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84    造る

 モンシア辺境伯からバーナム王国の話を聞こうと思ったが、有益な情報は得られなかった。

 何故、バーナム王国がエルフの国を狙っているか分からないが、もしもの為に準備しておく必要がる。

 そう思って、魔法学校を訪れた。

 久し振りの魔法学校…。何故だか、とても新鮮だった。

 それも、その筈だ。内乱が起こってからは、ほとんど来ていなかったからだ。本当に長く来ていなかった。

 他の生徒達は、俺の事をもう忘れているんじゃないかとも思えてくる。

 しかし、それは杞憂だった。

 魔法学校に足を踏み入れた瞬間に黄色い声がしたからだ。


「キャー、英雄のヴェルナルド様よ!」

「本当だ。今日は学院に来られたのね」

「サインもらっちゃおうかしら?」


 どこかで聞いたセリフだな。もしかしたら、俺の機嫌をよくする為に、魔法学校が録音を流しているんじゃないかと思えてくる。それはそれで、何か悲しい気持ちになるから忘れようと思う。

 次に向けられるのは男共の視線…。いつもの様に殺気と敵意だった…。何でだよ…と思いつつ、考えてみたら答えは簡単だった。

 シルヴィ達と婚約してるからだ。シルヴィ、エマ、カナ、ユイは学院のアイドル的な位置付けらしい。なんで、ここにユイが入っているのか分からないが、きっと可愛いからだろうと思った。

 だから、ライバル視されているのかもしれない。もう、遅いと思うけどね。

 そう思っていると、数人の女生徒達がやってきた。

 女生徒達に囲まれて、ちょっとドキドキしちゃった。


「あっ、あのヴェルナルド伯爵様ですよね?」

「そうですけど…。何か用でしょうか?」

「いっ、いえ…あの…サっ…」


 サ?サンドバッグになって下さいって言われたらどうしよう。…ないな…うん…それはないな…。

 サ?『最悪~、マジ、チョベリバなんですけど~』って言われたらどうしよう。いつの時代の言葉だ!?

 歳がばれるな…。忘れよう…って言うか忘れてくれ…。


「サイン、下さい!」

「「「下さい!」」」


 え?サインですと?俺ってそんなに人気あるんですか?


「…いいですけど…」

「やった!ありがとうございます!」

「こっちにもお願いします」

「ええ、分かりました…」

「きゃ~、すごく硬い~」

「え~、すごい。逞しくて格好いい」


 サインをしている間、女生徒達は興味があるのか触ってくる。

 ちょっと…あんまり触らないで…。そこ、こちょばい…。


「ユイちゃんもいるぅ」

「可愛いぃ」

「ユイたん。ハァハァ」


 女生徒達は俺の後ろにいるユイに気付いたのか、ユイの頭を撫でたりしていた。

 ユイも受け入れているようだ。ちょっと照れているのか、はにかんだ笑顔が可愛い。

 …最後の女は要注意だ。顔を覚えておこう…。

 女生徒達に触られるがまま…せがまれるがままサインをすると女生徒達は『ありがとうございます。先輩。』と言い残して立ち去って行った。

 どうやら、後輩の子達みたいだ。立ち去る女生徒達の後ろ姿を見送っていると男子生徒達から、更に敵意の籠った視線が向けられる。

 俺が何したって言うんだ。


「「「ヴェル様「君」!」」」

「やあ、シルヴィ、エマ、カナ、久し振り。元気にしてた?」

「はい。会いに来てくれたんですか?」

「やっと、お会いできましたわ」

「ヴェル君、忙しそうだったもんね…」


 寂しかったのか…。ごめんね…ずっと動き回っていたからね。あとでハグしてあげよう。ここじゃ、人目が気になるし、男子生徒達からますます敵意を向けられそうだから、あとでね。


「ところで…ヴェル様?」

「何でしょうか?シルヴィアさんや…」

「先程の女生徒達に何を?」


 心臓が止まりかけた。

 何やら変な感じがする。妙なプレッシャーが感じてならない…。シルヴィ達はニ○ータイプなのか?


