旅の途中
俺達は道を誤った、いや、単に分岐を間違えただけなんだけどね、
なんだか北の方向に来ちゃったんだよ、季節は冬それで今は北にいるんだ、馬鹿じゃないのかこんな所に来て、
何でこんな愚痴を言ってるのかと言うと、ここがあまりにも寒い所だからなんだよね、現状かなりヤヴァイ事になってるんだ、最初の内は【雪の進軍】とか歌いながら調子よく来たんだけど、今凄く調子悪いんだよ、吹雪の中なんだよ、今は、元気なのはホムンクルスボディの乙女のおっさんだけだ、
「ドラケン寝るな、寝たら終わるぞ!」 爬虫類系のドラケンは体温が偉く低くなると動きが悪くなり眠くなってきたらしい、
「のらちゃんそれはこたつじゃないゴミ箱だ」ダメな子になって来てる、
俺は自分の周りにある分子を振動させて温度を上げていたんだが、魔力がもう底を尽きる位まで疲弊してるんだ、
「パトラッシュ……疲れたろう。僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ……パトラッシュ……」
そんな幻聴まで聞こえてきた、
「家が有ったからあそこで休ませてもらいましょう」
乙女のおっさんが明るく話しかけて来たんだ、助かったっぽい、
「ごめん下さい、旅の者なんですがこの寒さに難儀しております、よろしければ納屋の片隅をお借りして暖を取らせてもらえませんでしょうか?」
乙女のおっさんが交渉に入ってくれた、
「それはそれは、お困りでしょう、ささ、納屋と言わずどうぞおあがり下さい、」
「「「有難う御座います」」」
俺達は母屋の方に上がらせて頂いた、
「いや~助かりましたですじゃ、儂は旅の行商人のカワタと申しますじゃ」
「私はこの家の主マルコと申します」
「危うく凍死する所でした、有難う御座いました」ドラケンが礼を言う、
「いや~この辺は極寒地域ですからね、助け合いで私らもなんとか出来てますから」
と言いながら横に手を振る、俺はその時目視で確認したんだ、指が何本か無かったことを、
「御礼に私達で出来る事が有りましたら力にならせて下さい、」乙女のおっさんが言った。
「あの~大変失礼な事をお聞きしますが、指はどうしたんですかのぅ」
「ああ、これですか、3年程前に遭難者が出まして、その時助けに行ったんですが凍傷で切らなければならなくなりまして...」
「そうですか、大変でしたね、もしよろしかったら暖を取らせて頂いたお礼にその指を治させて頂けませんかのぅ」
「・・・・・・・・・・え?」
「いや、だから指の再生をさせて貰えませんかのぅ、手の指がそうだと言う事は足の指も欠損してますのじゃろ?」
「はぁ、まあ足の指も欠損していますが...」
「実はうちのドラケンも両目と片手、片足と尻尾が欠損しておりましてのぅ、でもちゃんと再生しましたでのぅ」
「もしそれが本当なら私ではなく娘の方をお願いしたいのですが、」
「娘さんですかの?」
「はい、3年前雪崩に巻き込まれて村の者と娘の母と共に5人亡くなる事故が有ったんです、 発見されたとき娘は家内がしっかり抱きしめて最後まで娘を案じていたようです、それで運よく命が繋がったのが娘だけだったんですよ、」
「主殿はその時の救出の為凍傷になられたのですね?」ドラケンが聞く、
「ええ、そうなんです、」
「もしよろしければ娘さんにあわせていただけますかいのぅ」
「ちょっと待ってくださいね、娘に聞いてきますから、」家の主が娘の部屋へ向かった、
「なんとか儂らの受けた恩を返すことができそうじゃのぅ」
「そうですね、ぼく本当に死ぬかと思いましたよ、氷で出来たこたつに入ろうとしてた様だし」
「うむ、のらちゃんはあのままだったら本当にあぶなかったからのぅ」
そうこうしてると この家の主が戻って来た、
「お話をお聞かせくださいませんでしょうかと娘が申しておりますが、よろしいですか?」
