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00.だからどうしてそうなった。


「僕と夫婦になってよ」


「……」


 昼下がりの街道。行き交う人の数も多い。

 そんな中、見目麗しい男は、スンとした表情で私にそう言ってきた。

 

 突然のことに、今さっき受け取った昼食のベーグルを危うく落としかけた。気のせいか、ベーグルを手渡してくれた屋台のおじさんの視線が痛い。

 私は、おじさんにお礼を言って、足早にその場を離れると、隣に並んできた男性を見返すことなく口を開いた。


「なんの冗談ですか?」

 

「冗談なんかじゃないけど」

 

「さっきの話、聞いてました? 私、結婚して夫もいるんですけど……」


 男性は、こくりと軽く頷く。


「それに、もうすぐ15歳になる子供もいるって言いましたよね?」


「だから?」


 ――いやいや、だから? じゃなくて、


「困ります」


「僕は困らない」


 普通は、相手に夫や子供がいると分かれば諦めると思う。だけど目の前のイケメンは、こともあろうに、私がその話をした後で夫婦になろう。と言ってきた。

 例えばそれが、好きでたまらない相手ならまだ頷ける。だけど、私と彼とは出会ってそれほどたっていない。その上、今に至るまで……いや、今現在も、甘い雰囲気は一切感じないし、これまでそんな素振りなど見せなかったのに。

 

 もしかして、この人は、人のものだとわかった途端にそれが欲しくなってしまうという、いわゆる略奪愛的ななにかが趣味だったりするのだろうか?

 異世界に転移したとわかった時も困惑したけど、どうやら今の私の頭の状況も、思った以上に混乱しているらしい。

 上手く考えがまとまらず、とにかくダメだという答えしか浮かんでこない。

 揶揄からかわれているのかもしれないと思いながらも、相手にどうやって納得してもらおうかと、必死で理由を探した。

 

「そっちは困らなくても、こっちが困るんです!……第一、重婚は日本では禁止されてるし」


「認められてればいいのか?」


「そうゆうことじゃ――」


 思わず立ち止まり、彼の方を向いて抗議しかけた私に、彼はこうも続けた。

 

「そもそも、ここは日本でもない」


 その通りなだけに、言葉につまる。


「……だけど、私とあなたとじゃ……釣り合いだって取れない」


 見た目的に、なにより年齢的にも。と、声には出さず、心で思う。


「僕は、そうは思わない」


「……」


 だめだ。"ぬかに釘"とはきっとこのことだ。

 涼しい顔で、「他には?」とか言われてしまい、こうなると、驚きや焦りを通り越してため息が出てしまう。

 今の彼からは、何を言ってもまったく通じない。という感じがヒシヒシとする。

 

 彼には、この世界に来てすぐ、危ないところを助けてもらった。ちょっと口は悪いけど、いい人なんだと思っていたのに……。

 

(実はこの人が一番厄介な人だったのかもしれない……)


 背中に伝う冷や汗を感じながら、そんなことをふと思って途方に暮れた。


 *


 *


 *


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