「…え?いや…サインを求められたからしてただけだよ?」

「…本当ですか?」

「また、新しい女の子に手を付けようとしていたんじゃありませんの?」

「ヴェル君、手が早いからね…」


 どんだけ信用ないのよ…。たまには信じてよ。


「いや、本当だって…」

「その割には、鼻の下を伸ばしてましたね?」

「そっ、ソンナコトハナイヨ…」

「デレデレしてましたわね…」

「めっ、メッソウモナイ…」

「体も触らせてたね?」

「…かっ、勝手にね…触ってきたのですよ…」


 ちょっとぐらいいいじゃないか…。俺だって男の子だよ?女子達にきゃーきゃー言われたいお年頃だよ?…ごめんなさい…。


「…まあ、今回は大目に見ましょう…」

「…ありがとうございます…」


 不思議だな…。空はこんなに青く晴れてるのに、俺の心は晴れない…。しょっぱい!人生はこんなにもしょっぱいものなのか?俺の人生はしょっぱく生きなければならないのか?


「それで、今日はどうされたのですか?」

「うん、ちょっと魔法の研究をしようと思ってね」

「そうでしたか。では、お邪魔しない方がいいですね」

「いや、そんなことないよ。久し振りに会えたんだから見ててもいいよ」

「でも、授業もありますから後でお伺い致しますわ」

「ヴェル君、後でね」

「分かった。また後でな」


 シルヴィ達を見送ってから魔法実技棟に向かった。

 準備を進めようと思う。

 アルネイ王国からエルフの国に行くまでは、馬だと片道三ヶ月掛かる。

 エルフの国がピンチだと聞いて、あまり悠長に時間を掛けてはいられないだろう。

 瞬間移動が使えたらいいんだけど、あれは失われた魔法の一つで、師匠の魔導書にも理論しか書いていなかった。直ぐに完成させたくても、今は時間がない。だから、別の方法を考えなくてはならないのだ。

 どうするか考えあぐねていた時に、前世での飛行機を思い出したのだ。空を飛べれば、早く着く。しかし、俺だけ浮いてシャーリーを運ぶとなるといろいろ・・・・と問題やら誤解を招きそうで怖い。

 シャーリーを抱きながら飛んでいるとこなんてシルヴィ達に見られた日には、どんな酷い目に遭うか…。

 まあ…それは横に置いといて…。

 この世界には飛行機などある筈もない。ないならないで仕方がない。しかし、魔法とは万能なのだ。だから、作る事にした。

 重力魔法で浮き上がり、風魔法もしくは、火魔法を推進力にして移動すればいい。乗り物を浮かせて移動したらいいのだ。

 土魔法で鉄を造りだし、全長30m程の船を造った。船と言っても、船体中央部より翼がある。つまり…、飛行船だな。

 勿論、ユイにも手伝ってもらった。一人で造るのにも時間が掛かるからね。ユイだって魔法使いだ。

 俺の指示通りに作業をさせた。魔法の修業にもなるし、俺のサポートにもなるし一石二鳥だ。

 旅する事も考えて、船の中には操縦室、食糧貯蔵庫、4つ寝室、浴槽付の風呂場、トイレ、台所、それに馬車などを格納するスペースを作っておいた。これなら、快適に過ごせるだろう。

 そして、何よりも鉄でできているから防御力も高い。これなら、下から攻撃を受けても耐えられると判断して鉄で造ったのだ。

 まあ、浮かせて移動させるのに少しばかり・・・・・魔力を使うが俺なら大丈夫だ。俺以外にあまり使えても困るけどね。例えば…強奪されるとか…。魔法の袋に仕舞えばいいだけだが…面倒臭い…。


