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81    報奨

 商業ギルドでスラム街の土地の契約を交わした翌日、国王陛下に呼び出された。

 何でも、内乱時の功績を称えて褒美を下さるとの事だった。

 この店を開店して工場を建てる計画もしている忙しい時にと思いつつ、足を運んだ。

 謁見の間には、モンシア伯爵、グランネル子爵、クリューガー子爵、クゼル将軍、それに父様がいた。


「父様!どうしてここに!?」

「どうしたも何も、国王陛下が褒美を下さるとの事だからに決まってるだろう?」


 ですよね?そうでした…。父様も兵を指揮して戦ってたんだった。


「それもそうですね」

「ヴェルナルドよ…よいかの?」

「あっ、国王陛下…すみません…」

「申し訳ありません…陛下」

「いや、よい。久し振りの家族の対面じゃ、然もありなん…」


 実は、父セドリックとは王都凱旋以来、会っていなかったのだ。

 王都凱旋後、父様は家族を迎えにグランネル子爵領で匿ってもらっているカナのお父さん、ロドリゲスさんの所に向かったのだ。

 実家に帰る前に家族を連れて王都に来たそうだが、俺はシロクロモウとトサカ鳥を捕獲しに王都を出ていたから会えずにいたのだ。残念がる家族には申し訳なかったが、孤児院の為に動いている俺に誇りに思うと言い残して実家に帰って行ったのだった。

 その内、実家に帰ろうと思う。やる事が終わったらね…。


「では、今回の内乱に於ける功績に応じて褒美を与える。まずは軍務卿…モンシア伯爵、前へ」

「はっ!」

「此度の内乱時、軍を指揮し、反乱軍を鎮圧した功績を称え、領地の加増と辺境伯の爵位を与える」

「有り難き幸せ。国王陛下に更なる忠誠を誓います」

「うむ、しかと励むがよい」

「はっ!」

「次に、グランネル子爵、クリューガー子爵、前へ」

「「はっ!」」

「両子爵は、モンシア辺境伯をよく助け、反乱軍鎮圧に大きく貢献した。この功績を称え、両子爵に領地の加増と伯爵位を与える」

「「はっ!有り難き幸せ!」」

「うむ、忠勤に励め!」

「「はっ!」」

「次にクゼル将軍、前へ」

「はっ!」

「クゼル将軍は父、モンシア辺境伯をよく支え、軍の先頭に立てば敵を挫き、軍の中に有ってはよく守った。この功績を称え、右将軍に任ずる」

「はっ!」

「更なる忠勤を期待する」

「はっ!必ずや!」

「グナイスト騎士爵、前へ」

「はっ!」

「此度の内乱ではその類稀なる剣の才能を存分に発揮し、軍の先頭に立って敵を打倒した功績を認め、領地の加増と男爵位に叙任する」

「はっ!」


 モンシア伯爵…いや、辺境伯は伯爵の中でも上位の辺境伯になった。

 グランネル子爵、クリューガー子爵は伯爵に昇爵。クゼル将軍は将軍から右将軍に昇格。父様は男爵に昇爵した。

 淡々と読み上げられる褒美に、皆のこれまでのがんばりを思い出して称えていた。


「ヴェルナルド男爵、前へ」

「はっ!」


 ついに俺の晩になった。

 皆、爵位が一つ上になっている。

 父様は騎士爵から男爵、クゼルさんは将軍から右将軍だから2階級特進組だな。

 じゃ、俺は何くれるの?と思い予想を立ててみた。俺は男爵だから、1つ上でも子爵、2つ上でも伯爵。

 いや、伯爵はないだろう…。精々、子爵で領地を少し大目ぐらいに貰えるのかもしれない。貰っても別に嬉しくはないんだけど、俺と結婚した後のシルヴィ達の為に貰っておかなければならないな。

 だって、そうだろう?爵位だけある貴族に、王女、それに辺境伯と伯爵になった人の孫娘だもの…世間体があるかもしれないしな。

 こう言うのが嫌いで貴族になるのが嫌だった気がするんだけど…シルヴィ達の為だ…仕方ない。国王陛下だもの…きっと悪いようにはしないだろう。


「ヴェルナルド男爵は此度の内乱時、王太子と王女を護衛して救った。又、作戦の立案、魔法士隊の強化、王国に貴重な金を採掘、更には反乱軍を壊滅に追いやった功績を称え…」


 称え…何だ?何くれる気なんだ?


