- 再始動 -
今回の登場人物紹介
主人公:宮地 文博
主人公の親友:鈴木 裕太
部員:2年新キャプテン 小宮 雄二
:1年 菊池 大輔
:1年 石川 大和
新顧問:秋元 隆二
前顧問で現副顧問:常見 美奈子
小学校5年の時担任で小学校クラブチーム監督:植松忠
正博が転校したことにより男子バレー部のキャプテンは、以前新キャプテンを決める際に
一年生たちから推薦が挙がった、2年生の小宮が部員たち全員一致の意見でキャプテンに就任し
新生男子バレー部がスタートした。
ゴタゴタガあったが何とか新体制で約一か月後に行われる新人戦に向け練習が始まった。
2年生の部員が正博と樹が抜けてしまった為、4人になってしまい一年生二人がスタメンに入ることになったが
新キャプテン小宮のポジションがセッターだった為、文博はスタメンではなくキャプテンの交代メンバーになり
ケガが治っておらずまだ部活に参加することのできない裕太もスタメンから外れていた。
一年生の中で少しずつ実力をつけていた大輔と大和が身長も180㎝近くあったのでスタメンに選ばれた。
夏休みの間、毎日のように練習や練習試合をこなし、バレー部はそこそこの実力ではあったがどうしても県内で名前が知られるほどの実力にはまだ遠かった。
文博もキャプテン小宮の実力自体がそこそこあったので、練習試合に出場する機会もさほどなく
小学生の頃は名前も知られていたが、このころにはあまりだれの目にも止まることはなかった。
それと、そろそろギプスも外れてリハビリを行っているはずの裕太が最近全然部活に姿を見せなくなっていた。
文博自身も、特に今の状況が不満な訳でもなく、たまに試合に出場できる機会は全力でプレイする事を心掛けていた。
そして夏休みも終わり新学期が始まった。
文博は登校日に裕太に問いかけた。
「裕太。最近部活に顔を出さないけどどうしたの?まさか辞めるとか無しだよ。」
裕太はギプスの取れた左手をぎこちなさそうに動かしながら
「ちょっとな。今リハビリ中なんだ。完全復活にはもう少しかかるから、お前も俺が復帰した時に俺に負けないように頑張って上達しとけよ!」
裕太はいつもの悪ガキのような笑顔を浮かべながら文博に檄を飛ばしていた。
新学期最初の放課後、部活で顧問の常見先生が部員皆に集合をかけた。
「今日はみんなに聞いてほしいことがあります。」
部員は皆黙って常見先生の話を聞く
「皆も知ってると思うけど、私も1学期にゴタゴタガあり突然バレー部の顧問を臨時で任されることになって、バレーボールのバの字も知らない私が偉そうにみんなの指導をしてきましたが・・あっ!指導はしてませんね、見てただけですが。」
裕太がいれば先生に突っ込みを入れていただろうが誰も突っ込んでくれないので自分で突っ込みをいれながら
「今学期より新しい先生が赴任してくることになり、その先生が小学校から大学までバレーボールをやっていたそうなので、この男子バレー部の顧問を引き受けてもらうことに決定しました。」
「おー!」「まじで?」「すごいじゃん!」
今までバレーボールをまともに教えられる顧問になった事が無かったため、部員たちから歓声が上がる。
「この度、急遽赴任されて来られたのでバレー部への参加は来週からとなりますが、昨日全校集会で新任の先生が紹介されてた秋元 隆二先生が新顧問になります。」
「常見先生は引退ですか?」
部員の一人から声が上がる
笑いながら常見先生は答える
「引退?どういう事?引退はしないですが、以前同様女子バレー部と男子バレー部の副顧問になりますからね。」
「今日は一応報告で、また秋元先生が参加されるようになったらその時挨拶しましょう。」
この情報は部活に参加していない裕太に文博から伝えたが
裕太はさほど驚くこともなく、なんだかどことなく変な対応だった。
その対応が文博には疑問だったので深く追求したが、裕太ははぐらかすので納得できないまま一週間がたち秋元先生が部活にやってきた。
「今日から君たちの顧問になりました秋元と申します。2年生は何人か数学の担当なんで知っている人もいると思いますが、自分で言うのもなんですがとてもやさしい性格なので気負いせずに、なんでも相談や質問してきてください。」
