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第13話 街道

「きゃああぁ!!」


街道を南に歩いていると、女性の悲鳴が聞こえてきた。

視界に人の姿はない。

だが聞こえる。

いつ追手が掛かってもいいように、神聖魔法で聴力を強化しているため、遥か遠くの音まで拾えているからだ。


一瞬迷ったが、地面を強く蹴り飛ばして私は走り出す。

同時に補助魔法もかけた。

走る速度が増す事と、向かう先でのトラブルに対処しやすいようにだ。


ここはクローネ皇国。

その首都クロンへと続く街道だった。

皇国は大陸最南端に位置しており、この大陸唯一の女系国家となっている。


数百年前まではこの辺りは大量の魔物の住まう穢れた地とされていたが、国の祖である神に選ばれし巫女が大地を浄化した事からこの国は始まっている。

その事から皇国は代々女性を王として擁し、当然初代クローネ王は大地を浄化した巫女が勤めている。


「いた!」


街道の途中で魔物に襲われている一団が見えた。

馬車が四台。

内二台は馬が殺され、横転してしまっている。


襲っている魔物はおそらく悪魔系だろう。

人型の二足歩行に紫の硬そうな皮膚。

額からは角が伸び、その背には蝙蝠の翼の様な物が生えている。

典型的な悪魔系モンスターのビジュアルだ。


「不味いわね」


魔物の数は6体。

対して襲われている側は鎧をまとった騎士が4人。

その背に囲むように少女を守っていた。


周囲には同じよう格好をした騎士と、魔導士風の人間が合わせて10人近く倒れており。

彼らが騎乗していたであろう馬達は息絶えている。


「しょうがない!」


生き残った騎士達も囲まれ、明らかに風前の灯状態だった。

辿り着くには、後20秒はかかる。

その間に何人かやられてもおかしくはなかった。


私は駆けたまま時間を止め、同時に魔法の詠唱を始める。


「ジャッジメント・ホーリー!」


ある程度距離が詰まった所で時間停止を解除し、魔法を放った。

光球は魔物の一体に直撃し、跡形も無く蒸発させる。


「ぐぇああぁぁ!!」


直撃していない魔物達も、光球が炸裂した際の閃光に焼かれて苦し気に悲鳴を上げて怯んだ

騎士達も直ぐ傍に居たが、今の魔法は邪悪のみを滅する神聖魔法。

彼らには無害だ。


「はあぁぁぁ!!」


敵が怯んでいる内に一気に間合いを詰め、その拳を振るう。

拳を受けた魔物の頭部は弾け飛び、じゅうじゅうと煙を上げて消滅していく。


私の拳には魔法で聖なる力を付与してあった。

そのため、悪魔系の魔物にとっては致命的な破壊力となっている。


「ぎいぃぃ!」


残りの4体が私に同時に襲い掛かって来た。

常人から見ればかなりのスピードだろう。

だが神聖魔法で強化を付与している今の私からすれば、その動きはスローモーションに等しい。


相手の攻撃を回避しつつ、拳を順次叩き込み始末していく。


「す、凄い……」


私の力を見た騎士の1人が、感嘆の声を上げる。

足元には全ての魔物が崩れ落ち、その肉体は消滅していった。


「大丈夫?」


「え、ええ。ありがとうございます」


声を掛けつつ、私は魔法で倒れている人達の中に生存者がいないかを確認する。

流石に死者を蘇らす事は出来ないが、生きてさえいればどんな状態からでも回復させる事が今の私になら出来た。


「凄い!傷がみるみる閉じていく!」


倒れている者の中で、生存者は残念ながら一人だけだった。

私は虫の生きだった魔導師に回復魔法をかけて完治させる。


「貴方様はいったい……」


南方の気候にしては特徴的な白い肌に白い髪、赤い瞳をした少女が私に訪ねた。

彼女は騎士達が陣形を組んで守っていた女の子だ。

その身には巫女の様な衣装を纏っており、額には赤い逆三角型の入れ墨?が入っている。


「私はアリーン。冒険者よ」


私は新たなる偽名と身分詐称――神聖魔法を使って偽造――で、再度冒険者を生業としていた。

置かれた立場上一か所に留まり辛いため、冒険者という身分は非常に都合が良いのだ。


「アリーン様、助けて頂き本当にありがとうございました。私はレア・クローネと申します」


「クローネって……」


この国でクローネの性を名乗っていいのは王族だけだ。

つまり彼女は――

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