「伯爵位と領地を与える」


 伯爵位きちゃった。2階級特進組だった。12歳の男の子が伯爵か、何かすごいな…。普通は決してあり得ない事だ。


「はっ!」

「更なる功績を期待する」


 嫌だよ…もう疲れたよ。後は、アレクに任せるよ。


「はっ!」


 爵位が上がるはいいとして、領地か…。正直嬉しくない。いや、それよりも俺に統治ができるだろうか?

 俺はまだ12歳だ。12歳の男の子に領主として領地を治める才覚も経験もない。勿論、威厳もだ。それに直属の配下もいるわけではない。それでどうやって統治しろと?無理だろ?国王陛下も分かってて言っているのだろうか?


「時に、ヴェルナルド新伯爵。」

「はい?」

「領地を与えたと言っても、お主はまだ成人前の準成人じゃ。それに学生の身分でもある。王都を離れられぬだろう。」

「そうですね。」

「ならば、成人するまでの間は王国が責任を持って管理する事としよう。お主が成人した暁には正式に与えるものとしよう。」

「はっ。お心遣い感謝いたします。」


 よかった。統治は王国が責任を持ってやってくれるなら安心だな。これなら、今目の前の事だけに集中できる。先ずは工場だな。


「それでは、今宵新辺境伯、新伯爵、新男爵、新右将軍の祝いの宴を始める。皆の者、楽しみにしておるがよい。」

「「「「「はっ」」」」」


 全員に褒美が下された後、お祝いの宴が催された。

 ちなみに、プレリュードさんはクゼルさんの後釜として将軍に封じられたそうだ。


「…では、祝して乾杯!」

「「「「「乾杯!」」」」」


 やばい、ぼーっとしてたら乾杯の挨拶を聞き逃すところだった。


「ヴェル様!伯爵位昇爵おめでとうございます」

「伯爵位、おめでとうございますわ」

「ヴェル君、おめでとう」

「お兄ちゃん、おめでとう」


 乾杯が終わった後、俺の傍にいたシルヴィ達が一斉にお祝いを言葉をくれた。


「ああ、ありがとう。嬉しいよ…」

「…?ヴェル様?あんまり嬉しそうに思いませんがどうしました?」


 しまった…。ちょっと顔に出ちゃってたか。シルヴィ…心配してくれたのかな?


「ごめん…。あんまり嬉しくないのは事実だよ」

「ヴェル様、どうされたと言うのです?内乱時ではあんなにがんばったと言うのですのに…」

「うん、実はね貴族になるのが嫌だったんだ。ほら、いろいろとあるでしょ?貴族って…」

「それは、そうだけど…。それだけじゃ、なさそうだよね?」

「…今回の内乱でどれだけ多くの人が死んだのかなって…。貴族は戦争だもの死んで当たり前かもしれないけど、平民はどうなの?無理やりじゃないにしろ、兵隊として家族の為に戦って生き残ったらそれでいいけど、死んだら家族はどうなるの?」


 今回の内乱では多くの人が死んだ。平民も貴族も分け隔てなくね。

 反乱軍に参加した貴族も多くいた。家族を人質に取られて、仕方なくって人もいたようだけど、それでも反乱軍に参加した事には変わりない。

 爵位の降爵や領地を減らされたり没収されたりとあったみたいだ。だから、俺達に下された褒美も領地の加増があったのだ。貴族はそれでもいいだろう。自分達のやった事だし、貴族としての責任があるからね。

