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第2話 脱出

暗い牢獄の中、私は只静かにその時を待っていた。


処刑を――ではない。


開放されるその時をだ。

理不尽な裁判が終わり、刑の執行を待つ身ではあったが、私は最後の最後、ギリギリまで信じて待つもりだった。


これまでガレーン王国には大きく貢献してきたつもりだ。

国と、そして国民の為に身を粉にして働いて来た。

きっと誰かが立ち上がり、自分の無罪のために戦ってくれる。

それを信じ、この一年間じっと耐え忍び続けて来た。


きっと自身の罪が言いがかりの冤罪であり、その容疑が晴れると信じて。


「でろ、処刑の時間だ」


看守が現れ、牢獄の鍵を開け放つ。

その姿は無防備で。

聖女として高度な魔法技術を叩き込まれている死刑囚(わたし)を前にして、見せて良い隙ではなかった。

彼がこれほどまでに無防備なのは、私の足に架せられた封印石の為だろう。


これはありとあらゆる魔法の力を封じる物だ。


看守から見れば魔法を封じられ、武器も持たない私は只の小娘にしか映っていないのだ。

確かにその判断は正しいと言える。

但し私が異世界転生者(・・・・・・)でなければの話ではあるが。


私の前世の名は鮫島竜子という。

幼い頃から数多の格闘技を嗜み、16になる頃には無敗の天才格闘家として名を馳せていた。

その為、私は無手での戦闘を何よりも得意とする。


更に、今の私には転生時に与えられたチートも加わっている為、例え魔法が使えなくとも、衛兵の一人や二人など物の数では無かった。


「大神官様はどうなったんです?」


「ふん。一足先にあの世へ行ってるよ」


「そう……」


ぐっと歯を食いしばる。

さっさと脱出して、大神官様を救う事も出来た。

だが私も大神官様も、この国を、国民達を信じて待つ事に決めていたのだ。

だけど――


「良いからさっさと出ろ!国民が、邪悪な魔女の火炙りを今か今かと待ってるんだからな」


それは幻想でしかなかった。


「分かったわ」


牢獄から素直に出る。

と同時に最小限のモーションで看守の延髄を蹴り飛ばす。


「がっ……」


看守が吹き飛び、壁に激突する。

近くの衛兵3人がそれを見て目を見開く。

私は彼らが動くよりも早く、転生チートである時間停止を発動させた。


衛兵たちが目を見開いたままその動きを止め。

私は素早く彼らの間合いに入り、当身を入れて眠らせる。


「ふぅ……」


時間停止を解いた瞬間、衛兵たちが声も無く崩れ落ちた。

別にチートなしでも、問題なく倒す事は出来たとは思う。

騒がれて追加が来ては面倒だと考えたのだ。


「もう……この国に私の居場所は無いわね……」


大神官様が亡くなり。

信じていた国も、国民にももはや未練はない。


「まずは封印を解かなくっちゃね」


体術とチートで生きていけなくないが、魔法があった方が便利だ。

何より、努力して手に入れた力を冤罪で封じられたままというのは腹立たしい。


私は牢獄から脱出し。

先ずは封印解除を目指す。

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