1章 探索 【経緯】
今回は探索はメインではなく主人公がサークルに入った経緯がメインです。
まばらに踏みならされる靴の音が、コンクリートに反響して、院内に響き渡る。
数年前に廃病院になったにしては建物内の状態はかなり悪く、扉が外れていたり、天井が崩れている部分さえあった。床には物が散乱し、かなり汚い。
「いやぁ~。これは思った以上に危ないかもね。心霊的な意味じゃなくて、主に物理的な意味で。ほらこことか、ガラスの破片が散らばっちゃってるし」
「由那先輩。ガラスとか踏まないように気を付けてくださいよ」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと靴履いてるんだから踏んだって平気だって」
いや、そりゃちゃんとした靴なら言わないですよ。でもあなたが履いてるのサンダルじゃないですか。下手したらガラス入るでしょ。
「そういえば、幽霊も怖いですけど、心霊スポットって怖い方々が集まる場所だったりするっていう話も聞きますよね。それも怖いですぅ」
卯瑠璃先輩が言う通り、心霊スポットってのは幽霊以上にそういう人に遭う確率の方が高いとも言える。まぁ、いわゆる家なき人がいる場合もあるのだが。
ここも地元では有名なだけあって、実際そういう方々は沢山来られているようだ。至る所に、スプレーでらくがきが書き殴られている。
「わっ!これとか見て!レントゲンかな?」
「ゆ、由那!そういうのは勝手に触らない方がいいって!」
「ほら!つなぐん、カメラでしっかり撮って!」
「ちょっと!私の言う事聞いてた!?って、維倶君も言われた通りにしなくていいから!」
おおう・・・卯瑠璃先輩の顔が間近に。相変わらずかわいいな。
「ちょっと~。うるりんは撮らなくていいから、こっち撮ってよ¬~」
「由那先輩。それ。元に戻して。すぐ」
「え!もしかして幽霊でたの!?」
「うん」
今の言動から分かるとは思うが、レイは俗に言う霊能力者だ。こいつには、俺たちには見えない何かが視えてるらしい。
そうだな。ここら辺で、俺がサークルに入った経緯を語るとしよう。
あれは、大学1年生の初めの頃のことだった。サークルの勧誘でロビーがごった返しになっている中、どうにか人ごみから出た俺は、正門方面でもやってる勧誘をどうにか避けようと裏口から出て行くことにした。
それが、ある意味運の尽きだった。いや、卯瑠璃先輩と一緒に居られるという意味では幸運なのか?まぁそれは置いておいてだ。
やっと裏口という寸でのところで誰かにいきなり腕を掴まれた。驚いて腕を掴んだ相手を見ると、そこにいたのは、
めちゃくちゃかわいい人だった。
いやほんと、両腕でぎゅっと腕を掴まれてる上に、上目遣いで見上げられて。華麗なコンボ決まりましたよ。しゃがみ強パンチキャンセルからの波○拳くらいに決まりました。
まぁ、今となれば全て由那先輩が仕掛けた罠だったわけだけど、あの時の卯瑠璃先輩に助けて下さいと涙目で言われてついて行かない男なんて、そんなの男じゃない!
助けを求められた俺は、腕に当たるたわわに実ったものの感触に意識の半分以上を持って行かれながら、いつの間にかとある部室の前まで連れて行かれていた。
ミステリーサクールなんて名前のかなりセンスを疑うサークル名。
「ご、ごめんなさい!」
そう言って、卯瑠璃先輩が扉を開けたと同時に、中から飛び出てきた手に腕を掴まれて室内へと引き込まれた。いや、ここは正確に言っておこう。後ろから突き飛ばされもした。卯瑠璃先輩も案外やる時はやる人なんだなぁとこの時思ったよ。
幸い、顔面からこけた俺を固い床が迎えてくれるということはなかった。代わりに受け止めてくれたものは、どこか懐かしいような優しい香り。ずっと顔を埋めていたいと思わせるほど包容力のある柔らかさ。押せば返す、ふにふにとした弾力性。まさか!?
「ふおおおぉぉ!!??」
目を開いた瞬間あったのは桃源郷か!?圧倒的なまでのド迫力が視界をジャックしてきやがった。
よく見えないがこれは完全におっぱい!偉大なる神が女性に与えたもうた二つの果実。禁断の実とはこのことか!?