 でも、平民はどうなるの?生き残ったら報奨金があるけど死んだら終わりだからね。


「それは…」

「内乱でどれだけ多くの孤児達が生まれたんだろうなってね…」

「「「…」」」

「だからこそ、孤児院を救う仕事をしてせめてもの罪滅ぼしをしているのかもしれない…」


 しまったな…。今、話すべき事じゃなかったな…。シルヴィ達に悪い事をしちゃったかな。


「そうですね。ヴェル様らしいお優しい事だと思います」

「さすが、ヴェル様ですわ。そこまで考えて行動しているなんて思ってもみませんでしたわ」

「やっぱりヴェル君はすごいや」

「褒め過ぎだよ。他にも理由はあるよ?孤児達は可愛いし、素直じゃん?だから何か協力してあげたいなって思ったりもしたからね」


 俺の言葉にシルヴィ達は微笑ましく笑顔を向けてくれた。

 有り難い事だ。こんなにも尽くしてくれる女の子達がいるんだ。間違っていても、この子達の為にがんばろうと思う。


「まあ、貰った物は有効に活用させてもらうさ。俺達が結婚した後に産まれてくる子供の為にね」

「もう、ヴェル様ったら…」

「不謹慎ですわよ…」

「あはは、さすがヴェル君だね。えっちなところも好きだよ」


 シルヴィ達は産まれてくる子供と聞いて変な想像をしたらしい。顔も少し赤いな。カナに至っては、どさくさに紛れて軽い告白してるし…。


「ん~?変な事は言ってないよ?シルヴィ達はナニ・・を想像したのかな?詳しく聞かせて欲しいな…」


 からかうようにシルヴィ達に尋ねてみると…、


「「「もう!ヴェル様「君」!」」」

「あはは」


 シルヴィ、エマ、カナは赤い顔を更に真っ赤にして怒られてしまった。

 ほんとに可愛いな、この子達は…。おじちゃん、胸がきゅんきゅんしちゃうよ。

 真っ赤な顔したシルヴィ達を残して、モンシア伯爵…じゃなくて辺境伯の元に向かった。


「モンシア辺境伯」

「おお!婿殿、楽しんでおられますかな?」

「ええ、お蔭様で…。辺境伯に昇爵、おめでとうございます」

「婿殿のお蔭ですぞ、こちらこそ礼を言わねばなりませんな。感謝致しますぞ」


 よっぽど嬉しいのか、かなりできあがっている様子だった。しかし、さすがは軍務卿と言ったところか…顔を真っ赤にして酔ってはいるが普段と変わりないみたいだ。もしかして普段から酔ってるんじゃないだろうかと疑ってしまう。


