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第14話 依頼

「レア・クローネと申します」


レア・クローネ。

この国でクローネの性を名乗っていいのは、王族だけだ。

私はその名を聞いて訝しむ。


引き連れている騎士や従者は、全部合わせても十数人足らずしかいない。

平時ならばそれでも十分だろうが、今は魔王復活の影響で各地の魔物達の数が大幅に増してきている。

特にクローネ王国は元々魔物達の住んでいた場所だったためか、その影響は顕著だ。


そんな危険な地域を王族が移動するには、余りにも護衛が薄すぎた。

実際魔物に襲われ、私が来なければ彼女達は全滅していた筈だ。


「アリーン殿。助けていただいた身で申し訳ないのですが、どうかレア姫を王都にお連れする力添えをお願いしたい」


騎士の1人がフルフェイスの兜を外し、私に対して頭を下げる。

全員男性だったと思っていたが彼女――いや、よく見ると護衛の騎士全員が女性だった。


「私も王都に向かう途中なので、構いませんよ」


まあ仮に目的地が別でも、今の状態の彼女達を放っておく訳にも行かないので引き受けるが。


「かたじけない」


死んだ馬達は魔法でその場に穴を掘り、燃やして埋葬する。

放っておけば血肉の匂いに誘われて、魔物が街道に群がってしまうからだ。

倒れている馬車を立て直し、その中に亡くなった人達の亡骸を詰める。


その馬車を引くのは、魔導士が呼び出した召喚獣達だ。

大型の豚の様な姿をしており、名前はよく分からない。


街道を2時間ほど進むと、王都クロンが見えて来た。

黒く高い城壁にぐるりと周囲を囲まれ、堅牢そうな外観をしている。

魔物の多い土地柄だけあって、首都は守りに長けた作りの様だ。


王族というのは嘘ではない様で、最低限のチェックのみで門はあっさり素通り出来た。

私はクロンに入った所で別れを告げて馬車から降りようとしたが、同乗していた女騎士シェナスに引き留められる。


「お礼がしたいので、是非王城迄ご一緒ください」


私はお尋ね者だ。

人相書きが城に届けられていないとも限らない。

お礼は魅力的だが、遠慮しておく事にする。


「いえ、気持ちだけで十分ですよ。では―― 」


その場を離れようとすると、手を握って引き留められる。

振り返ると真剣な眼差しでシェナスが此方を見ていた。


「厚かましい事は承知で、貴方にお頼みしたい事があるのです」


仮にも王家に仕える騎士が一介の冒険者に頼み事など、普通なら有り得ない。

厄介事の匂いがプンプンする。


「申し訳ないけど――」


何を頼むつもりかは知れないが話を聞いてしまうと断り辛そうなので、断りを入れてさっさと――


「頼みます。聖女殿」


「お断りします」の一言を途切れさせる。

いや、彼女の聖女という言葉に途切れさせられたと言った方が正しいか。


「貴方は覚えてられないでしょうが、私は貴方に一度お会いした事があるのです」


迂闊だった。

短い期間だったが、私は聖女として活動している。

王族に仕える騎士なら、私を目にする機会があってもおかしくはなかった。


「貴方が邪悪な魔女として、ガレーン王国から指名手配されているのも存じています」


どうするか迷う。

この場で彼女を殴り倒し、逃走するか。

それとも話の続きを聞くかだ。


「ですが貴方は私達を助けて下さった。そんな貴方が邪悪な魔女だとは到底思えません。どうかこの国の為にお力添えを」


「見逃してやるから力を貸せって事?」


「そのような……いえ、そうなります。騎士として恥ずべき行為ではございますが、全てはレア様を守る為。どうか御力をお貸しください」


シェナスが悪そうな顔をしていたらぶん殴ってバイバイしようかとも思ったが、必死に懇願する彼女の眼をみて、しょうがないと溜息を吐く。


「まずは話を聞かせてちょうだい。力を貸すかどうかはそれから決めるわ」


「感謝します!」


そういうと、シェナスは大きく頭を下げた。


まだ受けるとは言っていないのだが?

全く困ったものだ。

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