「勿論ですじゃ、」
「ではそちらの娘さんにだけお話をして頂く訳にはいきませんでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ、私が欠損部位再生治療をやっているエリーと言います」
「そうだのう、女同士の方が話しやすい事もあるじゃろ、エリーさん、一つお願いしますのじゃ、薬草の在庫は豊富にありますでのう」
「はい、わかりました、」微笑みながら娘さんの部屋に向かった、
部屋を開けるとそこにはベッドに横たわる娘さんがいた、当年13才になったとの事だ、
乙女のおっさんが欠損部位の確認をする、
「こんにちは私は欠損部位の再生医師のエリーと言います、貴女のお名前教えてもらえるかな?」
「ジュリアと言います、よろしくお願いいたします」
エリーは欠損部位の確認を始める、
「左右の耳の一部が欠損、鼻が欠損、指は第二関節からすべて欠損、右足下腿欠損、左足の指親指以外欠損」
「十分治りますよこの程度ならね」微笑みながら少女に語りかけた、
「お姉さん本当に治るのですか?」
「はい、ちゃんと治りますよ、そのかわいいお鼻もね」
ぱああっと笑顔になる少女、だがすぐにまたその笑顔がくもって行く、
「でも父さんを治してあげてもらえませんか?、あたしを探してあんな指になっちゃったんだから、お父さんをどうか治してください、」
「わかったわ、二人とも治しますよ、心配しないで大丈夫、でもね、一つだけこの施術には難点が有るの、」
「それは何ですか?」
「非常な痛みを伴う事なのよ、痛み止めの麻酔を使うと再生部位が変形して再生されてしまうのよね、」
「痛みなんかこわくないです、」
「いい覚悟ね、じゃあ先にお父さんを先に治してからあなたを治しましょうか、」
って事で早速マルコさんを簡易拘束台(普通のテーブル)に括り付けて固定、
「漏斗、栄養補助食品と薬剤一式、準備出来ました、」のらちゃんが言う
のらちゃんも欠損部位再生治療になれてもらわないとね、
「今日は指の欠損のみだから時間もそんなにかからないと思います、片腕1時間、片足1時間合計で4時間を予定しています、」乙女のおっさんが言う、
「では、皆さん宜しくお願いします、」
「「「お願いします」」」
今回の残った部位の切り取りはのらちゃんが執刀する事に、魔力による身体強化で腕が獣人化して素振りを始める、そして、
「行きます! ハッ!」 気合一閃 見事に切断される、かなりな痛みのはずだか、お父さん男を見せる為一言も何も言わずただ、耐えていた、
そして4時間後
「本当に生えてきた、凄いですよカワタさん」
「いやいや、マルコさんも良く耐えなすった」
「娘の手前も有りますしね、はは、」
今日は遅いから娘さんは明日の朝から施術する事になった。
そして朝を迎えた、
「耳と鼻を先に再生していきます、それから手と足の指、下腿は患者の体力を考えて3日後にしますので宜しくお願いします」
「「「お願いします」」」
施術は乙女のおっさんがやる事に、先に耳から再生していく、思い切り耳を冷やして感覚が麻痺した所鋏で切断、
「栄養補助食品はまだ入れなくて大丈夫です」
忽ち耳が再生していく、娘の父はそれを見て喜んでいた、
「次鼻の欠損再生を行います、」
又鋏を使って切除する様だ、
そして切除した部位を薬品と混合させ軟膏を作る、
一気に鼻に軟膏を塗布していく、30分もかからず再生出来た、
「はい鏡よ、」と言って乙女のおっさんがジュリアに鏡を渡す、
ただ、微笑みながら泣くだけの少女がそこにいた、
「さあ、次は指を取り戻しましょう」乙女のおっさんが言う
「はい、エリーさん」
今日の再生治療は無事終わり、3日後の下腿欠損の再生準備だ、
そして当日、アイテムボックスから栄養補助食品の材料を5㎏程出す、
「エリーさんや5㎏で大丈夫かいのう?」
