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60    戦いの終わり

 戦いが終わって軍に合流した俺はアレク達に出迎えられた。


「ヴェル!?無事だったか…」

「「「ヴェル様「君」…」」」


 アレクは俺の無事な姿を見て胸を撫で下ろしたようだった。シルヴィ、エマ、カナはいつものように俺に抱き付いてくる。

 もう、心配性だなと思いつつ、シルヴィ達の頭を撫でてやった。


「ユイが突然、走り出したてびっくりしたよ…」

「そうなの?」


 ユイが突然、目の前に現れたのには驚いたが何時の間にとも思ったな。どうやら、俺の危機を察して肉体強化と超加速の魔法を使って走り出したのだろう。

 だから、俺の危機一髪を救った。ユイには感謝しないとな。後で、何か願い事でも聞いてやろうと思う。


「それにしても、ベハインド公爵を取り逃がしてしまったな…」

「大丈夫ですよ、父様。上手くいけば今頃は捕らえられてこちらに向かっている筈ですよ…」


 そう、俺の策が上手くいけば捕らえられている筈だ。


「それは、どう言う事じゃ?婿殿」


 モンシア伯爵は合点が言っていない様だ。


「まあ、もう少し待ちましょうか…」

「うっ、うむ…」


 モンシア伯爵…、戦いの前に説明したじゃん。


「ヴェル、遠くで凄い爆発とかしてたけどあれってお前か?」

「そうですよ。ちょっと強敵と戦ってました」

「無茶するなと言ったのにお前ときたら…」


 セドリックは呆れ顔で答えていた。


「すみません…父様。俺にしかできない事だったので…」

「まあ、いい…。お前が無事ならそれでいいさ」

「心配掛けて、ごめんなさい…」


 戦場からも俺達の戦いの様子が分かるほど、凄かったらしい。

 まあ、そうだよな…。あんだけ強力な魔法の打ち合いだもの。分からないわけはないか。


「申し上げます!」

「何事じゃ?」

「プレリュード様、エマニエル夫人がご帰還されました」

「あい、分かった。通せ!」

「はっ!」


 ベハインド公爵は、プレリュードさんに引き連れられて、本陣の幕舎に姿を現した。どうやら、俺の策は上手くいったらしいな。

 ベハインド公爵は助かったと思い森に続く道に逃げ込んだが、森の中程辺りを通り過ぎた瞬間頃に突如2万5千の兵が公爵に続く兵に襲い掛かった。

 エマニエル夫人が指揮する部隊だ。彼女の役目は、ベハインド公爵と公爵に続く兵の分断だ。

 そんな事も知らずに命からがら逃げるベハインド公爵は、突如出現した目の前の部隊に動きを止めた。プレリュードさん率いる1万の兵だ。

 彼には、ベハインド公爵の逃げ道に伏兵させていたのだ。プレリュードさんの部隊を見た敵兵は完全に戦意を失い、次々と尻餅を付く。ベハインド公爵は、自分の娘を嫁がせた相手に説得を試みるも難なく捕らえられたのだった。


