終わりと始まり2
「神罰級……? な、なんですかそれ?」
「災害級を超えるとされるモンスターだ。だが……あんなもん、UMAみたいなもんじゃないのか?」
災害級ですら国を滅ぼしかねないのに、それを超えるなんてものが居たら大騒ぎどころじゃない。
なんでそんなものの魔力パターンが保管されてるんだ?
いや、そもそも……眉唾だとすら思ってた。
「神罰級なんてものは、居るかどうかも分からん概念上の存在だと思ってたが……」
「……居るんですよ。世界融合よりも遥か以前。かつて異世界と呼ばれた場所には、精霊という概念がありました」
「精霊……」
精霊。かつて異世界において神の下位存在ともされた彼等は、世界の自然現象と「属性」を管理する存在として地上に居たのだという。
だが、世界融合によって属性は「神の加護」として再定義され、精霊による属性管理は消えた。
ならば精霊達は何処に消えたのか?
「……災害級とされるモンスターは、かつて精霊とも定義された存在であろうとされています。しかし、その中でも『災害級』に認定されたのは異世界でも下位の精霊達……それでも、それが存在するということは」
「それより上位の精霊もモンスターと化して存在する可能性がある……というわけか」
なるほど、なんとも皮肉な話だ。かつての世界の守護者が、今は世界の敵に回っている。
そして今ある反応は……『火の元素精霊サラマンダー』と呼ばれた存在のモノであるらしい。
「勿論、それでも『存在するかもしれない』程度の話でした。かつての異世界を知るエルフの記録を辿り、残されていた僅かな証拠を集め……そうして備えていた『万が一』です」
「ミーシャ……」
「世界融合で消滅しただろうと、そう結論される直前だったんです! それがどうして今! どうしてですか! ウィスプに続き、サラマンダー!? この場所に何の恨みがあるっていうんですか!」
「落ち着け、ミーシャ!」
ミーシャの肩を掴む。震える肩が示すのは恐怖……だろうか。
仕方ない。当然だ。俺だって、何を言えばいいか分からない。
だがそれでも、今はこうしなければいけないと感じていた。
「タケナカさん……もう、駄目ですよ」
「駄目じゃない。俺が居る」
「……無理ですよ。専門機関の予測では、サラマンダーの有する魔力はウィル・オー・ウィスプとは比べ物になりません。ねえ、貴方……サラマンダーはもう顕現してるの?」
言われた対策室員は、ゆっくりと首を横に振る。
「いえ。顕現は確認されていません。その前の……ただの余波のようなもので即応部隊は消滅しました」
「……ね? もう、駄目なんですよ。人間には抗えない。シンジュクは滅びます。私達対策室にもすぐに撤退命令が出るでしょう。サイタマ国の全力をあげて、それでどうにかなるかどうか……そういう話なんです」
「……そうか」
「でも安心してください。タケナカさんとナナさんは、こんな所で失うわけにはいきません。私達と一緒に退避できます」
退避、か。そうだな、そうするのが正しいんだろう。
俺が意地を張る話でもなければ、ナナを巻き込む問題でもない。
俺は……。
―……ニガサン―
「!? 今の声は……!」
「オーマさん、今のって!」
「え? どうしたんですか?」
ミーシャには聞こえず、俺とナナには聞こえた。これは、一体……?
―ニガサンゾ、ヨリシロヨ……貴様ハ、我ガ……!―
「ひっ!? な、なんですか今の視線!」
「ナナ!?」
―我ガ、必ズ食ラウ……!―
「オーマさん、オーマさん!」
脅えたようなナナが俺に抱きついてくる。
この声、まさか……!
「サラマンダーか……! お前、ナナが狙いなのか!」
―世界ヨリ弾カレシ虚ロナル神……我ガ器! オオ、オオオオオ……!―
「……ふざけるなよ」
剣を抜き、俺はシンジュクの中心へと向ける。
ふざけるなよ……そんな事、許せるものか。
「何が我が器だ。ナナは……ナナだけのものだ!」
震えるナナを抱く手の力を、強くする。
何が精霊だ、何がサラマンダーだ。
「サラマンダー……お前は、俺の敵だ!」
―ク、ハハハ……ハハハハハハ……―
そうか、嗤うかサラマンダー。
それでも構わない。
お前がナナを狙うというのなら。お前が俺の敵だというのなら。
「俺がお前を撃滅してやる。そこで待っていろ」
そう言って、俺は再びシンジュク中央に向けて歩き出そうとして。
「駄目!」
「ダメです!」
ミーシャとナナの2人に、必死の様相で止められた。




