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第4話 再儀式

「お、王子!?本気ですか?」


新しく就任したばかりの大神官が、悲鳴のような声を上げる。

それはガルザス王子から彼に与えられた仕事――魔王の再封印に対する物だった。


「魔王の封印は安定しているのですぞ!?」


「黙れ!魔女の施した封印などあてになる物か!」


「ですが万一――」


「まさか貴様も魔女の一味では無かろうな!? 」


大神官が異を唱えようとするが、魔女という言葉で王子はそれを制する。

魔女の一味と認定されれば、前大神官に続いて処刑されかねない。

その為、新たな大神官は口を紡ぐしかなかった。


「異議がないのであれば、さっさと代わりの聖女を用意しろ。試練は無しで構わん」


「はい……」


聖女は厳しい節制と訓練を収め、さらに命がけの試練を乗り越えた者にのみ与えられる気高き称号だ。

だが王子はそれを簡略化しろという。

目的のためだけに用意された聖女を、果たして本当に聖女と呼んでいいのだろうか。


そう思いながらも大神官は只頷くしかなかった。


「ならばさっさと選定を始めろ」


現在国王が病床の身であるため、国を実質的にし切っているのはガルザス王子だ。

その為、彼の決定には誰も逆らえなかった。

神に仕える教会と言えども、国に帰属する以上それは変わらない。


やがて一人の少女が聖女に任命される。

彼女はとても美しく、高い能力を有していた。

王子はその女性を見初め、婚約者として再封印の儀に臨む。


「聖女様がお亡くなりになられたぞ!?」


周囲に怒号と悲鳴が響き渡る。

封印のほころびから伸びた黒い触手が、首を切り落とされた聖女の体を掴み。

ずるずると結界内へと引きずり込んでいく。


再封印は失敗に終わる。


再封印には、一端かけかれている封印を弱める必要があった。

だが新たな聖女には、その隙をついて外に出ようとする魔王を押さえるだけの力――試練を乗り越え初めて得られる精神力――が無かった。

その為結界が破られ、綻びから伸びた触手の一本によって彼女は首を刎ね飛ばされてしまったのだ。


「馬鹿な……こんな馬鹿な……」


ビシビシと音を立てて結界に亀裂が走り。

かさぶたが禿げ落ちるかの様に、聖なる力で出来た被膜がボロボロと崩れ落ちていく。

その様子を目の当たりにし、王子は呆然とするしかなかた。


「王子!ここは危険です!」


国が傾きかねない大失態を犯した原因ではあるが、第一王子である事には変わりない。

近衛兵は呆然とする王子を引きずり、封印の祠から退避させる。


やがて封印は完全に崩れ去り。

中から黒い何か――魔王が姿を現す。


黒い靄の様な体に、全身から無数の触手が伸びる様はまさに(おぞ)悍ましい化け物のそれであり。

魔王と畏怖されるに相応しい姿であった。


「おお、神よ……」


恐怖に身がすくみ、逃げ損ねた大神官は神に祈る。

人生最後の祈りを。


この日魔王は復活を遂げ。

ガレーン王国は衰退の一途を辿る事となる。

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