表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

16.その裏で叔父さん。




 「ふぃ~、間一髪。ってところか……」


 今となっては、頭に”元”が付く神が支配していた領域で。


 ()()()()()()()()()、新たな神として君臨できるだろうおっさんが。


 「……おい、クソ駄神(ガキ)手前(テメ)ぇ、これ以上ウチの可愛い姪っ子周りの”因果律”。弄っちゃいねぇだろうな?」


 幼い頃からずっと可愛がってきた姪の四条(しじょう) 美姫(みき)は。

 この世界に堕とされる原因を作った”元”神の()()()によって。


 「……さぁね? ぼく、そんなつまんないことなんか。すぐに忘れちゃったなぁ。ああ、そうそう。君が奪った”神力”をさ、今すぐぼくに返してくれたら。ひょっとしたら、思い出せちゃうかも知れないよ?」


 ”わたし”という確固たる意思を持つ生物であれば、必ず備えて然るべき<精神防壁>を剥奪する呪いを掛けた上で。

 地上に降りた後の彼女の”因果律”に対し、不必要なまでに幾重も干渉し続けて。

 今は”半神”と成り果てた彼女であったとしても。恐らくひとりだけの力では、すでに2、3度軽く死んでいた筈だろう。


 ────男が、不自然なまでに歪み捻れてしまった彼女の”因果”に、最後まで気付くことがなかったら。


 そして、現に今も。

 冴えない現地人のおっさんの運命に直接介入したことで。彼女の未来を、無理矢理()()()()()()()()へ変えたところだ。


 あのまま手を拱いて見ていただけならば。恐らく彼女は、現地の衛兵たちを皆殺しにし、最後はこの国一番の賞金首へと成り果てていたのは明らかだ。


 元神が弄った彼女の”因果律”は、『転落』その一点目掛け集中していたのだ。


 「はっ! もう良い。なら手前はここで用無しだ。残りの神力を全て俺に捧げ、消滅(きえ)ちまいな」

 「……あっ、あっ。待って、待って下さいっ! 思い出しましたっ、思い出したからぁっ!!」


 頭部をがっしり掴まれて。両のこめかみ辺りに男の”本気”を感じた元神は。

 あっさりと抵抗の意思を放棄した。


 「……いや、だからもう良いって。奪った手前の神力を使って、俺が新たな神を創造すっから。よーするに、お前さんは解雇(クビ)だ。今までお勤めご苦労さん♡」

 「ちょぉっ! まーっ……!!」


 今は下級妖精にまで落ちぶれてしまった”元”人間神は。

 男の手によって頭部を握りつぶされて、そして果てた。


 『……事も無げに異世界の神を潰すか。何と傲慢なる人間よ、貴様は』

 「巫山戯ろ。これでも、俺は。お前程愚かじゃねぇつもりなンだがな……態々自分の”作品”に主役としてしゃしゃって来る”HENTAIオナニー野郎”たぁ、訳が違うだろうが」


 ”世界の管理官”たちにとって。

 例え分身(アバター)であったとしても、世界に”自身”を配置するのは最大の禁忌(タブー)とされている。


 「『俺Tueeeeee』の誘惑にゃ。例え上位存在であっても勝てる奴は、早々いねぇモンだかんなぁ。うん?」


 ────お前さんは、モロ()()()()()()()みたいだな。


 図星を突かれ、雷霆(ケラノウス)のアバターを纏った管理官は、二の句が告げなくなっていた。


 世界を調律・運営する神としては、種族的性格上、あまりに問題の多すぎる妖精に、無理矢理下駄を履かせ。

 そんな使()()()()()()を教え導く大神を演じることで、世界中の人々の信仰を一身に集める。


 「……お前さんの目論みは。まぁ、そんなところか?」


 確かに管理官(パートタイム神)の生活を、今後も続けていくよりかは。


 「進化の系統樹に割り込んで。真に”神の道”を目指す方が、まだ未来がある様に見えちまうもんなぁ」

 『…………ぬう』


 ────”神さま”なんてなぁ、そんな良いモンじゃねぇンだがな。


 男は吐き捨てる様に言い、管理官の頭を鷲掴む。


 「一度”世界”に置い(配置し)ちまった以上、例え管理官のお前さんでも、()()()()()()()()()()に過ぎん。権限を持たないお前さんじゃ、俺には絶対勝てんぜ?」


