか! 信じられん……。しまっ……)」
呟いた人物は、突然、低い姿勢になって周囲を見回している。「イカneイカne○KyosozeハカZokyoカアカluナイnoni、Kyoエオアzelutoハ○(意訳:いかんいかん。ここがどこかも分からんのに、声を上げてしまうとは)」自分に言い聞かせるかのように、小声で歴戦の兵士ででもあるかのような事を呟くのであった。
――Hitoナzu、SiウイniKyeアイハナイNoウザ○(意訳:ひとまず、周囲に気配はないようだ)
「サナte、Zoウsiタnonoカ○イナイ、アkyosoleイzeneni、オオkyuアkyosonoHukyuアleluカzenoウtiカzeタsuカluNo-ザ○(意訳:さて、どうしたのもか。……どうやら、森か何かのようだな。……いや、それ以前に、よくあの吹き荒れた風の中で助かったものだ)」
感慨深げに呟いたこの人物は、やや笑みを浮かべているようである。どうやら、何かに巻き込まれたが、九死に一生を得た、と言ったところのようだが、思い出してしまったことから、顔面に汗が流れ始めていたのである。
「オウ○オnoウイザselusiタze、Hiアsuアseザザseluカ○ナア、アkyosonoNoウザKyotoザオkyoluタNozeアleザ、イタsiカタナイナ○(意訳:……おっ。思い出しただけで、冷や汗が出るか。まぁ、あのような事が起きたのであれば、致し方ないな)」
ザッ。草を践む音を出しながら、「とりあえず、森を抜けるのがよいだろうな。まだ日が高くてよかったな」と呟きながら歩を進め始めるのであった。
「Soウザ○アsuleluタza、カラザniKyeザタniハナイナ○アtonoハ、オsoナエluオタsiカtoluオSiteオkyuカ○(意訳:そうだ。忘れていたが、身体に異常は今のところはなさそうだな。後は、装備の確認をしておくか)」と、呟きつつ、主に腰回りをまさぐって確認しているようであるが、身につけているのは鎧なのであろう物達がぶつかる、ガチャガチャとした音が鳴っている。
一通り、確認を済ませたようだが、「Kyeneハ、TeハウナsuザNoウザ○ナア、カラnolunoイziナneザアluザ、ナnetoカナluカ○Toウkyotoハ、カheイnoアアseluzaナイKyotoカ○アkyosoleハ、KyuカsotoNozeアleザTuカウナイ、ナイオイカ○(意訳:剣は、手放してしまったようだ。まぁ、護身用の短剣があれば、なんとかなるか。問題は、金の持ち合わせがない事か……。それも、国外であるなら使えないから、なくてもよいか……)」
いつの間にか、ブツブツと独り言を呟く事になってしまっているが、どうやら本人は気が付いていないようである。そして、一通り確認が終わったようで、再び草をふむ音を立て、歩を進めることにしたようである。
しばらく、歩いていると、「Siカsi、KyizuToイウliSikyuサzuザナ○オウ/ウluイカniKyuサザluカ/Zoウナラto、サneナnoウtiカカ○(意訳:しかし、森と言うより茂みだな。おっ? 緩やかに下っているか? となると、山の中か)」
目を覚ました場所が、やや平らな場所だったようである。そこから、生い茂る草木をかき分けて進んだところ、明らかに斜面に出くわしたと言う事である。
――KyonoナSusunuzaオイカ、アkyosoleアlukyuハ○(意訳:このまま進む方がよいか、それとも……)
「ナアナnuイluShiカナイ○イkyuluTokyosiザイzeイkyuluカ○(意訳:悩んでいても仕方がない。行けるところまで行くか)」
茂みをかき分けつつ、足下の確認をおろそかに出来ないため、ゆっくりではあるが、少しずつ下っていくのであった。
どれくらい下ったであろうか。日も大分傾きかけていた。
「ナzuluイカ○アkyosonoウsizeluアliウsuザ、NozineハオnoナラナイNezo○(意訳:まずいな。この生い茂った状態では、野営もままならんぞ)」
独り言を呟きつつ、急く心を抑えてゆっくりと歩を進めていたが。別の場所から“ザッ、ザッ”っと音が聞こえたのである。
――ナnezaナタザイlu/アsiオtoloザハnezane、TitekyiエneZineNoウザカ/(意訳:何者かがいる? 足音から察するに、TitekyiエneZineのようだが……)
足を止めてしゃがみ込んだサlutaneは、音がした方向を警戒するのであった。すると、「誰か、いるのですか?」と、言葉のような音が聞こえた。