「ヴェル様、探しましたよ?」

「研究室にいないから帰ったかと思いましたわ」

「どこか行く時はちゃんと言ってよ」


 飛行船建造に夢中になっていたのか、シルヴィ達が来たのに気付かなかった。


「ああ、ごめん。ちょっと研究室じゃ狭かったからね」


 研究室でこんな大きな物を作る訳ない。研究室が壊れちゃうからね。


「それにしても…これは何ですか?」

「飛行船だよ」

「飛行船!?」

「飛ぶんですの?この鉄の船が?」

「ほんとに?」


 シルヴィ、エマ、カナは鉄の船が飛ぶと聞いて、興味津々の様子だ。


「飛ぶと思うよ。今から実験するけど、乗ってみる?」

「ヴェル君、乗ってみたい」

「お兄ちゃん、乗ってみたい」

「じゃ、外に行こうか…」

「「はい」」「うん」

「ん」


 飛行船を試乗する為に、魔法の袋に仕舞って校庭で再度、取り出した。周囲の生徒達は突然、鉄の船が校庭に姿を現した事に驚いていたようだった。

 まあ、そうなるわな。普通、そうなるわな。鉄の船が突然出てくる訳がない。

 気にしないでシルヴィ達と飛行船内部へと入る。一通り船内を案内した後、いよいよ操縦室で試運転を開始した。


無重力ゼログラビティ!」


 重力魔術を発動すると『ゴゴゴ』と音を発しながら船体が浮き上がる。


「ヴェル様、すごいです!」

「まさか、本当に飛ぶとは思ってもみませんでしたわ…」

「ヴェル君、すごいすごい!鉄の船が浮いてる!」

「飛んでる」

「まだ、浮かせただけだよ。本番はこれからだ」


 シルヴィ達は鉄の船が魔法で浮き上がっている事に驚きつつ、はしゃいでいた。

 これで驚いていては移動したらどうなるんだろう?まだ、12歳の女の子達だ。初めての体験に心躍らせているのかもしれない。

 ユイは驚くと言うよりも、楽しんでいる感じだな。あっちに行っては窓から下を見て、こっちに行っては窓から下を見る。

 正直、可愛い…。


重力反転インバーショングラビティ!」


 重力反転魔法を発動して高度を上げていく。100mほど、高度を上げた所で船体に無重力魔法を掛けて停止させた。

 さて、いよいよこれからだ。浮かせるのはできたが、問題は移動させる事だ。

 重力魔法を発動しているから、他の魔法は使えない。しかし、俺には並列思考魔法がある。

 並列思考魔法を発動した。

 まずは、風魔法で船体を動かす。帆船が風で進んでいく感じだ。

 …。

 ……。

 ………。

 …遅い…。

 いや、、馬よりは十分早いんだけど…。俺がイメージした飛行機のように早くはない。風では弱いかったか。

 じゃ、火魔法ならどうだ?ジェット機の様な火力で船体を前に押し出せばいいんじゃないか?


業火ヘルファイア!」


 船体の後尾から火魔法を発動させる。

 先程の風魔法よりも速度が出る。徐々に加速度を増し、進んでいく飛行船。しかし、速度に限界がきたのか、一定の速度で加速しなくなった。

 ふむ…これでは国境まで一週間とちょっとぐらいかな?まだまだ、改良の余地があるな…。


「ヴェル様、早いですね」

「馬より早い乗り物に乗ったのは初めてですわ」

「楽しいね」

「ん」


 人族が乗る乗り物で馬より早いものはない。だから、新鮮なのだろう。

 …ユイが乗るクーパーは早いけど、あれはユイ専用だ。普通の人が冒険者達が恐れるブラッディタイガーに乗る訳ないしな。


「んー…まだまだ、改良しないとだめだな」

「そうなんですか?」

「十分、早い気が致しますけど?」

「納得いかない顔してるよ?ヴェル君」

「ちょっと、考えてたより速度が出てないからね…。戻って改良でもするわ」


 進路を魔法学校に向け、帰途に就いた。

 さて…、どうしたものか…。ジェット機は翼の部分にエンジンが付いてたな。船体後尾から火魔法で推進力を得たけど、翼の部分にもエンジンを取り付けてみるか。

 そしたら、もっと速度が出る筈。しかし、そうなると重力魔法の他に火魔法を幾つか発動しなければならない。

 並列思考魔法を使えば無理ではないが、正直きつい。不測の事態に備えて結界魔法も発動しなければならない事も考えると…。今のままでは、厳しいな。

 だとしたならば、どうする?

 火魔法だけでも、魔石を使って推進力にするか。その分だけ負担も減るし、魔石は充電もできるから何度でも使用可能だ。

 問題は魔石を使う場合、それほど強い火力は出せないと言う事だ。魔石はあるにはあるが、大出力の火魔法を発動できるほどの魔力を充電できる魔石がない。

 そんなに大きな魔石を持ってないからね。じゃ、幾つかの魔石を乾電池みたいに繋ぎ合せればできるのかも?

