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怨嗟の魔女  作者: ルキジ
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13 オーガ討伐戦・前

 ギルドに指名されてから日が経ち、ついに大規模オーガ討伐戦の日がやってきた。言われた通り朝から冒険者ギルドに行くと、いつもと違い人が沢山いて空気がピリ付いている。


「はーい皆さーん、今日はお集まりいただきありがとうございまーす」


 ギルドに入りしばらくすると、いつもの受付の人が声をあげて冒険者の注目を集め出した。


「オーガ討伐戦の説明をするので注目したくださーい。…はい、大丈夫です。じゃあマスター、お願いします」

「あー、ギルドマスターのブロウだ。早速本題に入るが、今回はこの町近郊の森の浅い場所で本来生息していないはずのオーガが見られたことから大規模に討伐することになった。これまでの報告や先遣隊の情報で、上位種であるブラックオーガも確認されている」


 冒険者たちが静かになり注目が集まったところで受付の人はギルドマスターに話を振り、マスターは話し始めた。マスターは2mに届きそうな身長を持つ男で、顔にはシワが刻まれ始めている。


「では今回の作戦を説明する。今回集まってくれた諸君らと私を加えた40名を4人ずつの10班に分け、10区画に分けた森の浅い層の区画一つ一つでオーガを探し殲滅するというものだ。森の区画は後で地図を配布する。では、班を発表する」


 今回の作戦が簡単に説明され、班が伝えられる。私はジェイルさんと同じ班で、森の奥に寄っている方の区画で殲滅をすることになった。しかし作戦とはいえ大分脳筋なものだ。人海戦術でゴリ押すとは。


「では、作戦を開始する。本日の12時に一旦帰還し点呼をとる。森につき次第殲滅を開始するように。解散」


 班の発表と地図の配布が終わり、冒険者たちは班で固まって森に向かい始めた。


「あ、いたいた。ウルカちゃん、こっちだよ」

「あ、ジェイルさん」


 ジェイルさんに呼ばれ、私も班に合流する。


「じゃあ向かおうか。ああ、森に行く前に自己紹介ぐらいはしておこうか。私はジェイル。ランクはB+で剣を使うよ。近距離のアタッカーだと思ってくれればいいよ」


 ギルドを出て森に向かう間に自己紹介をすることになった。戦闘の時連係を取ったりするのに大事なんだろう。しかしジェイルさんは格闘家じゃないのか。まあ試験と違って本気の戦闘だと剣を使うのだろう。


「流石にみんなジェイルさんのことぐらい知ってますよ。強いし町じゃ有名人ですよ?ま、じゃあ次は俺が。俺はシールって言います。ランクはC+です。戦闘は弓使うんで、まあ後ろから援護ですかね。よろしくです」


 少し調子に乗っていそうな風貌の男が続く。私は近距離のアタッカーということになってるし、この班分けはパーティバランスが結構考えられてそうだ。


「…私はユラ。ランクはC+でシーフをやってる。遊撃とかカバーとかはできるからその仕事は振って。一応オーガぐらいなら一撃で殺せるから少し注意引いてくれるだけでも仕事はできる。…よろしく」


 今度は無口そうな女の子が話始めた。オーガぐらいなら一撃とは、C帯のシーフにしては火力が高いんじゃないだろうか。


「最後は私ですね。私はウルカです。ランクはCで一応近距離のアタッカーです。まあ適当に仕事振って貰えたら。よろしくお願いします」


 最後に私も自己紹介をする。ランクがCだと言った時に何か言われるかとも思ったが、特に何もなかった。


「うん、わかったよ。ありがとう。じゃあ基本的に私とウルカちゃんが前後に立つから、ユラちゃんとシールくんは周りの警戒をお願いね」


 ジェイルさんは全員の自己紹介を聞き終わった後すぐに陣形を決める。近距離の人が前後で対処し、真ん中の2人、シーフと弓士で索敵をするようだ。


「私、Cランクですけど何も言わないんですね。弱いだろとかバカにすると思いました」

「ああ、冒険者は見た目で人を判断しないよ。現にSランクの1人は君と同じくらいの少女だし、記録に残ってる一ヶ月でSランクになった伝説の冒険者も17歳や18歳のパーティーだったらしいしね。冒険者って粗暴だしそういうイメージを持たれがちだけど、そこはそうなんだよ」


