第三話
「なんで・・・ってえっ?!」
立ち上がって前を見ると、私を覆うように結界があった。
「ティリアっ!会いたかった!無事か?」
「え、あなたは・・・」
「ああ、記憶がないからわからないか。俺の名前は・・・」
「ジオルド兄様・・・?」
「ティリア、もしかして俺がわかるのか?」
「き、昨日の夜に夢を見て思い出したんです」
「ああ、神よ!大切な妹、ティリアを見つけてくれてありがとうございます!!」
「ちょっとあなた!勘違いよ!わたしがあなたの妹よ!」
空気のように扱われたミミィが怒り、ジオルドの腕を掴んで豊かな胸元に押し当てる。
「たしかに姉はピンク色の髪で青い瞳だけど、貴族のわたしになにかあったら困るからって、色を変えたの。だからわたしが本物よ」
何も言わないジオルドの腕を取って豊満な胸を押し付け、耳に吐息がかかるほど近づいた。
「ほら、簡単にわかることでしょ?こんなみすぼらしい女が、貴族の娘の訳ないって」
ミミィから怪しい色の煙がでて、危険を感じたそのとき、声がした。
「ほら、ジオルド。お前はいつになってもダメだ」
「兄貴・・・」「レナルド兄様・・・?」
ジオルドの声と、私の声が重なった。
ジオルドと私の兄であるレナルドがミミィに近づく。
「お前、名前はなんだ」
「ミミィです!でも、本当の名前は・・・」
「黙れ、小娘。その程度で騙せるとでも思っているのか?」
「えっ?」
ジオルドとレナルドが纏う空気が一気に冷たくなる。
「今まで、ティリアだと名乗る女は腐るほど見てきた。だから、本物と偽物の違いぐらいすぐわかるんだよ」
「でも私は本物・・・」
「今、ミミィを貴族偽善の罪で逮捕する」
「ま、待ってください!私が本物です!」
「・・・じゃあ、俺たちの本̀名̀は?」
「ジオルド・ローレンツ様と、レナルド・ローレンツ様ですよね!それぐらい簡単・・・」
「簡単なのに間違えたんだ。・・・ティリア、答えをお願いします」
唐突に振られたため驚くが、昨日の夢で言っていたから、多分合ってるはず。
「ジオルド・レイ・ローレンツ様と、レナルド・グラディア・ローレンツ様と夢で言っていました。」
「姓と名の間にある名前はどういう意味か知ってる?」
「ジオルド様は、お母様のお名前を、レナルド様はお父様のお名前を頂いた、と言っていました」
「だってよ、妓女さん。」
「なっ、妓女って・・・!!失礼な・・・」
「あ?ティリアを先に虐めて、バカにしていたのはお前の方だろう!犯した罪を思い知れ!」
「あっ、あの!ミミィはミミィなりの方法で私を守ろうとしてくれていたんです!この地下室にいる間は、何もしなくて良かったし、バカにされることもなかったんです!」
地下室に沈黙が流れる。
「あまり酷そうな時は気を逸らしてくれたし、18歳になったら家を出させようと提案してくれたし、それに、ミミィが直接私になにかしたことはありません!」
「そんなことない!私はただ・・・」
「とりあえず、一家の身柄は預かる。手荒なことはしないと誓うから、これだけは許してくれ」
「・・・はい。絶対にしないでください」
それからふっかふかの馬車に乗り、あとから合流した兄も含めて侯爵邸へ向かうことになった。
「グレモリー、今回はありがとう。僕たちの大切な妹を見つけることができて、本当に良かった」
「気にしないでください、レナルド様、ジオルド様。当然のことをしたまでですし、本来ここに座っているのも許されない立場ですし。」
「グレモリー兄さんって、レナルド様とジオルド様の従者だったの?」
「ああ。あいつらにも黙っていたんだ。秘密にしておいて良かった」
「お兄様たち、色々ありがとうございました。」
「いいや、ティリアが戻ってきてくれて本当に嬉しい。」
「ティリアが気にする事はないさ。」
「ティリア様さえいれば十分です」
「グレモリー兄さんも私の兄です。敬語なんて使わないで、今までみたいに普通でいいですよ」
「ティリアは優しいな。・・・ありがとう」
私の人生は、ここからまた始まる。
続きは執筆が終わり次第〜