「念のため6㎏でお願いできるかしら」
「ほい、了解じゃわい」
今日の執刀は乙女のおっさん、
「今日はちょっと痛いかも、だけど頑張ってね、」そう言いながら麻痺薬を飲ませ部位を冷やしている
「準備完了、皆さん宜しくお願いします」
「「「お願いします」」」
「行きます! ふんっ!」
乙女のおっさんは雪崩に持って行かれた下腿の残滓を一気に切り飛ばす、
急いで軟膏を調合して塗り始める、
「ぐがあああああ」口に漏斗が入っているので声にならない声で叫んでいる」
乙女のおっさんは何も言わずただもくもくと作業をしている、のらちゃんは漏斗の管理とと栄養補助食品を流し込んでいる、ドラケンと俺は暴れても怪我をしない様に拘束台を管理している、
2時間後
「エリーさんや、胸の内側が動いておるぞ、」
「この子は魔法が使える子なんですか?マルコさん」
「いいえ、うちの一家は誰も魔法が使えなかったと思いますが、」
「奥さんは自分が魔法が使えると言う事を知らずにいたんじゃないですかのぅ」
「そんな事ってあるんですか?」
「儂らの研究ではたまにこういったケースを見かけるんじゃよ」
「では、娘は魔法が使える様になるんですか?」
「はい、魔法使いですよ、娘さんは」
「そしてマルコさん、貴方も魔法使いになる事が出来ますけどどうしますか?」
「私が、ですか?」
「はい、魔法は遺伝とかそう言う物ではないんです、魔導蟲という寄生虫が魔力を作っているんですよ、このように極度の痛みや出産の痛みに魔導蟲が産卵時期を知り、こうやって乳腺に卵を産み付けるんです、」
「それで今皮膚の中で蠢いている物が魔導蟲の産卵管なんです、」
「その卵を移植すれば、私も魔法使いに?」
「はい、なれます」
「ならばお願いできませんでしょうか、この土地は過酷な土地なので、魔法が使えれば生存率が上がりますので」
「ジュリアさん、お父さんが希望してますけど、移植してもよろしいですか?」
ジュリアは現状痛みで声も出ないが大きく頷いた、
「娘さんは望んでいるようじゃ、やるならすぐに施術しますぞい」
「ではお願いします、」
俺はジュリアの胸部を切開し乳腺から卵を摘出しマルコさんの胸部を切開し卵を入れた、
そして胸部を閉じる、手をかざし魔力を込めイメージする、血管を修復し神経を繋ぎなおし細胞を接合する、そして傷口は何もなかったかのように塞がっていく。
「マルコさん半年ほどすると夢を見るはずじゃ、その夢の中の人とよく会話するとええぞい」
「わかりました、本当にありがとうございます」
「いやいや、マルコさんが助けてくれなんだら儂らは今頃生きてはおりませんからのぅ、そのお礼が出来ればと思ってやったことじゃからお互い様と言う事で、どうかの?」
「はい、そう言って頂けると...」 泣きながら笑ってマルコさんは俺の手を両手で握りしめていた、
「さて娘さんの方もあと少しじゃ、頑張って行こうかいのぅ」
開始から4時間ほぼ左右均等な大きさになったので、軟膏を全てふき取る。
「どうですか?ジュリアさん」乙女のおっさんが聞く
「エリーさん足が...ちゃんと足が...」
そう言って両足でしっかり立ち上がり軽くジャンプして見せた。
「有難うエリーさんっ!」
エリーに抱きつくジュリア、それをよろこぶエリーだった、それを俺は阻止すべく、
「ジュリアさん貴女はすぐにでも魔法が使える様になるんじゃが、練習してみんかのう」
そう言ったらすぐにヒットしましたよ、
「魔法を教えて頂けるんですか?」
「はいちょっと練習してみますかいのぅ」
「お願いしますカワタさん!」
「疲れが残っているといかんから、明日から始めますかいのう、今日はゆっくり休んで、美味い物食べて明日に備える事にしますかのうふぉふぉふぉ」
なんだか乙女のおっさん怒気を孕んでいたが、俺のスルースキルはそれを看破した、
続く




