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8・ジンギスカンキャラメルメロンパンはワシントン卿の手作りです

 いきなりタケルの文机に積み上がったホーク卿お手製竹の子御膳弁当・20食分。




「あら、戻って来ましたわね」


 ホーク卿は、チラリと文机を見つめて、昼食の片手で首を押さえ込んでいる暴れる鹿からロース肉を割り箸で切り分けて口に運ぶ。




「今日は公務員ごはんの収録日だから、三毛猫ムサシ先輩。竹の子御膳弁当を特別注文したんじゃなかったっけ?」




 シンは弁当のスイカをしゃくしゃく皮だけ食べて、赤く丸い果肉をゴミ箱へ捨てる。




「そうですわよ。必要ないのなら捨てますわね」




「それウチのレラとミラの好物なんだけどもらっていい?


 定価銀貨5枚だっけ?」




「ええ、仕出しで出す時は銀貨5枚ですわよ。


 シン王子ですから特別価格の1つ金貨1枚でよろしいですわ」




「倍額かよ。まあ、いいや。


 ミラの複雑なジレンマ顔が見られるなら愉快だし、レラはバイト先でもあるから媚び売っといた方がいいし。


 はい、金貨2枚」




「お買い上げありがとうございます」




 シンが親指で弾いて渡した金貨2枚をホーク卿は、そのまま振り袖のタモトの中でキャッチし、食事を進める。




 ちなみにワシントン卿は、昼休み開始3分で狩り、足を吊るした巨大首長竜であるブラキオサウルスの肉を薄く削いで大皿に落とし、隣のワシントン卿からその隣のワシントン卿へと手渡しリレーしている。




 アララギ王が行方不明な事と、スタンピード予想と公務員達の過労がなければ、穏やかな昼休み休憩時間である。




 カララっと空間をアルミサッシの小窓を開ける動作で開くと、シンは中学校で給食の四角い紙パック牛乳を、ストロー無しでコップのように飲んでいるレラの肩をちょいちょいと人差し指で叩いた。




「なに?


 あ、シン兄ぃか」




「ホーク卿の竹の子御膳弁当買ったんだけど食べる?」




「食う!


 絶対に食う!


 給食持ち帰っても食う!


 米つぶ器についていても、勿体ないと思わずにおとなしく給食をタッパーに全て詰めて持ち帰って、明日の朝ごはんにしても食う!」




「レラちゃん…」




 ガッツリ1人だけメイクしているレラの近くで給食を近くの食べていた生徒数人がドン引きしたが、レラはそれよりも美味しいごはんが無料で食べれる事を優先する。




「そこはみんなと仲良く給食食べなよ。


 弁当なら時間停止魔法かけてレラの部屋に置いておくから」




「シン兄ぃが無免許魔法やるなら、金額次第だけどもっと買ってくれない?


 あと配達先は店の方で」




「今のレートで弁当1つで金貨1枚で、あと18コあるかな」




「夕方6時魔法解除で全部。手数料込みで1つ金貨5枚なら楽に出せる」




 レラの言葉にホーク卿は、シャンパングラスにミントを添えて盛り付けた鹿の脳ミソの後の箸休めに、鹿の肝臓を割り箸で切り分ける作業を一時中断して、メモ帳に『弁当1つ金貨3枚』と書いてシンに見せた。




「金貨4枚、弁当18個分帰宅してから俺に払ってね」




「オッケーシン兄ぃ愛してる!」




「わかってるって、レラは本当にホーク卿の料理を愛してるな。ホーク卿本人は苦手なのに」




 相性の良い三つ子なせいか、シンはレラの本音の解釈を外さない。




「というわけで、ホーク卿。


 弁当18個で口止め料込み金貨100枚!」




 メモ帳に弁当1つ金貨6枚と書こうと万年筆に手を伸ばしたホーク卿は、間に合わずに机に詰まれた金貨100枚に大きく舌打ちした。




「すげえ……」


 シンとホーク卿のやり取りを見ていた公務員達から声が漏れた。




 最速の射手にスピード勝負でシンが勝った派と銀貨五枚の弁当価格爆上がり具合や、最安値の馬付き小型馬車なら買える大金を即座に積み上げる経済力派だったりするが、号泣しながら戻って来た三毛猫ムサシ達が楽しみにしていた昼御飯が転売され、力なく仔猫鷹隊20名が崩れ落ちた事に気づく者は、「粗茶であります」と抹茶や紅茶を各公務員に配っている沙羅を観察している零とタケル以外居なかった。




 その後、売店で手付かずで売れ残っていたオリジナル新商品のジンギスカンキャラメルメロンパンを、涙などの塩分を添加して食べるの仔猫鷹隊の20名は、自業自得の油っぽく焦げまくった玉ねぎ風味のかなり塩辛いパンの昼食でしかなかった。




 ざまぁ。

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