I wanna be a 花火
やりませんけど、花火の匂いは好き。
どかぁんって夜空に派手に咲いたら
ぽかぁんって 他人事のように
みんなが見上げる打ち上げ花火じゃなくて
ぱちぱちって火花を散らしつつ地面を
ちょろちょろって走り回るネズミ花火でもなくて
あたしは手持ち花火になりたい
チョコレートコーティングされた
スティックタイプのビスケットみたいなやつよりも
先っぽにガリみたいなひらひらのついた
やつが望ましい
パチパチと火花を吹きながら
あなたの手の中で燃え尽きていくのだ
私が燃え尽きていくまでは
あなたはあたしから手を離さないでいてくれるし
手を離さないでいてくれるあいだは
あなたはあたしから目を離さないでいてくれる
あたしの吹いた火花を見つめていていてくれる
そして 火花を吹き終えたあたしが
まだ消すことができずに抱えていた
最期のくすぶりを
あなたは水を張ったバケツに突っ込んで
じゅって音をさせて そのくすぶりごと
あたしを葬ってくれるはず
ねえ ねえ それって
わりと素敵な終わりかたじゃないかしら?
だから あたしは
打ち上げ花火でも ネズミ花火でもなくて
手持ち花火になりたいんだよ
それも できたら
先っぽにガリみたいなひらひらのついたやつだ
チョコレートコーティングされた
スティックタイプのビスケットみたいなやつよりも
夏の夜の香り。