更に
【ピンポンパ~ン業務連絡です】
頭の中に鳴り響く声がある、俺は自己嫌悪しながらもそのメッセージを聞いている、
【川田修一君、今日は御苦労さまでした、あなたに会わせたかったのはあの牛獣人のお姉さんなのよね、】
【え?会わせたかったって白い部屋の人の意思だったんですか?】
【ええ、そうなのよミルねえさんに会ってあの娘を救って欲しかったのよ、いいえ、そうじゃないわね、あの子の子供達を救って欲しかったのよ】
【あの妊婦さんの子供ですか?】
【ええ、そうなのよあと少ししたらミル姉さんは出産するの、その時に大量の魔導蟲が拡散されるのよ、そのうちの一人が世界を変えていく一人になるからねっ、だからあなたに手伝ってもらったわけなのよ】
【そうだったんですか、】
【ええ、より良き世界の為にね】
【判りました、俺もっと頑張ります、そしてミル姉さんみたいな不幸な人を無くしたいと思います、】
【それがより良き世界と言うのよ、驕る事無く頑張っていきましょうね】
【はい、頑張ります、より良き世界を求めて、】
「ちょっと、カワタさん、何呆けてるのよ、」
「ああ、乙女のおっさんか、ちょっとした自己嫌悪に陥ってただけだ、問題ない」
俺は乙女のおっさんに言い訳をしてその場をスルーしていく、
「ミル姉さんや、食料だけじゃなくこれも持っておいて欲しいのじゃが」
そう言って金貨10枚ほど入った革袋を渡す、
「これで生まれてくる子供に何か買ってやってくれんかのぅ」
「え?そんな頂く理由が有りません」
「これは、より良き世界を作る為の支度金だと思って欲しいのじゃ」
「より良き世界...何処かで聞いたような...」
「うむ、そう言う訳だからこれを受け取ってほしいんじゃよ」
「はい…ではお預かりしておきます」
「では、儂らは上に行きますが体に気をつけてくだされ、それではまたどこかでお会いできることを、」
「ミル姉さんまたねっ」
二人は去っていった、暫くしてそれと入れ違いに、
「ねえちゃんただいま、今日もあまり残飯もらえなかったよ、」
「セラお帰り、これから食料の心配が無くなったのよ、」笑顔で答える、
「え?どうしてだい?」
「さっきね、親切なお爺さんとお孫さんが来て保存食を沢山くれたのよ、」
「大丈夫なんかい?それって、毒とか入ってないよな?」
「大丈夫、さっき少し頂いたから、とっても美味しかったのよ、」
「そうか、じゃ有難く頂戴するか、」少し考えてから、
「でもそれは姉ちゃんが食ってくれ。オレは自分で取って来れるからさ、とにかく今は姉ちゃんが最優先なんだよ」
そう言ってセラは集めてきた残飯を取り出して心配させないようにと食べみせた、
「セラフィム様...」小さくポツリと呟く。
俺達は地上に戻って来た、
「なぁ、乙女のおっさん、俺ミル姉さんと話して思ったことが有るんだ、」
「何?」
「俺は、より良き世界ってのが見たくなったんだ、」
「どうしたの?いきなり、」
「んあ、ちょっと思う所有ってね、」
「変なカッパね、」
「ああ、そうだな...」
再び賑やかなスラムの街に入る、そしてスラムキングを探す、街中を歩いていると昨日の通路の見張りをしていたアモンさんがいた、
「やあ、アモンさん」
「いよう、爺さんどうだい?この街は」
「随分活気の有る街ですのぅ一部分を覗いて、」
「まあ、スラム街だからな、全てが上手く行ってる訳じゃぁねぇからな、」
「それで、ちょっとスラムキングさんにお話をききたかったんですじゃが、それは出来ますかのぅ」
「今会議中だからあと2時間後にこの間の小屋に来てくれ、」
「すいませんですじゃ、それでは2時間後に、」そう言って別れた、
「こんばんはスラムキングさん、先日はありがとうございましたですじゃ、」
「どうしましたかな、ご老人」
「実は一人気にかけてやって欲しい者が居りまして出産するまでの間なんじゃが、お願いできませんかのう、勿論報酬は払わせて頂きだいのじゃが、」
「ほう、その者は爺さんの身内か何かですかな?」
「いいえ、知り合ったばかりの者ですじゃが...」
「縁もゆかりも無いものに報酬まで出して、爺さんのメリットは何でしょうかな?」
「情に絆された、とでも思って頂ければ、」
「そうですか、その娘の名と住んでる場所は?判りますかな」
「娘さんの名はミルさんと言って年の頃なら22~25才位の牛獣人の娘さんなんじゃが」
「何!牛獣人のミルと言ったか?家名はホルンシュタインと言ってなかったか? ひょっとしたら私の且つての古き友の娘かも知れん...」
「わかった、保護しよう」
「有難う御座いますじゃ」といって俺は金貨10枚を渡しておくことに、
「わかった、任されよ、」どうやらスラムキングの知り合いの娘さんでもあるらしかったので少し安心できた、
俺達はスラムキングに再度礼を言って別れた、
「ミルヒの娘がスラム街に落とされていたのか、」キングが呟く、
「アモン、至急保護してやってくれ」
「ひょっとしてミルヒ・ホルンシュタイン殿の娘さんでしょうか?」
「うむ、恐らくそうなのだろう、我が古き友であった者の忘れ形見に何という仕打ち、」
「恐らく宰相のやった事ではないでしょうか、」
「多分そうだろう、増々腐敗してきてしまったな、我らの計画はまだ先だ、もう少しだけ堪えてもらえれば...」
「アモン、頼んだぞ」そう言って私はアモンを送り出した。
元同僚であったミルヒ・ホルンシュタイン...か、 元王女専属宮廷騎士だった頃に思いをはせる。
レストラン・ヅイにて、
「カワタさんエリーさんこれで地上げ屋も当分大人しくなると思います、有難う御座いました、」
「いやいや、旅の老人の気まぐれですじゃお気になさらんで下さい、昨夜もお伝えしたんじゃが牛獣人の妊婦さんの件、なにとぞ宜しくお願いしますのじゃ」
俺は何かあったらデイさんにミルさんを雇ってもらえる様話を通したんだ、だがミルさんは【あと少しだけ今の場所に居なければいけない気がするんです】と言ってあの場所を動こうとしなかったんだよ、俺はそう言う事なのか、と半分納得しながらこの街を後にする事になった、GODさんから次の地へ移動するように指示があったんだ。
そして数日後この国は大きく変革していく、救世主と呼ばれる男が現れたからだ。
胸に七つの傷はないけどね。
続く




