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5.わたし の Lv が あがりましたっ!



 地に足が付き、何処かの世界に移転したのだと知覚したと同時に、脳内でファンファーレ(?)が高らかに鳴り響いた。


 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 『あなたのLvが上がりましたっ!』

 ……………………

 ………………

 …………

 ……


 延々ずっと脳内で鳴り止む事無く繰り返し続くファンファーレとアナウンス音声に、気力をごっそりと奪われる。

 多分、今もの凄い勢いで、わたしの身体は強くなっているのだろう。

 何となくだけれど、自分の霊力や生命力が、信じられない勢いで上昇しているという嫌な自覚がある。

 でもさ、この脳内アナウンスは、本当に何とかして欲しいなぁ。気が狂いそうになってきた。

 特に、あのクソガキの声だって所が、ものすんごく嫌だ。できればチェンジを要求したい所だ。


 「……ああ、くそぉ。ようやく終わった……」


 拷問とも思える時間は、ホント、無駄に長かった。

 ボタンを連射モードに設定できるのなら、絶対に固定してしまいたかったくらいにウザかったなぁ、脳内アナウンス。


 これが所謂”初回ログインボーナス”っていう奴なら、最初から規定の最大Lvにしておけってーの。クソゲー過ぎるでしょ、全くもう。


 まぁ。ちょっと気になるし、スマホを取りだしてカメラを自分に向けてみる。

 鑑定アプリは……っと。

 うん、多分これかな?


 四条(しじょう) 美姫(みき)(15) 半神:♀


 Lv:13


 称号:神殺し

    超越者

    強者喰い

    異界の女神


 ……はいぃ?



 っていうか、何これ?


 何これっ?!


 何っじゃ、これぇっっ?!!



 画面に映し出されたわたしの顔と、そこに連なる文字列を見て、一瞬で思考が停止した。

 脳内アナウンスの数と全然合わないLvについては、全然解らないから一端置いておくか。

 (あんま良くは無いけれど)わたしの種族が知らぬ間に人間じゃなくなっているのにも、まぁこの際目を瞑ろう……

 でも、称号とやらに関しては、ちょっと目を背ける訳に行かないレベルでとんでもない事に。

 ”神殺し”って、なにさ?

 ”超越者”って、なんなのさっ?!

 ”強者喰い”って、なんか物騒な名前まであるしっ!!

 ”異界の女神”……うん。これ絶対に言及しちゃ駄目な奴だ……


 ……ああくそ。もう全然訳が分からないわ。これが何を示すものなのか、ちょっと誰か教えてくんない?


 あっ、そういや良いモンあるじゃん。こういう時こそ鑑定アプリさんに相談だ。


 神殺し:神を殺す偉業を成し遂げた者を畏れ讃える称号。

     ”上位的存在”と敵対した際、あらゆる行動に対し、天命に修正が入る。

     そして神々の手による呪詛は、その大半の意味を無くすだろう。


 超越者:”肉の器”の限界を超えし者に与えられる称号。

     成長限界(Lvキャップ)が100以上になる(その上限には個体差あり)。


 強者喰い:圧倒的強者を単身で見事討ち倒した勇者だけに贈られる称号。

      この称号を持つ者に敵対せし愚者は、悉く天運を失うだろう。


 異界の女神:この世の理の外に在りし女神。その総称。

       その神性は世界の法則をも乱す。          


 ……うへぇ。これ俊明(としあき)叔父さんの大好物『強くてニューゲーム』って奴だぁ。

 一週目(二週目なんかあったら嫌過ぎるけれど)からこんなので、本当に良いのかなぁ?

 でも、なんでログイン(?)と同時にあんなに何度もレベルアップのアナウンス流れたの?


 『……そりゃ、現界前に創世神たるぼくを繰り返し5回も殺せば、ねぇ? それだけたっぷりと経験値も入るし、ヤバげな称号も色々付くに決まってるってばよ』


 うンげ。あんのクソガキ、ずっと見てやがったのか。


 『まぁ、これはいわゆる”意趣返し”って奴なのかなぁ。って事で、おめでとう。半分神様になっちゃった君相手に、単体で立ち向かえる()()なんか、この地上ではもうホント片手の指で数えられるほどしかいないよっ。それこそ精霊王とか、最古の龍くらい?』


 クソガキ曰く、肉体を持つ生物達の成長限界値というのが、基本的にLv99までなんだそうで。

 その限界値を超える為の”試練”とらやがこの世界の何処かにあるらしいのだけれど、わたしはそれをルールごとすっ飛ばしてしまったのだとか。

 で、更に何度も限界を超えるLvアップを繰り返したせいで、肉体共々魂までもが勝手に神性を帯びてしまったそうな。そのせいで、Lvがまた何回か回ってこの数字なのだとか。

 もう君の存在自体が、あまりにも非常識過ぎる……等と、溜息交じりのクソガキに呆れられてしまった。それなんかすごくムカつくなぁ。


 『いやさ、ちょっと待って。考えてもみてよ。そもそも”創世神を殺す”だなんて、しかも軽く5回もってさ、普通にあり得ない事なんだからね?』

 「……確かに、仰る通りで」


 でも反省はしていない。特に回数に関して言えばあれは絶対に、クソガキの自業自得なのだから。無駄に残機増やしてんじゃねーよって。


 『しかも、それ”カタナ”だっけ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だなんて、どう考えても矛盾の塊過ぎる”祝福された武器”なんってさ、それもう一体どう対処しろと? 頼むからさ、本当に自重してよね? 辻斬りとかしちゃ、絶対にダメなんだからね?』