 試に、やってみるか…。

 それでも、火力が低いのならエンジンを2基、3基と増設して速度を上げれるようにすればいい。ジャンボジェットだって4基のエンジンが付いてるんだ。それで、十分な速度を確保している。

 それと同じ事をすればいいだけだ。

 考えが纏まったところで魔法学校に到着した。

 飛行船を静かに校庭に着陸させ、早速、改良に取り掛かった。

 推進力となる魔石を幾つも繋ぎ合せてエンジンを造る。全部で5つだ。

 魔石を繋ぎ合せるのは楽だったが、同じ出力になるように魔石の大きさや取り付け位置に苦労した。最終的に、左側の翼の下に2基、右側の翼の下にも2基、そして船体後尾に1基、取り付けた。

 試行錯誤を繰り返し、2日経ってしまったが、ようやく納得のいく速度が出た。ついに、飛行船プロトタイプヴェルナルド号が完成した。

 移動手段はこれでいいだろう。


 次に用意しようと思うのは、遠距離通信気だ。

 何故かって?

 不測の事態に備えて、アレクやモンシア辺境伯達と連絡を取れるようにしておく必要があるからだ。

 これは、師匠の残してくれた魔導書に書かれていたので作るのは簡単だった。

 縦15cm、横10cmの板状の物だった。どこからどう見ても…携帯だった。

 一万年前にこんな物があったのかと驚きつつ、何で今まで無かったんだろうとも思った。でも、これって師匠が作った物なんだよね。製造方法を他に残していなかったんだと思う。どこか抜けてるのが師匠だ。だから、納得した…。

 とりあえず、師匠が発明した携帯だから『アルフォン』と命名した。師匠の名前は、アルフォードだからアルフォンだ。

 これで、一通りの準備は終わった。

 早速、アレクに話をしようと王宮に向かった。

 アレクは魔法学校に出席してないのかな?と思いつつ、王族は…シルヴィは別として王太子は忙しいのかもしれないと納得しておいた。


「ヴェル!久し振りだな」

「本当に久しぶりだね、元気にしてた?」

「ああ、最近ずっと忙しいけどね…」

「お疲れ様」

「ありがと…で、今日はどうしたんだい?」

「いや、実はね…フロスト商会で助けたエルフのシャーリーを覚えてるかい?」

「ああ、覚えてるよ。たまに店でスィーツを食べてるから、その時にシャーリーと話していたりするよ」

「…アレクも、絶世の美女狙いか…」

「…違うよ…。疲れた時には甘い物がいいって言うだろ?だから、食べに行ってるんだよ」


 ほんとかよ?怪しすぎるよ。ちょっと、間があったし…。


「どんな話をしてるんだ?」

「特にヴェルの事をかな?」

「何で俺の事なんだよ?」

「いや、ヴェルがどんな人なのかとか内乱時での出来事とかね…」


 犯人はお前か…。だから、シャーリーが俺に頼んできたのか。本当に厄介事を持ってくるよな…。


「…アレク…」

「何だ?」

「個人情報は漏らさないようにして下さい」

「何でよ?ヴェルの活躍は目覚ましいものがあるんだよ?誇っていいと思うけど…」

「まあ、それはいいとして…本題を話そう…」

「改まってなんだよ…ヴェルの真剣な話は、ちょっと怖いな…」

「まあ、いいから聞けって…」


 アレクは、何を言われるか不安そうな顔をしていた。


「実は、シャーリーにエルフの国を助けてほしいと頼まれたんだよ」

「エルフの国を?」

「そうだ。何でもバーナム王国がエルフが住む国は自分達の領地ですぐに出て行けと言っているらしいんだ」

「何だそれは…横暴だな…」


 バーナム王国の行為にアレクは不快な表情だった。アレクは馬鹿な事もやるけど、誠実な人柄だ。こうした横暴な事は嫌いなのだろう。


「そうだな…。それだけなら、どこにでもある話っぽいんだけど、ちょっと違うかもしれないんだ」

「違うって何がだい?」

「もともと、エルフの国とバーナム王国は友好関係にあったそうだ。しかし、突然、掌を返したかのように立ち退き勧告をして来たって事だ…」

「う~ん、それでも特に変な事だとは思えないんだよな。国の利益を優先して強硬な対外政策に出たとも考えられる」


 アレクは、それだけでは判断できないと言ったところか…。


「でも、エルフ側は狙われる目的が分からないと言ってるんだ。それにアルネイ王国も交易を再開する為に使者を何度も出しているのに一人も使者が帰って来ないとモンシア辺境伯が言ってるんだ。変じゃないか?」