 同じ土俵上での闘いとなれば。

 男はどんな存在にも負けない自信があった。例えそれが、真に創世神であったのだとしても。


 「俺はな。地球に在る殆どの神を、この手で懲伏してきたのさ。お前さん。地球の神の、()()()()()()()()()()如きに化けて、なぁにを偉そうに」

 『ひっ……』



 ◇ ◆ ◇



 静寂に包まれた神域に於いて。

 男はひとり瞑目を続ける。


 「────これで、少しくらいは()()()()()があれば良いんだが……」


 世界を管理していかねばならぬ存在が、自ら世界の禁忌を破る。

 この前代未聞の状況に対し。


 「世界の抹消……やむを得ぬだろうが。できれば、せめて」


 姪の美姫の”今世”を、全うさせてやりたい。

 禁忌を犯した管理官は、この手で完全に消滅させたのだ。次の管理官が選出されるまでの暫くの間は、”時間稼ぎ”ができたと思っても良いはずだ。


 自身が甘やかしたせいで、命を落としてしまった可愛い姪っ子の生が幸多からんことを願い。


 「────琥珀(こはく)。来い」

 (喚んだかや、主さま?)


 男が契約を交わした上位的存在の中でも、自然霊最上位”精霊神”の一柱たる<白虎>だ。


 「此処に、この世界の神だったモノの()()()()()が在る。此を糧に、お前さんの()()()()をくれ」

 (……承知)


 姪が神力を得る前に掛けられてしまった”神の呪い”は、解くことなぞ絶対に不可能だ。

 彼女の魂が神へと変質してしまっている以上、男には。もう手の施し様が無い。


 ────であれば。


 精霊神の魂の一部と、この世界の神だった力の一部を用いて創った新たな”神”は。


 「……あんま相性良くなかった様だな。まさか……」

 (うむ……()()なるか)


 分け御霊とは、文字通り分身になるのだが。


 目の前の存在は。言うなれば……


 (我と主さまの子、だの)

 「よしとくれ。俺ぁ未だ童貞街道爆進中なンんだぞ」


 一度も”実戦”を経験すること無く、子供ができるなんて。そんな……


 「なぁ、琥珀……」

 (主さまや。自殺の相談ならば、今すぐ受けてやっても良いぞ)


 ────お前さん、今すぐ人間の姿に化けてくんね?


 そう続けようとした男の口は、明確過ぎる『命の危機』を前に、瞬時に回転を止めた。

 話を逸らすために、男は目の前の異変に眼を向けるが。

 

 「……しっかし。これはもう<白虎>とは呼べねぇな」

 (白黒反転するか。だが、属性は金であり。まさしく我の分け御霊である)


 漆黒の毛並みに、真っ白な縦縞を持ったソレは。


 「ま、良いさ。悪いが、お前さんの名付けはまだだ。良いか? お前の主となるのは、この娘だ。精々、俺の可愛い姪っ子から良い名を付けてもらってくれや」


 陰陽道に於いて”名付け”とは。

 文字が一つ異なるだけで。授かる権能(ちから)が大きく変化する。

 言葉に宿る”霊”を操ることを生業としてきた呪術師たちにとって、自身の僕となる存在への名付けは、特別な意味を持つ。




 黒い虎は。

 男の言葉にゆっくりと頷き、唸る様に吠えた。


 「────よし。ンじゃ、行ってこい」


 地上へと降りる黒き<白虎>の分け御霊へ向け、男は静かに両手を重ね祈った。



誤字脱字等ありましたら、ご指摘どうかよろしくお願いいたします。

評価、ブクマいただけたら大変嬉しいです。よろしくお願いします。

ついでに各種リアクションも一緒に戴けると、今後へより一層の励みとなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