 ジェイルさんに聞くと、そう答えてくれた。


「そうだよ。それにCもC+も大して変わらないしね」

「…敵を侮って死んだアホはいっぱいいる。だから冒険者は侮らない」


 シールとユラもそう続ける。普段の言動は雑でも、戦闘に関して同業者を侮ることは無いようだ。


「そうなんですね。結構意外です」


 ナンパ師だとかも沢山見てきたので、冒険者連中なんてみんなアホかと思ってた。


「みんな、もう区画につくから準備して」


 雑談をしているとジェイルさんが声をかけてくる。もう担当の区画に到着するようだ。


「了解…じゃあ、気配探っときます」

「…」

「分かりました。私は後ろで」


 三者三様の反応を返して臨戦体制に入る。


「…右の奥、あの一番手前の木の方向です。何かいます。多分オーガです」


 いつもより奥なだけあって、オーガはすぐに見つかった。私の《強化感覚》が気配を捉えて少しした後にシールもそれに気づいた。私は身体強化をスキルなことにするつもりなので言わなかったが、《強化感覚》と大きな差のつかなかったシールもなかなか優秀だ。


「わかった。ユラちゃん、奇襲できる?」

「…了解」

「じゃあユラちゃんは奇襲の後こっちの3人の方にオーガを寄せて。で、2人はユラちゃんが攻撃した瞬間に追撃して確実に仕留めてね」

「「了解です」」


 オーガを目視できる範囲に入るとジェイルさんが剣を抜きながら指示を出す。他の3人は返事をした後それぞれ戦闘の準備をする。私は制御できる分の身体強化を発動し、シールは弓を、ユラはダガーを取り出して構える。


「よし…行くよ」


 ジェイルさんが合図を出す。


「ふっ…」


 ユラが気配を消して先行し、オーガの方へ向かう。私たちも一呼吸おいてそれに追従し、少し離れたところで構える。


「…はっ!」

「GRUU!?」


 ユラがオーガの首筋にダガーを突き立ててそのままこちらに向かってくる。オーガをこちらにしっかり寄せてくれた。


「もうちょっと…今!はああぁぁ!」

「ふうぅぅぅ…おりゃぁぁ!」

「ここっ!」


 ユラ以外の3人がジェイルさんの合図で同時に攻撃を仕掛ける。その次の瞬間にオーガは左の腹が抉られたように凹み、右腕と右の脇腹からへそあたりまでを両断され、右目に矢を受けて頭が貫通していた。


「GUGYAAAAAAA!?!?」


 オーガは断末魔をあげて倒れ込む。少し遅れて切り飛ばされた右腕が地面に落ち、オーガは絶命した。


「うん。大丈夫だね。みんなは大丈夫?大丈夫ならこれからも同じパターンでオーガを狩って行くけど」


 オーガの絶命を確認したジェイルさんが剣の血を拭きながら聞いてくる。


「大丈夫ですよ。一本撃っただけですし」


 シールは弓を背中に背負いながら答える。笑いながら言っているし余裕そうだ。


「大丈夫」


 ユラもオーガの首からダガーを回収しながらそう答える。こっちも息を乱してすらいないし大丈夫そうだ。


「大丈夫です」


 私も同じように答える。私の感覚では弱めの力で一発殴っただけ、という感じなので、まだまだ余裕だ。


「うん。じゃあここからも基本的に同じパターンで行こうか。ユラちゃんが奇襲して残りでトドメのパターン。ユラちゃんはキツくなったらいつでも言ってね」

「…はい」


 今後の戦闘方針も決まり、また次の獲物を探し始める。いつもいる場所と違いすぐにオーガが見つかるので、戦い始めて二時間くらいした10時になる頃にはもう11、12体ぐらいのオーガを倒していた。