「それは聞いている。軍の動きも荒立たしいと報告も受けているしね…。何か関係があるのか?」

「それも分からないが、エルフの国に攻めようとしている可能性が高い…けど、アルネイ王国の使者も帰って来ないって事は、アルネイ王国も狙われていると考えられないか?」

「…どうして、そう思う?」


 アレクの顔に緊張が走った。

 攻められるかもしれない危険性に気付いていなかったのか?それでは、国を守り治める事はできないぞ。


「アルネイ王国はこの前まで内乱があった。内乱があったと言う事は、それだけ国力も疲弊して軍備も弱っている…攻めるには今が好機だとは思わないか?」

「…かもしれないな…。この事は、モンシア辺境伯にも話しておくよ。国境の警備も見直しておく」

「そうしてくれ…それとな、アレク。俺はエルフの国に言ってみようと思う」

「シャーリーの為か?」


 アレクの言う事はもっともだと思う。

 しかし、気になっているのだ。突然、掌を返したかのようにエルフの国を狙うバーナム王国に…。

 ベハインド元公爵が、突然謀反を起こした時と似ている。もしかしたら、裏で魔族が関与している可能性が捨て切れないかったからだ。

 しかし、その事をアレクに言う訳にはいかなかった。確証がないからね。

 それに、確証があったとしてもアレクが素直に行かせてくれるか分からない。


「シャーリーに頼まれたってのもあるけど、どうしても今回の事が気になる…。行かなくちゃいけない気がしてならないからね」

「危険だぞ?」

「それは、分かってる。でも、何かできる事があれば協力してやりたいと思う」

「そうか…ヴェルの事だからきっと大丈夫だと思うけど、この事はシルヴィ達は知っているのか?」

「…いや、内緒で行こうと思う…」

「危険だからか?」

「ああ…もし、今の話を聞いてエルフの国に行くって言ったら着いて来ると言い出しかねないからね。だから、アレクも内緒にしといてくれよな?」

「…分かった…。でも、ヴェルと連絡が付かないと心配になる」

「そう思って、これを作っておいた」


 魔法の袋から遠距離通信気…携帯をアレクに差し出した。


「何だ?これ?」

「遠距離で通信ができる装置…アルフォンだ。これがあれば遠くても会話をする事ができる」

「すごいな…。よくこんな物ができるな…」

「師匠の残してくれた魔道書のお蔭でね…。不測の事態に備えてアレクが持っていてくれ。それと、もう一つ…これはモンシア辺境伯に渡しといてくれ」

「分かった…。でも、これってどう使うんだ?」


 ですよね?携帯を使った事がない人は、使い方が分からない。

 本当はラインも使えるようになっているんだけど、たぶん使いこなせないと思ったから、らくらくフォンタイプにしておいた。アレクはお爺ちゃんではないが、扱えるか分からないから徐々に教えて行こうと思う。

 しかし…一万年前にラインなんて考えた師匠はすごいと思う。でも…使う相手がいなかったのか、試しに使ったとも書いてなかった。もしかして…師匠ってボッチだったのかな?…あまり考えたくなかったので忘れる事にしようと思う…師匠の名誉の為に…。


「魔力を流してこのボタンを押せば、連絡を取りたい相手の携帯番号が出るからそこに振れればいいさ」

「分かった」

「でも、緊急事態にのみ使うから普段は持っておいてくれ」

「分かった。何かあればすぐにでも連絡をくれ」

「そのつもりだ」

「それじゃ、明日…シャーリーにエルフの国に行くって伝えるよ」

「くれぐれも無茶はするなよ?」

「分かってるって…」


 心配性だな。俺が無茶した事なんて…数えきれないかも…。

 まあ、それは置いといて…。明日、シャーリーに話をしようと思う。

 危険かもしれないが、準備は進めてきた。後は、なるようになれだ。

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