「いえいえ、モンシア辺境伯がしっかりと責務を果たしたからですよ」

「婿殿、もうそろそろ堅苦しい呼び方は辞めにして祖父と呼んで下され。婿殿はエマの婚約者なのですぞ」


 嫌だよ…。こんな凄味のあるじっちゃんなんて持ちたくないよ。しかし…そうも言ってられないかも?エマと結婚したら、義理の祖父になるのだから…。


「…じゃ…、じっ様で…」

「うむ、よろしくお願いしますぞ。婿殿」

「…ええ、じっ様…」


 これからは、モンシア辺境伯をじっ様と呼ばなければならなくなっちゃった。


「ずるいですぞ、モンシア辺境伯」

「おお、これはグランネル伯爵。伯爵位昇爵おめでとうございます」

「モンシア辺境伯こそ、おめでとうございます」

「グランネル伯爵、おめでとうございます」

「これは婿殿、伯爵位昇爵おめでとうございます」

「いえ…」


 また、ややこしそうな人が着ちゃったよ…。


「時に婿殿…」

「…はい?」

「モンシア辺境伯を、じっ様と呼んで私の事はグランネル伯爵ですかな?」

「…」


 やっぱり、そうなるよね?もう、この人達ってセットだよね…。


「…じゃ、じっちゃんで…」

「ははは、それはよい。よろしくですぞ、婿殿」

「はい…」


 モンシア辺境伯…じっ様、グランネル伯爵…じっちゃん…はいつもの『がはは』と笑い合っている。

 この人達の相手は疲れるよ…。

 そう思ってクゼル右将軍の元に向かった。


「クゼルさん」

「おお、婿殿、この度は伯爵位昇爵おめでとうございます」

「いえ、クゼルさんも右将軍に昇格おめでとうございます」

「いえいえ、これも婿殿のお蔭ですよ」

「そう言えば、父上を見かけませんでしたか?」

「ああ、じっ様ならおそこでじっちゃんと話してましたよ…」

「じっ様?じっちゃん?」


 あっ、しまった…。


「モンシア辺境伯とグランネル伯爵と話してた時に、モンシア辺境伯をじっ様、グランネル伯爵をじっちゃんと呼ぶ事になっちゃって…」

「それなら、私の事も義父と呼んでもらいたいですな」


 お前もか…クゼル。仕方ない。


「…じゃ、お義父様…」

「はい、何か照れますな。よろしくです、婿殿」

「…はい、お義父様…」


 もう…何か疲れたよ。少し人気の少ない所に行こうと思う。

 どこかないかなと思いつつ、探しているとプレリュードさんを発見した。こんなにも大勢の招待客がいる中、プレリュードさんの所は静かだった。


「プレリュードさん、エマニエル夫人」

「これは、ヴェルナルド伯爵。お久しぶりでございます。この度は伯爵位昇爵おめでとうございます」

「ヴェルナルド伯爵、おめでとうございます」

「ありがとうございます、お久しぶりです。プレリュードさんも将軍に封じられたとか、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「しかし、ここは人気が少ないですね」


 確かに、ここは人気が少ない。じっ様とじっちゃん、義父様との挨拶、他の貴族達からのお祝いの挨拶で疲れた俺は、人気がない所を求めて彷徨ってここに来たのだ。


「ええ…まあ…」


 えらく歯切れが悪いな…。


「どうしたんですか?」

「いえ、私は当初反乱軍に加担していたので…その裏切り者ですから…」

「それに私の父がベハインド公爵ですから…その…」


 確かにプレリュードさんは内乱当初は反乱軍側にいた。

 俺達の説得でこちら側に寝返った。だから、裏切り者扱いをされているのかもしれない。

 でも、功績を挙げた者にこの扱いは酷いと思う。エマニエル夫人に至ってもそうだ。ただ、親がベハインド公爵と言う事だけで卑下されている。あの時の、ボトムス伯爵に諭すように言った言葉を知らないからだ。


「ああ、それで…」

「はい…」

「ええ…」


 この扱いではこれから先も軍部内でこんな扱いを受ける事になるのかもしれない。よしっ!ここは俺が何とかしよう。


「プレリュードさん、俺と友達になりませんか?」

「え?友達ですか?」

「そうです。ベハインド公爵を捕らえた功績をあるプレリュードさんのこの扱いは許せません」

「いや、いいのですよ。反乱軍に加担したのは事実ですから…」

「いいえ!よくありません。それに俺達は仲間ですよ?内乱を生き抜いた戦友ですからね。自慢じゃないですが…この国で一番影響力があるのは俺ですよ?」


 たぶんね…。

 軍務卿のモンシア辺境伯、王宮筆頭魔術師のグランネル伯爵、右将軍のクゼルさん、王太子のアレク、それに王女のシルヴィと婚約して国王陛下と王妃様を義理の親として持つ事になる。

 コネとしては申し分ないだろう。それに、内乱では数多くの功績を残し、王都ではフロスト商会を叩き潰して治安維持にも貢献した。

 俺が何か言えば、大抵の事は何でもできそうな気さえしてくる。だから、この力を使ってプレリュードさんを支持しようと思う。


「そうですが…。本当によろしいのですか?」

「何でですか?」

「我々と親しくすれば、他から睨まれたりしませんか?」

「睨まれたらぶっ潰してやりますよ。俺を誰だと思ってるんですか?」


 ヴェルナルドさんだぞ!二度目でごめん…。


「まあ、任せて下さい」

「…では、お言葉に甘えて、お願いします」

「よしなにお願い申し上げます」


 プレリュードさんとエマニエル夫人を連れてシルヴィ達の元に戻り、事の説明をしてから会場の壇上に登った。


「お集まりの皆さん」


 壇上で声を上げ、会場にいる貴族の人達を注目させた。


「私は、ヴェルナルド・フォン・グナイストです。此度の内乱での功績で伯爵位に昇爵した者です。本日はこのような宴を催して頂きありがとうございます」


 何が始まるかと興味津々で視線を俺に向ける貴族達。

 ここからが本番だ。


「今日は、皆様に私の親友であるプレリュード将軍と奥様であるエマニエル夫人をご紹介します。どうぞこちらへ…」


 俺の言葉に従い、プレリュードさんとエマニエル夫人が壇上に登った。


「ボトムス伯爵が嫡男、プレリュードです。以後、お見知りおきを…」

「妻のエマニエルと申します。よろしくお願い致します」


 まばらな拍手が会場に響いていた。


「ここにいるプレリュードさんはベハインド元公爵を捕らえた功績ある人であり、奥さんのエマニエル夫人はベハインド元公爵の次女ではありますが、我々アレックス王太子殿下を総大将とするモンシア辺境伯軍にお味方した功績ある方々です」


