第1話
――葵と真白――
高校2年 季節は梅雨 赤神葵、下校中。
日課は毎朝、某放送局、某番組のお天気ニュースを見ること。
だが、高校生男子の俺は天気予報を見ているわけではない。俺はお天気お姉さんだけを見ているのだ。
だから、その日一日晴れようが曇りようがハリケーンが来ようが、
お天気お姉さんに夢中な俺は知りようがないのだ。
だから、だから…
今日、夕方から雨が降るなんて知らなかったわけだ。うん。
そんなことだから、今現在俺は下校途中にある古い感じの…
ていうかボロくなって今にも壊れそうな空き家で雨宿りしている。
もちろん中に入る勇気は怖くて出ないので屋根になっている部分にこじんまりといるわけだ。
「ちっ…悔しいから天気予報が間違ってた、ってことにしちゃおうかなー…ってそれじゃーお姉さんが間違えたみたいじゃん!」
空しい一人突っ込みが入った。
すでに15分ほどはこんな感じだ。夕立だしすぐ止みそうーとか思ってたのに…
仕方ない。
濡れ帰ろう!
「…いや、ぬれるのはなー…ちょっと寒いしなぁ~…」
また一人つぶやきながら、
意味もなく辺りを見回したりしていると
あれ?
なんかうちの高校の制服が見えたような…
幻術!?俺は寒さでとうとうそんなものを!?
だって、こんな住宅街から外れたところに家あんの学校だと…
ていうか、この辺りでも俺ぐらいだぞ!?
だが、その制服の小柄な影はどんどん近づいてくる。
これはチャンスだな!
よかったら入れてくれるかも!
しかも相手は女の子だ!
傘で顔は見えないけど、スカートは見えるからまちがいない!
一年生か?背が低いし。
とにかく!俺はラッキーだ!
なんてったて俺は自分で言うのはかなり痛いが、
けっこうないい顔している。
髪は暑苦しくないくらいに伸びていて、
筋肉は付くところにしっかり付いていて、いかにもスポーツ爽やか青少年的イメージ。
(本当はスポーツはやっていないけどね)
まぁ女の子ならあいあい傘ぐらい他人だろうが、
ぜんぜんしてくれるだろう的なルックスなのだ。
あ、これは一般論だからな。うん。
そんな自惚れたことを考えながら、近づいてきた女の子に声をかけた。
「あの!君、若葉校の子だよね!実は俺、傘なくて困ってて、それで…」
そこまで言って思わず言葉に詰まってしまった。
詰まってしまったというか、見とれてしまったのだ。
なぜなら、俺の声に気づいて傘を持ち上げてくれて、見えた…
初めて見えたその子が
あまりにも可愛かったから。
俺は言葉が出なかった。
何も言えずに、ただ
その子に見入ってしまったのだ。
少し、自分でも困惑しながら
だって俺が他人に見とれてしまうなんてこと
今までになかったから。
その顔はまだ幼さが残った顔立ち。
下手したら小学生に間違われてしまうぐらいにあどけない。
前髪が短く切られているから余計に。
そして腰まで届く長い後ろ髪を
二つに結んでお下げにしているのがまた
可愛い…
童顔だからか!?背が低いからか可愛く見えちゃうのか?
いやいやいや!
確かに175cmの俺の胸より下ぐらいの身長だが、
このくらいの背丈ならクラスにも数人いたし…
だから、とにかくこの子は
かわい…
「ねぇ。それで、何なの?
急に黙らないでください。
てゆうか誰ですか?不審者ですか。
こんな廃墟に一人で立ってるなんて。怖いです。」
「え!イヤ!イヤ!違うよ!
俺は2年の赤神葵っていいまして、
好きな食べ物はー…」
って!何を言おうとしているんだ俺!好きな食べ物って何だそのべたなテンパリ方は!
「………食べ物…。」
「…じゃなくて、その…
俺、傘もってなくてさ
よかったら入れてくれない?なんて」
言っちゃった。よくぞ言えた。
普段女の子相手でこんなに気を使っちゃうことってあるか?
なんかもう冷や汗ダラダラだぞオイ。この俺が…!!
断られないだろうがな!
そんなことを思っていたら、
女の子が自分のスクールバックをあさり始めた。
どうしたのかと思って見ていたら、そのバックの中からは…
「ハイ。これ。わたし折りたたみ傘も持ってるからこっち、
貸します。二人で入ったんじゃ濡れちゃうから」
と言って渡してくれたのは、
フリフリのレース 全体がピンク色
おまけに、
先端部分には可愛いウサギまでついている!!
そんな折りたたみ傘なのだ!
「あ、えっと…」
「この傘、かわいいでしょ?お気に入りなんだ。」
「う、うん!づんごく可愛いね!ありがとう!あはははは」
「えへへへへっ」
なぜこんな可愛いいかにも女の子な傘を!?
だって、君が使っている傘は水色の無地の傘じゃないか!!
なんで、折りたたみ傘はこんなにプリティーなのさ!
貸してくれたことは、
ものすんごく嬉しい。
だが、欲を言うなら
君がさしている無地の傘の方を貸してくれーーー!
だが、そんなこと、決して口にだしては言えない。
「…ほんとうに…ありがとう…あはっ」
そんなことを言う俺を不機嫌に眉をしかめながら上目使いで見てくる彼女。
「ねぇ、その傘でホントにいいの?」
「え?」
「まぁ、うれしそうで何よりデス。
嫌だったら、こっちの水色の傘を
貸そうと思ってたけど。」
「えぇ?」
「じゃぁ。さようならです」
「えぇぇぇぇ?」
そういって立ち去ろうとする彼女。
あほみたいな顔をしているであろう俺。
何か言おうと色々考えるが
頭が回らない
そして、一生懸命絞り込んで出た
俺の言葉は…
「あの!名前と学年教えて!この傘、明日返すから!」
立ち去ろうと歩き出してていた彼女だが、
その声にきょとん、と驚いた顔で振り向いた。
そして、その驚いた顔のまま、
ただ質問に答えてくれた。
「…………2年…。紀田真白……です…。」
小さい彼女は小さい声で
名前を教えてくれた。
それがはじめて俺が
ありえないくらい捻くれた女の子に出会った日。
小さくて可愛い女の子の出会った日。
真白に出会った日。
はじめまして!トラ、といいます!
初心者でして、どうしていいかわかりませんが、
どーーーか!暖かい目で見てください!
そして、第一話…けっこう恥ずかしい感じになってますが…///
こちらも、暖かい目で見てやってくだい!