ショートショート005 ご先祖さま
ある少年が、コンピュータで調べ物をしていた。
今は二十三世紀。科学は発達し、宇宙旅行どころか時間旅行さえもできるようになっていた。
少年が調べていたのは、自分自身の先祖の記録。彼は学校の自由発表で、先祖のことをとりあげようとしていたのだった。
その少年が、突然顔をしかめた。
「なんてことだ。こんなのが僕のご先祖さまにいたとは……」
画面には、少年の先祖のデータが表示されていた。そこには「突然発狂し、精神病院に収容された」という一文があった。
「これでは、とてもこのテーマで発表なんてできない」
そう思って、少年は考えた。いまからテーマを変える時間はない。何しろ、発表は明日だ。何かうまい方法はないだろうか。
やがて、一つの考えが浮かんだ。
「よし、この方法ならいいだろう」
少年が思いついたのは、時間旅行。タイムマシンで過去へ行き、どうにかしてその先祖が発狂してしまわないようにすればいいのだ。多少歴史が変わってしまうかもしれないが、もしかしたら凄い成功をするかもしれない。そうなれば、その子孫である自分も鼻が高いというものだ。
少年は、すぐに実行にうつった。タイムマシンに乗りこみ、ご先祖さまの時代、ご先祖さまの部屋を目的地に指定した。タイムマシンは一瞬で時間と空間を移動した。
タイムマシンのドアを開けると、男が一人、横になっていた。少年のご先祖さまだった。
「ねえ、ちょっと、起きてください」
少年が何度か話しかけると、男は目を覚ました。だが、何やらわけのわからないことをつぶやくばかり。
自分の部屋に謎の乗り物がいきなり現れた驚きで、ご先祖さまは目を回し、発狂してしまったのだった。