「二時間でこれか…なんでこんな浅い場所にこんなにオーガがいるんだ…」

「わかってないんですか?ジェイルさん」

「そうなんだよシールくん。オーガは森の奥から来ていると思うんだけど、ここまで逃げてくるような何かがあるのか?」

「わかんないっすねー。あ、オーガです。!!4、5、6体います!」


 ジェイルさんとシールがオーガ大量発生の原因について話していると、オーガが複数体いるのを見つけた。


「そうだね…ユラちゃん、奇襲して一体しとめてくれる?」

「一体でよければ」

「終わったら私かウルカちゃんのカバーお願い。シールくんも一体奇襲で落とせない?」

「んー、まあできると思います。意識の外から撃ち抜いてやればいいんですね」

「うん、お願い。君も終わったら近接組のカバーを。ウルカちゃんは二体お願い」

「了解です」

「うん。ありがとう。私も終わり次第加勢するよ。よし、じゃあ最初に二体落としたら分断するよ。最後の二体は私が相手する」


 ジェイルさんが全員に指示をだし、全員すぐに戦闘体制に入る。私とジェイルさんはすぐ飛び出せるように構え、シールは弓を引き、ユラは気配を薄めてオーガの方へ近づく。


「よし、始めよう」


 ジェイルさんが合図を出すと、2人が動く。

 

「《回転》…ここだっ!」

「…《一撃必殺》…!」


 どのようなものかちゃんとは分からないが、2人はスキルを使ったようでオーガが二体崩れ落ちる。そしてそれを確認して私とジェイルさんがオーガが2対2になる位置に飛び出してオーガを分断する。


「ふっ、はっ、おりゃあ!!」


 分断してすぐに戦闘が開始される。2対1というのもあって手数に押されるが、《強化感覚》では攻撃が全てゆっくりに見えるので回避は容易い。隙を見て少しずつ反撃していく。


「くっ…はああぁぁぁ!!」

「GURUOOOO!!!」

「GURUAAAA!!!」


 しかし致命傷を与えることはできず、少し傷を負ってしまう。


「(どうする…これ以上身体強化を強めたく無いけど…。)」

「GURUU …。」

「GURUOOOO!?」


 少し考えていると、二体のオーガのうち一体が倒れる。


「ありがと…おりゃあああぁぁぁぁ!!」

「GURUAAAAAAAA!?」


 隣の仲間が突然やられて困惑する残ったオーガの腹に拳を叩き込む。するとオーガは後ろに吹っ飛び、内臓が破裂したのか動かなくなった。


「ユラさん、ありがとうございます。」

「んーん。別に」


 一体を奇襲して落としたユラに礼を言いながらオーガに確実にトドメを刺す。


「お、そっちも終わりましたね」

「はい。そっちも?」

「もちろん」


 私より少し早く終わっていたジェイルさんが声をかけてくる。シールのサポートがあっただろうとは言えやはり早い。


「全部で17、8体かな?そろそろ12時だし、一旦町の方に戻ろうか」

「「「了解」」」


 3人は返事をしてすぐに陣形を組んで町の方に向かう。森の入り口に着くまでにさらに2回オーガにあってしまい、着いたのは12時ギリギリになってしまった。


「うちは全員いるね」


 到着するとジェイルさんは欠員が無いことをマスターに報告に行っていた。


「諸君、確認したところ欠員なしだ。無事に帰ってきてくれたこと、嬉しく思う」


 欠員の確認が終わるとマスターが話し始めた。とは言え別に新しいこともなく短く終わり、次は18時に帰還ということで、午後の殲滅にすぐに向かうことになった。


「うん。出発しようか」

「「「了解」」」


 3人はジェイルさんに返事をして、ジェイルさんに続いてすぐに出発するのであった。

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