燃える剣は果たして本当に産廃なのか エピローグ
後日。ルーファスはフィンカ魔道具店にいた。成り行きを説明し、やはり短剣を売却したいという旨を伝えると、フィンカは大きく頷いた。
「やはりそうなったか。みんなそうだ。いくらエンチャントの危険性を言っても聞かない。自分なら他の誰もが予想だにしなかった使用法を思いついて、華麗に使いこなしてみせるとな。そしてことごとく失敗する。過去に起こった惨事を集めるだけで、四代悲劇に勝る話が書ける。無傷で済んだだけ君は幸運な方だ」
ルーファスはため息を吐いた。「あんたの言う通りだったよ。愚者は経験から学び、賢者は歴史に学ぶとはよく言ったもんだ。もう炎エンチャントには手を出さないよ」
「うむ、そうするのがよろしい」短剣の代金、金貨12枚を差し出しながらフィンカが満足げに言った。「素人がよく分からないまま魔道具に手を出すのは危険だからな」
「でも、魔道具が役に立つのも事実だとは思わないか?」ルーファスは期待を込めて言った。「僕があそこであの短剣を使わなかったら、ゴーレムは倒せなかったんだから。他のを試してみる前に、魔道具を使うのは一切合切禁止というのは、いささか性急に過ぎると思うんだ」
「うん?」
「そこで今度は、この雷の爪というものを使ってみることにした」
ルーファスが鉤爪に装着した雷鳴色の魔法鉱石で出来た爪を見せると、フィンカは怯えたように後ずさった。
「それは?」押し殺した声でフィンカがたずねた。
ルーファスは得意げに言った。「これの凄さが分かるみたいだね。この爪は雷のエンチャントが施されていて、これで敵を攻撃すると、相手を動きを電撃の力で封じることができるんだ」
「だが、雷のエンチャントには常に使用者が感電してしまうという危険性が──」
「あ、いけね!」ルーファスが彼を遮って叫んだ。「そろそろ依頼の打ち合わせの時間だった! 行かなくちゃ! ありがと、また来るよ!」
そう言って、引き留める間もなくルーファスは出ていった。
取り残されたフィンカは唖然と扉を見つめた。一体何を学んだというのか。それから頭痛がして、フィンカは額を抑えた。紅茶を飲んでも憂鬱な気分は晴れない。




