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第8話 遺跡

「ここが遺跡?」


滝の裏側に広がる広大な空間。

その真ん中に、神殿の様な建物が鎮座していた。

遺跡というからには相当古い物の筈なのだが、その外壁は美しい白亜の色を誇り。

風化の後は一切見受けられない。


「あ、ちょっと!」


遺跡を繁々と眺めていると、依頼主であるカルアが黙って入り口に入って行ってしまう。

アーニュの探索魔法に引っ掛かっていないので生命体は居ない様だが、先程のガーゴイルの件もある。

私達は慌てて彼女を追いかけた。


「おいおい、どこ行ったんだ?」


入り口から伸びる通路を進むと、二股のT字路に突き当たる。

魔法の明かりを向けて左右を見渡すが、カルアの姿は影も形も見当たらなかい。

すぐ後を追って神殿に入ったと言うのに、彼女はいったい何処に消えてしまったと言うのだろうか。


アーニュの方を見ると――


「神殿に入った瞬間生命反応が消えたわ。この神殿、結界か何かの仕掛けがあるみたいね」


「不味いわね」


この遺跡には間違いなく何かがある。

そんな場所で依頼主であるカルアが1人で姿を消したのだ。

急がないの彼女の命にかかわってしまう。


「二手に分かれましょう。私は左へ。二人は右の通路をお願い」


「分かったわ。何かあったらホーンで」


そう言って彼女は赤いビー玉大の玉を、私に投げてよこす。

これはホーンというマジックアイテムだ。

強く握ると、対となるホーンから音が鳴る仕組みになっている。

余り離れると効果が届かなくなってしまうのが難点だが、この遺跡内位の距離なら問題なく届くだろう。


「厄介な依頼主様だぜ」


ぼやきながらハイネは右の通路を進む。

私は左の通路へ。

私が1人なのは、万一があっても時間停止の能力でどうとでも対応できるからだ。


通路を道なりに進む。

途中分岐は無く、鈍突きを右に曲がると、右側に部屋がずらりと並んでいる。

一つ一つ中を魔法の光で照らし、声を掛けながら進むがハイネは見当たらない。


更に鈍突きを曲がって右に進むと、開けた場所に出る。

そこには地下へと続く階段が……


「いったん戻った方が良いかしら」


流石に、地下にまで一人で進んだりはしていないだろうと思いたい。

彼女の事は心配だが、別ルートを進む2人事も気になる。

余り距離が離れすぎると、何かあった時駆けつけるのに時間がかかってしまう。


「ん?」


戻ろうと思ったその時、悲鳴が階段の奥から聞こえて来た。

女性の悲鳴だ。

恐らくはカルアの――


「ったく!?勝手に進むから!」


私は階段を駆け下りる。

道中からおかしな女性だとは思っていた。

勝手に神殿に入って行くだけでも異常なのに、地下にまで下りて行ってしまうとは……完全に変人レベルの人物だ。


「エクステンドライト!」


階段を降り切ると同時に、強力な光の魔法を放った。

大きく視界を確保して動く為だ。

魔法で生み出した光は波動の様に広がって行き、暗闇に閉ざされた景色を浮かび上がらせる。


「ここは……」


私の眼前には、半径30メートル程の円形の空間が広がっていた。

中央には四角い石で出来た祭壇の様な物があり、その前にカルアが佇んでいる。

よく見ると、祭壇には臓物の様なグロテスクな物が並んでいた。


恐らく彼女ははそれを見て悲鳴を上げたのだろう。


「カルア、勝手に動かれては困ります。魔物やトラップがあった……ら……」


私が声を掛けると、カルアがゆっくりと振り返る。

私は彼女の顔を――いや、目を見て言葉を途切れさせた。


何故なら、彼女の両目部分はぽっかりと空洞になっており。

そこからだらだらと血が流れ落ちていたからだ。

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