 会場にいる貴族達は俺の言葉に耳を傾けていた。


「反乱発生当初、ベハインド元公爵からお嫁を頂いたプレリュードさんとその父であるボトムス伯爵は仕方なしに反乱軍に加担した。しかし、加担したと言っても決して軍を出さなかった。そればかりか我々の説得に応じて味方した」


 貴族連中にざわめきが起こる。

 どうやら、反乱に加担したと言う事だけしか知らなかったようだ。


「ボトムス伯爵はかなり迷われていました。しかし、ここにいるプレリュードさんは『国家の転覆を図る者達に加担すれば我が家の恥となる。』とボトムス伯爵を諭し、協力してくれました」


 少し、嘘も交じっているが、ここまで声を大にして言えば真実となる。


「私は、その忠誠心に心を打たれ、友として尊敬しています。エマニエル夫人にしてもそうだ。自分の父と戦う道を選び、国家の為、夫の為に尽くした。この様な妻を持つ事ができる事を羨ましくも思いつつ、憧れました。皆様、我が友であり尊敬する真の忠臣に盛大なる拍手をお願いします」


 俺の言葉に貴族達は見直したように盛大な拍手が響き渡った。その後、アレクが気を効かせて曲を演奏させてくれた。


「エマニエル夫人、一曲踊ってはくれませんか?」

「ええ、是非に」


 シルヴィも俺に続き、プレリュードさんと踊っていた。モンシア辺境伯、グランネル伯爵、クリューガー伯爵、クゼル右将軍も察したように、後に続いてエマニエル夫人と踊っていた。その間、俺はシルヴィ、エマ、カナ、ユイと踊る。

 踊り終わってから、国王陛下、王妃様、アレクがやってくる。


「ヴェルナルドよ。先程の演説は素晴らしかった」

「ええ、とてもよくプレリュード殿とエマニエル夫人を引き立てていましたわね」

「さすが、ヴェルだな。よく見ているな」

「功績ある人をハブるなんて見過ごせません。それにプレリュードさんもエマニエル夫人もいい人ですからね」

「そのようだ。このような忠臣を持てて、余も嬉しく思う」

「でしたら、その言葉を皆の前でプレリュードさんとエマニエル夫人に言ってあげて下さい」

「うむ」

「ええ、そうしましょう」


 そう言って国王陛下と王妃様はプレリュードさんとエマニエル夫人の元へと歩いて行った。


「さすが、ヴェルだな。上手くやったね」

「そんな事ないさ…プレリュードさんとエマニエル夫人ががんばった結果だよ」

「それはそうだけど、やっぱりヴェルがいたからここまで上手くいったと思うよ」

「そうかな?だけど…本当に貴族って面倒だな…嫌になるよ…」

「おいおい、そんな事言うなよ…。ヴェルにはもっと活躍してもらいたいな」

「あのね、アレク…。俺は貴族になる為に王都に来たんじゃないよ?」

「ヴェルの夢は知ってるさ。ちゃんと協力もする…でも、ちゃんと帰って来てくれよ?」

「考えとくよ…」

「今はそれでいいさ。ヴェルが離れたくないと言えるほどの国にして見せるさ」

「大きく出たね…王太子殿下様」

「まあ、がんばるさ」

「期待しているよ」

「おう!」


 アレクは勢いよく返事して国王陛下の元に戻って行った。

 本当に貴族は面倒な生き物だと思いつつ、宴はお開きとなって行った。

 王都を出て行くか出て行かないかは別として、まだまだ、やる事がある。少なくとも、それが終わるまではこの国に残るさ…たぶんね…出て行かないかもしれないし。シルヴィ達もいるからね。

 それよりも、まずは孤児院とスラム街の工場を何とかする事からだな。明日からもがんばらなくちゃな。






 その後、プレリュードさんは真の忠臣として軍内部で勇名を馳せる事になる。

 エマニエル夫人に至っては、夫をよく支えて尽くす、夫人の鏡と称される事となった…。

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