「少年。心の声がダダ漏れだぞ」
「なんですって!?」
名残惜しいと思いながらも急いで顔を離す。そして即土下座。今選択を誤れば、学校でパイオニアなどと変な呼称で呼ばれる未来は待ったなし。プライドなど安息の危機の前では塵に等しい。
例え事故とは言えすぐに謝らねば!いやここは感謝すべきなのか!?ここで謝ってしまっては無礼に値するのでは?くそ!選択肢が提示される世界に生まれたかった!
「君がかなり面白い子だって言うのは分かったから、とりあえず土下座はやめてこっち向てくれる?許したげるからさ」
これは罠に違いない!きっと顔を上げた瞬間に写メを撮られてグループL○NEで晒されるんだ!きっとそうだ!
「本当すみませんでした!どうかそれだけは勘弁して下さい!何でもしますから!SNSだけはどうか!」
「いや。別に私もそんな悪じゃないから。というか別に今のがわざとじゃないっていうのは分かってるし。何より、当事者の私が許すって言ってるんだから気にしなくていいって」
そう言われた俺は、恐る恐る顔を上げた。
・・・おっぱいだ。|圧巻'あっかん》の肉壁だ。下から見上げると顔がほぼ見えない。絶景かな。
「やっぱり君は土下座したままの方がいいかもしれないね」
「はっ!?」
俺の心の声はガバガバなのか?心は叫びたがらなくて良いんだよ!
「まぁいいや。とりあえず、ようこそ我がサークルへ。今日から君もここのメンバーだ。まずは自己紹介してくれるかな?そしてこの紙にサインを」
「あ、ええと、一年の出水維倶です。宜しくお願いします。ってここのメンバーってどういう事ですか!?というか、何ですかこのサインしたらヤバそうな契約書は!」
てかよく見たら、当サークルはその責任を一切負いかねます、とかいう定型文みたいなのが書いてあるんですけど!
「いや~、穏便に済ませたかったんだけどな。こうなったら仕方無いか~。君が悪いんだからね。素直にサインしないからこうなるんだよ~」
そういうと、彼女はスマホを何やら操作し始めた。まさか!?
「よし!○witterに君が私の胸に顔埋めてる写真投稿しちゃおう。ついでに土下座も付けとこう。」
「この世界に神はいないのか!?」
「ちょっと由那!それはさすがにやり過ぎだよ!!」
神様はいました。俺の後ろに女神様がいました。
でも、何で今鍵を閉めたんですか?俺は悲しいです。
「いや~、冗談だって。本当にやる訳ないじゃん。でも、入会はしてもらわないと困るんだよね。ってことで、脅しとかは無しで入会してくれない?」
まぁ、バイトしてるわけでもないし、サークルに入ること自体は問題ないんだけど
「まず、ここってどういうサークルなんですか?」
流石に得体もしれないサークルに入るのは御免だ。
「どういうサークル、か。そうだね~。一言で言うならオカルト研究部?みたいなものかなぁ?基本そういった類の話、いわゆる都市伝説だとか、七不思議だとかを研究?調査?していく感じなのかなぁ?」
「・・・なんで疑問形ばっかなんですか」
「いやぁ~、恥ずかしいことに、実はまだサークルとしてこれといった活動をしてなくてね。主には、部室でダラダラしたりしてるだけというか」
・・・
「む、むぅ。いやね、全く活動してないという訳ではないんだよ!例えば、皆で怖い話したり、ホラーゲームしたり、こっくりさんしたり、コワ○ぎ観たり・・・とかさ」
「高校生かッ!!いや、もうそれサークル活動でもなんでもなくて、ただの遊びみたいなもんじゃないですか!」
「いや~、最初はもっとちゃんとするつもりだったんだけどね。ほら、なんて言えばいいのかな。例えるならそう、秘密基地!自分たちの秘密基地を作った感じに近いよね。そしたらさ、何か遊びたくなるじゃん?真面目に活動しなくてもいいかなぁ、とか思っちゃうじゃん?」
同意を求められましても。というか、流石無駄にサークルが多い大学なだけあるな。こんなサークルでも許されてるとは。普通、即廃部にされそうなサークルだけどな。
「そう、今まさに君が思っている通り、廃部されてもおかしくないサークルだ。なぜなら、現状会員が三人しかいない!サークルを存続させるには最低でも四人のメンバーが必要。つまり、もし入会希望者が一人も現れなければこのサークルは終わり。YOU DIEDだ」
なんでバイ○風に言ったんだよ。というか、何で俺の思ってることバレてるの?今度は絶対口に出してないよ。何なの?みんなエスパーなの?