――KyotokyuカハカnesuteniKyotoアカluZekyiluナイ/ナnezaKyotokyuカカ/エsuheliアタイlikyunoKyotokyuカ、サ-zesutoタイlikyunoタイteteサsuイナイナハli○Zoウナteイluカ○(意訳:言葉が完全に理解できない? 何語だ? エsuheliアタイlikyuの言語も、サ-zesutoタイlikyuと大した差はない筈。どうなっているのか)
サlutaneはしばらく様子を見るつもりのようで、茂みに潜んだまま、次に行うべきことを思案しているようでもあった。
「誰ですか? 戦争は終わっておりますし、咎め立てする事もありません。いるのであれば出てきて下さい」
なんとも気の抜けたような、それでいて優しい声と言葉が、辺りに響いたのである。それでも、「ウnu-○ナハliカnesuteオKyotoアカluZekyiluナイカ○Toイウli、アtononoTitekyiエneZineniZeアウイカkyusiウハ、ナイカ○(意訳:うむ。やはり全てを理解できないか。とは言え、この後もTitekyiエneZineに出会える保証は、ないか……)」
腹を括ったサlutaneは、「ここだ」と言って立ち上がったが、薄暗い山林の中である。「どなたでしょうかね。もう少しこちらに来て頂けますか?」と、声は聞こえる範囲ではあるものの、人物の容姿まで確認できない距離ではなかったため、今度はサlutaneが、「イナイ、ナタカラKyuluイタkyiタイカ/(和訳:いや、そちらから来て頂けるか?)」と返したようである。
――さて、これでどう出るか……。
「? 訛り? ですか。まぁ、しょうがありませんね。僕の方から行きますよ。……罠とかしかけていないですよね」と、呟いた人物が何の躊躇もなく、ザッザッ、と茂みに足を踏み入れたのである。
――お人好しか……。
「KyikyokyuluナleluナイKyotokyuカザ、ZoウナラtoKyotoアカlusulu○Kyotoアカlu○アsiカラnoイkyulu○(意訳:聞き慣れない言葉だが、なんとなく理解した。……分かった。こちらからも行こう)」
数歩遅れて歩き出すサlutaneの表情は、どこかほっとしたものであった。
*
――ん? いかんな、まどろんでいたか。
目をしばたたかせ、きゅっと表情を引き締めていると、“コンコン”と金属製のドアがノックされた。覚めたばかりの意識で反応が遅れたものの「入れ」と声を掛けられたようである。
「失礼しま……す。安芸社長? 寝てました?」
「い、いや。そんな事はないぞ」
「……ふむ。まぁ、それについては問いません。ですが、そろそろ入社式が始まりますので、お迎えに参りました」
「あぁ。分かった。……しかし、何故、副社長自ら迎えに来た?」
「……ほう。貴方には、いろいろと秘密がありますよね。それを気遣っている、良い副社長だと思うのですが」
目を細めて威嚇するような表情は、穏やかな口調とのギャップが、逆に恐怖を煽っているようである。それは、安芸社長こと、安芸智がたじろぎつつ両手を前に突き出して押さえる素振りを見せた事で窺い知れる。
「分かった。降参だ。……全く、桃井家の人間は、どうして似たような反応をするのか」
「それは、貴方との付き合いが長いせいじゃないですかね」
今度は、あきれたような態度示す桃井副社長であり、ため息も聞こえ来そうである。
「さて、ん~。今年も新入社員を迎えられたな」
伸びをしながら椅子から立った智が暢気に話をすると、「はぁ」とため息が聞こえてきた。すると「何故ため息をつく」と苦情を一つ述べるのであった。
「それは分かりきった事ですね。三ヶ月後が心配だからですよ」
「何故だ?」
桃井副社長の懸念する事が、今ひとつピンと来ていないのか、分かっているようにも見受けられる表情である。
「社長が出向く必要のない、特別研修に行くからです。くれぐれも貴方の国の術を使わないで下さいよ。魔王と呼ばれた男なんですから」
「……その二つ名は使うな」
「そう呼ばれていたんですよね?」
「う~む。日本語に対応する言葉がなかったからな。……いや待て。魔王は栄太が面白半分に解釈しただけだ。本来は造語だ。汚れた者、曲がった者、人から外れた者を組み合わせただけのな」
「分かってますよ」
「あぁ、全く。……で、ZutuHoウの事は分かってはいるが、そんな先の事を心配しているのか。いつも通り、どうにもならなくなるまで使わんよ。破った事は……。ない……な」
「貴方の記憶の通り、最終手段としては事実です。考えないようにしますが、くれぐれもフォローが大変ですからお願いします」
「分かった。では行こうか」
立ち話をしていた二人だが、智の一言で足を踏み出し、社長室を出て行くのであった。