たからもの
突然襲うのは虚無感と希死念慮
それでもここまで歩いてきたのはなんでかな
別に理由なんてない
なんとなく歩いただけで、たまたまここにいて、それで今消えたがってる
終わらせたいと願った
何度も願った
そのたびに何度も忘れた
でもやっぱり何度でも襲ってくるのは
自分が愚かだからかな
同じことに何度も何度も悩んで時間を使って
誰かに必要とされたくて
でも否定ばかりの日々で
たまにされる肯定も信じることができなくて
不器用な僕たちは
いつもいつも、本当は消えたがっている
今だって泣きそうなのをこらえて喉の奥が痛いんだ
辛いんだ
苦しいんだ
面倒くさいな
心が
なければよかったのに
心なんて
目を瞑る
嫌なことばかり思い出す
でも、消えたいと願うこの体が、動いているのがわかる
心臓の音
ほらちゃんと
動いてて、
ちゃんと生きることができていて
残酷だね
でも、今はこれだけが頼りだ
これがないと、前もわからない
右も左も見えないよ
ねぇ、ねぇ、お願いをひとつだけ聞いてほしい
儚くて泣いてしまうかもしれないけれど、
幸せな思い出を探してみてほしい
どんな方法でもいいんだ
今すぐにぱっと思い出せるならそれでもいいし、
アルバムを眺めて思いを馳せるのもいいね
愛された記憶や、
悔しかった記憶や、
誰かの胸で泣いた記憶や、
温かい布団で、ゆっくりと眠れた日や、
柔らかい日差しの中を歩いた日や、
好きな天気の日、
占いが1位だった日や、
目標を達成できた日、
ねぇ、なんだってある
今は見えない
あった記憶を、探してほしい
ねぇ、今君の手には何もないと思うかも
でもね、その心にあるのは、
その温かい気持ちや、じんじんする胸や、
熱い目頭や、苦しいけど、必死に息をしようとする
その
過呼吸や
消えたがった体が持つ、
消えたがりの君が持つ
たからもの
何もないと思った君の足跡に
ひとつでもそれがあるから
ぜったいに
あるから
ねぇ、
あるんだよ
だから、お願い
待って、
行かないで
まだ、もう少し
それを、持ち続けてよ
大丈夫だよ
だから今だけは、
ゆっくりおやすみ