見た目は三十代半ばくらいでスタイルが良く体育会系の印象で、文博はふつう自分でやさしい性格とか言わないだろうと思った。
「じゃあ。みんなの名前とポジションを知りたいので一人ずつ自己紹介お願いします。」
「はいっ!キャプテンやらせてもらってます小宮 雄二です。ポジションはセッターです。」
裕太以外全員そろっていたのでキャプテンから自己紹介が始まり2年生から1年生へと続いていった。
「宮地 文博です。ポジションはセッターです。」
1年生の自己紹介はあいうえお順だったので文博は一番最後になった。
「あっ!あと1年の鈴木 裕太が今ケガで休部中です。」
キャプテンが最後に付け加えた。
全員の自己紹介を聞き終わり、秋元先生は
「皆の名前とポジションは大体わかりました。あとは今後のプレーをみて俺なりに再編成、ポジション替えなども行うと思いますのでその辺は了承してください。じゃあ今日からよろしくお願いします。」
部員全員大声で
「よろしくお願いします!」
その日から今までにない充実した練習メニューと個々の能力に合わせたポジション替えや練習メニューが追加され部員たちはみるみる上達をしていった。
そんなある日、文博は秋元先生から練習中に呼ばれた。
「宮地君は植松さん..あっ!先生の教え子なんだろ?」
「あっ!はい!植松先生知ってるんですか?」
文博は答える。
「植松先生は、俺の高校と大学の先輩で同じバレー部にいたんだよ。今でも交流があってさ、実は今回この学校に新任してきたのは植松先生からの要望だったんだ。」
意外な話に文博は戸惑う
「植松先生の要望?」
「そう。実は俺、教員の資格を持ってはいたけど今までずっとボランティア活動で海外に行ってたんだ。だから教員にはなってなかったんだ。でも春頃かな植松先生からメールが届いてね、俺の教え子たちがせっかく実力をつけたのに、その次にステップアップできないでいるからお前が助けてくれねーか?って。」
文博の目を見つめながら秋元先生は話す。
「教え子って僕らV宝リトルのメンバーの事ですね。」
文博が問いかけると
「そうだな。きっと自分の立ち上げたバレーボールクラブで小学生の頃頑張っていた教え子たちが何の進歩もないまま終わって行く姿が耐えられなかったんだろうな。」
秋元先生は神妙な面持ちで答える。
「でも、今僕と裕太しか残ってないです...裕太も部活来なくなっちゃったし。」
文博は俯きながら話した。
「鈴木君の事は心配しなくていい。」
秋元先生が文博に言う。
「えっ?何でですか?」
その言葉に文博は思わず問いかけた。
「実は鈴木君は、今植松先生の所で小学生たちに交じって軽く運動しながらリハビリしてるんだ。中学校に上がってからも、鈴木君は植松先生の所にちょくちょく顔を出していたみたいで、今回部活のゴタゴタの件も鈴木君が植松先生に話をして、それを聞いた植松先生がどうにかしようと動いたんだよ。鈴木君がケガした時も、植松先生がリハビリする際には、俺の所へ来てバレーボールの動作を取り入れながら、リハビリしたほうがいいだろうって事で今やってるみたいだね。」
秋元先生は裕太の現状を説明した。
「そうなんですか?じゃあ秋元先生も裕太の事知ってたんですね。だからこの間、裕太に話したときに態度がおかしかったんだ。」
その話を聞いて文博は何となく裕太のおかしな対応の謎が解けた。
「この学校に採用される前に、植松先生の所に挨拶に言ったらその時に鈴木君がいてね、完治させて必ず戻って来いって話したんだよ。まあでもあの性格なら問題なさげだけどね。」
「そうですね。」
二人して笑いながら納得した。
「そんな事だから鈴木君の事は心配しなくてもいい。これから宮地君の全国制覇の実力を思う存分発揮してもらうから覚悟して頑張ろうな!」
秋元先生の力のこもった問いかけに、文博は元気よく
「はいっ!よろしくお願いします!」
答えた。
そして日が経ち新人戦が始まった。
僕が学生の頃やっていた時は腰から下はダメで
リベロなんてポジションもなかったですからね。
時代と共にルールも変わりますね。