14.後始末をしましょう。
「皆さん。ご自分の衣服はありましたか?」
鉄格子の鍵を探すのも億劫になり、霊刀で全て断ったけれど。
結局は、全裸にさせられた彼女たちの所持品を探さなくてはならなかったので、正直あまり時短になってない気がする。
『いや、でも。捜索の眼は多いに越したことはない、訳だし……』
わたしが叔父さんみたく、受肉できるほどの霊力を貴女たちに供給できれば。きっともっと楽なンだろうけどねぇ……
本来、霊魂を現世に留めておくだけで、膨大な霊力を必要とする。
”肉体”は。それ自体がその必要とする膨大な霊力を生み出す発電装置なのだ。
だが、それは。自身の魂の維持を目的とするだけに過ぎず。それを他者にまで供給するとなると、また別の話となってくる訳で。
『今の美姫の総量でしたら。我ら二柱へ霊力を供給してもまだおつりが出る。とは思います。けれど……』
『それ以前に。美姫はやり方、知らないっしょ?』
Exactly。
伊達に修行をサボっちゃいないっての。
てゆか、わたしは。
霊刀の継承者。その最終候補に選ばれただけはあり、霊力の総量だけで云えば一族の中でも屈指の値を誇る……らしい。
まぁ、それを数字で表示できる訳もないんだから。端から実感もクソも無かったンだけど。
『そういう意味じゃ、ゲームって良いよね。単純に解り易くて』
そうそう。俊明叔父さんがあれだけハマる訳だよ。
あの人、数字が増えるのが何より楽しかったって云ってたし。貯金通帳の残高の桁数も、そんなゲーム感覚でガンガン増やしてるって……
また焼き肉でも驕って欲しかったなぁ。
あの人、本当に美食家だったから。色々と良い店知ってンだよねぇ……お陰でわたしも無駄に舌が肥えちゃってさ。
「ありがとうございます。ようやく、落ち着くことができました……」
「それは良かった。で、早速で悪いのだけれど。少しでも早くこの場を離れなきゃ不味いのは。皆さん理解できるよね?」
隠密行動。それが出来なかったわたしが、半分以上悪いだけの話だけど。
わりと派手に立ち回り続けたせいで。恐らく周囲には色々とバレている、はず。
多分、対外的な話。
こんなスラムの一角に。衛兵たちが大挙として押しかけることは、まず無いだろうとは予測するが。
その代わり、ここに常駐していた冒険者崩れのチンピラどもwith魔法使いのおかわりが、やって来る可能性は充分に有り得る。
まぁ、でも飛んで来る攻撃魔法は、全て霊刀で斬り伏せてやったから、爆発とかの人災を周囲に出さなかっただけ、今のところマシだったと思いたい……けれど。
『霊力で形成した結界では弱体術は防げなかったのに。霊力を込めた刃で攻撃魔法は斬れる……ってさ。なんか凄い矛盾を感じるのは、あたしだけかなぁ?』
安心して<暗月>。わたしも色々ツッコミたいって心底思ってるからさ……
何処かで腰を落ち着けることができたら、絶対に。
あンのクソガキに連絡を付けて、今までの文句を、散々に云ってやるんだ。その序でにあんニャロの残機を2、3……いや、5は最低削ってやるし。
それでまたわたしのLvが上がっちゃっても、それはもう仕方が無い。
何なら、もういっそのこと。
アイツを使ったパワーレベリングのひとつでもしてやるさ。今、半分神さまになっちゃってンなら、全部神さまにでもなってやろうかねぇ?
『何か。色々屈折してンねぇ、美姫?』
うっさいよ。こんな目に遭わされたら、どんな純情真っ直ぐだった人間でも、螺旋階段なんか目じゃない程に複雑怪奇にひン曲がるってぇのっ!
『……本当に、申し訳ありませんでした。美姫……』
ああ、ごめん<盈月>。
別に貴女を責めている訳じゃ……ってゆか、そもそも貴女たちも”被害者”でしょって話で。
そして目の前の彼女達も、クソガキと”この世界”の被害者だ。
この辺りでは珍しい黒髪。
そんな、彼女達には一点の非も無きつまらない理由で。
拉致され、身ぐるみを剥がされて。
「私たちは、”商品”なんだって……」
そのお陰で、最後の一線だけはギリギリ護られた。ただそれだけが救いだったとか。どこまで舐めてやがンだって話。
常識アプリさんによれば。
奴隷身分へと堕とされた人間には、”隷属の首輪”という魔導具が取り付けられるのだそうで。
「────そういえば。ゴツい首輪が、幾つか落ちてたわね?」
重さが良い具合だったので、投擲武器としてかなり重宝したのだけれど。
基本的に、これを単純所持しているだけで。この国では犯罪者扱いになるのだとか。
……なのに、ここにはゴロゴロと落ちてるって事実一つで。どうにかしょっ引けないものなのかしら?
『無理、だろうねぇ。ここって、領主さまお墨付きなんでしょ?』
『なるだけ早期に、この領都から出ることを提言いたします』
……念の為、撮っとこ。
この画像、もしかしたら何かに使えるかも知れないし。
◇ ◆ ◇
捕らえられていた転生者たちの中でも。
「────諦めていた、のに」
「本当に、手元に戻ってきた」
わたしと同様の反則が、彼女達の所持品全てに施されていた様で一安心。
何より。
「最初は、無理矢理引き剥がそうと乱暴されたのですが……」
衣服も、わたしのセーラー服と同じ様に。
「……うん。ちょっと引っ張った程度じゃ、なんともなンないね」
どうやら、”破壊不能属性”が付いている臭い。
……であれば。
「これから多少の暴力沙汰に巻き込まれても、強気で行きましょう。少なくとも、その衣服の上からでしたら、刃が通ることはありませんので」
チンピラどもとの乱闘の際。ドサクサの<麻痺術>をまともに食らい、本当にヤバかった一瞬があったのだけれど。
強烈な手斧の一撃は、布地に阻まれて。
ちょっとだけ、痛かった。
その程度で済んだのだ。
『あの時は、本当に焦ったよー』
『ですから、わたくしは気を抜かないでと……』
……だから、ごめんて。
でも、本当に。魔法対策だけは、何か考えておかないと不味いと思う。
叔父さん謹製の護符は”反則”のお陰で量産ができるのらしいけど。所詮は”1回だけの使い切り”なのだから。戦闘中に在庫切れ……なんて事態も、充分に考えられる。
────飛び道具、何個かパクっとこ。
街の外なら。その辺の石ころひとつで、なんとかなるだろうけど。
『……ね、美姫。”銭形平次”みたいにさ。お金を投げるとかじゃ、ダメなの?』
ダメに決まってンでしょうが、勿体無いっ!!
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