「ベハインド公爵、申し開きはあるか?」


 モンシア伯爵は重い声で口を開いた。


「…」


 膝を付き、縄で両手を後ろ手に拘束されたベハインド公爵は答えない。


「そうか、裁きは王城で行う。連れて行け!」


 モンシア伯爵は兵に命じると牢に連れていかれた。幕舎には重い空気が流れたが、アレクが空気を換えてくれた。


「プレリュード殿、お手柄でしたね」


 アレクはプレリュードさんに気遣う。


「いえ、ヴェルナルド殿の指示に従ったまでです」

「プレリュードさんはしっかりと役目を果たしてくれました、これは大変重要な任務でした」


 ベハインド公爵を捕らえた功績はプレリュードさんのものであると印象付けた。


「よくぞ大任を果たしてくれました、エマニエル夫人もお疲れ様でした」

「お気遣い痛み入ります」


 エマニエル夫人は優雅にお辞儀をして答える。


「それにしても…、逃げる道筋まで読んでの布陣だったのか…」

「アレク、お楽しみにって言っただろ?」

「プレリュード殿とエマニエル夫人の姿が見えなかったのに不安に思っていたけど、納得したよ」

「流石、婿殿ですな」

「婿殿の知略には恐れ入りますわい」


 プレリュードさんとエマニエル夫人は絶対に裏切る人ではないと確信していたからだ。仮に、万が一裏切ったとしても、この内乱の態勢は既に決しているから大丈夫だと思った。


「プレリュードさんとエマニエル夫人を信じての策です。彼等の忠誠は評価されるべきです」

「うむ。国王陛下には、この事を必ず報告しておく」

「ありがとうございます」

「どうぞ、よしなにお願い申し上げますわ」


 これで、ボトムス伯爵との約束も守れるだろう。もし、受け入れられなくても俺の功績を譲ってやれば大丈夫だろう。


「後は、アレクとシルヴィを先頭に王都に凱旋ですね」

「うむ、永かったな様で意外と短かったな」

「そうですな。反乱が起きてから半年と少しと言ったところか」


 その場にいた全員が思い思いに深ける。


「ここまで早く内乱を鎮圧できたのはヴェル様のお陰ですね。流石は未来の旦那様です」

「ますます惚れ直しましたわ。」

「ヴェル君、格好いい」

「グギャ(恰好いい)」


 シルヴィ、エマ、カナ、フレイムが褒め称える。ユイは俺にずっとくっついたままだった。

 照れちゃうじゃないか。


「そうだのう、婿殿を補佐に任命してよかったと今改めて思ったぞ」

「婿殿、これを機に王宮に仕官してみては如何です?」

「やめて下さい。貴族の利権争いに巻き込まれるのは勘弁して下さい。そうでなくても、もう既に巻き込まれているんですから…」


 と言い終えてアレクをチラ見する。


「え?僕のせいか?」

「アレクとシルヴィに護衛を任された時から、面倒事になるんじゃないかなとは予想はしていましたが、まさか反乱が起こるとは思ってもいませんでしたがね…」

「すまない…」

「ごめんなさい、ヴェル様」


 まあ、いいさ。お蔭で、大切な親友と婚約者達ができたんだから。


「いや、いいですよ。楽しかったし、色々経験を積む事もできました」

「ありがとう」

「そう言ってもらえると助かります、ヴェル様」


 アレクとシルヴィは笑顔を取り戻して答えた。これで漸く内乱は終わり、後は事後処理が残っているが、モンシア伯爵に任せようと思う。


「さて、これで内乱は終わったので、後の事はモンシア伯爵達に任せて、俺はお役御免とさせて頂きます」

「え、いやそれは…」

「まだ12歳にもならないこんな子供に何をさせる気で?」


 ジト目でモンシア伯爵を威圧する。


「うっ、うむ。ご苦労じゃった。後はゆっくり休まれよ」

「はい、お疲れ様でした」


 と言い残してシルヴィ、エマ、カナ、ユイ、フレイムを連れて自分の幕舎に籠る。アレクは総大将だから、まだ打ち合わせがあるから残してきた。


「僕はもう疲れたよ…、エマラッシュ」


 どこぞの名作に出てくる忠犬に呟く少年のように呟いた。


「何ですの?それは?そうですわね…疲れましたわね」

「ヴェル様はずっと大活躍でしたからね」

「だね」

「ん」


 俺はベッドに倒れ込んで目を瞑る。意識が直ぐに飛んで行った…。






 目覚めると朝日が差し込んでいた。どうやら、あのまま眠りこけて翌日になったのだろう。

 体を起こそうとすると左手にエマ、右手にカナとシルヴィがしがみ付いている。ユイは当然の如く、俺の上で抱き付きながら眠っていた。

 あれ?昨日は確かエマ、カナ、ユイ、フレイムを連れて寝所に来たはずだけど…シルヴィも後で来たのか。

 4人の可愛い寝顔をしきりに楽しんだ後、4人を起こす。


「もう朝だよ。シルヴィ、エマ、カナ、ユイ、起きて」


 4人を揺さぶって起こす。


「んっ、おはようございます、ヴェル様」

「おはようございますわ。」

「おはよう、ヴェル君。」

「ん、おはよう」


 4人は寝ぼけ眼で起き上がる。シルヴィはまだ船を漕いでいる。エマは目を擦っている。カナは手で口を隠しながら大きなあくびをしている。

 ユイは…二度寝か…。

 今日も、5人で朝を迎える事に、喜びと安心を覚えて一日が始まる。水魔法で顔を洗って歯を磨く。服を着替えてからもう一度、おはようと挨拶を済ませて今日が始まる。

 平和になった日の朝の出来事だった。






 いつものように・・・・・・・着替えを魔法を使って覗いていたのは内緒だ。3人共、よくお育ちで…と興奮を抑えて瞑想に入るのだった。

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