 「わたしだって、そんな無駄に殺伐とした血生臭い事するつもりなんざさらさらねーよ、コンチキショウ」


 このガキ……完全に狂犬扱いじゃないか。ざけンな。

 確かに問答無用であんたを殺してやったけれど、それだってちゃんとした理由があるんだぞ。解れよ。


 腹立ちついでにクソガキにスマホを向けてやる。


 人間神:ヒューム(万能神:アルメ=ヒティア)

 Lv:600

 称号:創世神(詐称)

    一級世界管理官


 ……頭が痛くなってきた。

 創世神って、完全にコイツの()()()じゃないか……っていうか、称号に付いてる(詐称)ってなんだよ、(詐称)って……

 

 「……おい、創世神(詐称)」

 『あ、バレちゃった? でも、この世界を主に管理しているのはぼくだからさ、あながち間違いでもないんだよねぇ……それに、この世界の人口の半分以上が人間種(ヒューマン)だし、当然信仰が一番篤いのもぼくの民。だからこの世界で、ぼくは一番強い神様なのさっ』


 ほほー。開き直りおったか、このクソガキめ。

 数の暴力と嘘を吐き続けてきたことで、事実を無理矢理にねじ曲げてみせたって訳ね……だから”詐称”って事なのかな? うん、納得した。

 っていうか、やっぱりどう考えても邪神、悪神の類いじゃねーか、こいつ。

 ダンディおじさま、こんな奴を野放しにしてて本当に大丈夫なのですかっ?!


 くそ。こうなったら、わたしが生きている間に、この事実を広めて世界の認識を改めさせてやる。

 そう決めた。



 ◇◆◇

 


 「……何て言うか。長閑よねぇ(遠い目)」


 ダンディなおじさまと創世神(詐称)のクソガキに見送られた先は、白い花が辺り一面に咲き誇る、まるでお花畑の様な小高い丘の上だった。

 遠目に、高い壁に囲まれたお城? みたいなものが見える。たぶん、あそこが街なのかも知れない。

 白やら黄色やらの綺麗な羽をした蝶々が飛び交い、小鳥達の楽しそうな鳴き声が、自身の鑑定結果で無駄にささくれ立ったわたしの心を癒やしてくれる様だよ。

 これがただの現実逃避なのだという嫌な自覚は、多分にある訳、なのだけれど。


 着慣れた高校の制服(冬服)に身を包み、手には、一族に伝わる霊刀<盈月(えいげつ)>と<暗月(あんげつ)>が在る。

 そういえば、ダンディ神様がこちらの”神”を刀に降ろすと言っていたけれど?

 <盈月>を鞘から抜き、いつも通り刀身に霊力を流してみる。変な”()”が憑いていない事を祈るわ。


 (わたくしどもは、大神(おおかみ)さまより貴女様へとお仕えする様、仰せつかりました。今後ともよろしくお願いいたしまする)


 わたしの脳内に、直接女性の声が響いてきた。

 懐かしい声と、全然争い事に向いていない、まるで日だまりの様な、穏やかで優しい暖かな霊気。これは幼い頃から記憶にある盈月そのものだった。


 (あたしも忘れてもらっちゃ困るな。これからずっと一緒だからね、美姫)


 こっちも、わたしの記憶通りの声としゃべり方……暗月だ。

 ダメだ、涙が出てきちゃった。

 あのクソガキのせいで、永遠にお別れしたのだと、永劫失ってしまったのだと……ずっとそう思って諦めていたのに。


 「戻って……この世界に、付いて、きて、くれたんだ……二人とも……」


 ((…………っ))


 嗚咽混じりのわたしの感謝の言葉に、二人は何も応える事無く無言を貫いた。


 えっ、まさか……?


 (……申し訳ありません。わたくし達は、大神さまの御力によって、新たにこの世へと生まれ出でた”神霊”にございます。正確には、貴女様の仰る<盈月>と<暗月>では……)

 (ぬか喜びさせちゃったみたいで、ホントごめん。たぶんだけれど、大神さまが美姫の記憶から、限りなく()()に近い”神霊(あたし)達”を作り出したんだろうって……)

 「そっか……そう、かぁ……」


 同じ記憶、同じ声を持っていても、やっぱり二人は”他人”なんだ。

 二人とも、今わたしに姿を見せてはくれないけれど、見た目もきっと同じ筈。

 でも、彼女達には悪いのだけれど、どうしても落ち込んでしまうのは、仕方が無いのではないだろうか?


 だがこれは、ある意味とても残酷過ぎる。


 ここまで”家族”と呼ぶに限りなく近しいレベルで”再現された他人”と、わたしは()()させられた、だなんて。


 ……どうしてこうなってしまった?


 この世界に着いてからのわたしの”後悔”は、まだまだ続いているのだと嫌という程に思い知らされた。



誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします。

ついでに各種リアクションも一緒に戴けると、今後へより一層の励みとなります。

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