「つなぐん。君も分かるだろ?こんな得体もしれないサークルに誰が快く入ってくれるだろうか。いや、誰も入らない!」
「自信満々に言う事ですか、それ。まぁ、確かに希望して入るような人はいないとは思いますがね」
というかまずこんなサークルがあることさえ知らなかったしな。
「そうだろう!だからこそ、このような強硬手段に出たんだよ。いやぁ~、我ながらこうも上手くいくとは思わなかったけどね。まぁ、男ならうるりんのメスの色香に誘われて部室までは来るとは思っていたけど、まさか【弱みを握ろう!私の胸に飛び込んで作戦】まで成功するとは思わなかったな~」
「あれ、偶然じゃなかったんですか!?」
「だから、謝らなくていいって言ったんだよ。まぁ、逃げられないためにもどうにかする必要があった訳だし、そこで部長の私が一肌脱いだってわけさ。正直君がこけてくれなかったら成功しなかったから、そこは賭けだったけどね。君はおっぱいに顔を埋められて、私は弱みを握れる、まさにwin-winって感じの素晴らしい作戦だったね」
う、うむ。まぁ、確かにその通りではあるな。こんな体験、人生に一度あるかないかだしな。
というか、さっきから卯瑠璃先輩が顔を赤くして、口パクパクしながら固まってるけど大丈夫なのだろうか?
「あぁ、今一肌脱いだって言ったけど、本当に一肌脱いでるんだぞ~。この意味分かるかな~?」
・・・ま、まさか。いや、確かに服の上からにしてはかなりリアルに肌の感触を感じたような。お、おぉぉぉぉぉ!!!!これはもしやノーのブラなのでは?生のパイなのでは?うぉぉぉ!!!俺の頭をパイがπが支配するぅぅ!!あぁぁ、3.1415926535、ふわぁぁアルキメデスさんんんんんん
「あぁ、言い忘れてたけど、この胸は偽物だよ。私のお兄ちゃんのアダルトなグッズを内緒で盗ってきたんだ~。これってすっごいリアルだよね~」
「失望した」
「絶望はしないんだ」
それは、他の先生が使ってるんでね。てか、外すと胸一気に小さくなったな。Cぐらいか?
「まぁ、このでっかい胸は偽物だけど、一肌脱いだって言うのはほんとなんだよ~。じ・つ・は、下、穿いてないんだよ~」
「不幸を治す薬はここにありました」
はっ!まて、これも嘘かもしれないじゃないか。俺は馬鹿か!パンツ穿かない女性がどこに居るんだよ!あんなの創作の世界にしか存在しない都市伝説みたいなもんだろ!
「流石に見せる訳にはいかないから証明できないけど、まぁ信じるか信じないかはあなた次第ってことで」
穿いてない世界か、穿いている世界かどっちかを選べと言うのなら俺はノーパンの世界線を選ぶ。いいじゃないか、男だもの。
「それで、つなぐん!サークル入ってくれる気になったかな?」
今までの説明でなぜ入りたいと思うと思ったのか不思議でならないけど、
「えぇ。まぁ、入ってもいいですよ」
「うぉぉ!?突然のデレ期ですか?流石の私も驚きを隠せないよ!」
「俺も特にすることもなく暇でしたし、サークルに入ってみたいっていう気持ちも全くなかったって訳ではなかったですからね。写真でヤバい現場も撮られちゃってますし、ここは大人しく作戦に引っかかっておきますよ」
「・・・写真も嘘だから、ね。撮ってないからね。もし、ほんとに嫌だったら入らなくていいんだよ?」
「ははっ。どうしたんですか先輩、いきなりしおらしくなっちゃって。もしかして、押しに弱いタイプとかですか?」
「ち、ちがうよ!一応、その、嫌々とかはやだし、さ」
「ふむ。じゃあ、はっきりと言いましょう」
「俺をこのサークルのメンバーに入れて下さい」
「・・・うんっ!ようこそ、ミステリーサークルへ」
「さて、じゃあ改めて自己紹介しようか。私が部長の――
―これが、俺がサークルに入るまでの経緯だ。
「ちなみに、記念に聞いておきたいんですが。由那先輩、今日のパンツは何色ですか?」
「・・・君はかなりの変態だね」
答えてもらえなかった。あと、卯瑠璃先輩に引かれた。
次は本格的に探索していきたいですね。え?レイがサークル入会の部分で出てない?・・・忘れてたわけではないんですよ。