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56    密かな人気者

 南方制圧を完了し、20万の兵を引き連れて帰還した俺達をアレク達が盛大に出迎えた。

 俺達が南方制圧に出向いている間に、防備を堅くし、人材と兵を集めて人的陣容は整えていた感じだ。総勢35万の大部隊だ。

 これから数ヶ月間、訓練をした後に反乱軍との一大血戦を始める予定だ。


「アレックス王太子殿下、シルヴィア王女殿下、此度は反乱軍に参加した事、父、エドワウ・フォン・ボトムスに成り代わりお詫び申し上げます」


 プレリュードは膝を付いて頭を下げる。エマニエル夫人も続いて頭を下げる。


「此度の所業は許されるものではない…」


 アレクの一言にプレリュードさんもエマニエル夫人も体をビクつかせる。


「しかし、我が陣営に加わり大功を立てるのなら、その功績に従って許す」


 その言葉に2人は涙を流して安堵した。


「アレックス王太子殿下とシルヴィア王女殿下に忠誠を誓います!」

「忠誠を誓います」


 プレリュードさんに続いてエマニエル夫人も続いて答える。


「それにしても婿殿の功績には目を見張るばかりですな」

「そうですな。カナの婿に選んで正解でしたな」


 モンシア伯爵とグランネル子爵はがははと笑い合う。この2人が組めば笑い合う姿しか思い出せない。父様は息子の勇士に誇りに思うような表情だった。


「おかえりなさい、ヴェル様」

「お兄ちゃん、おかえり」

「グギャ(おかえり)」

「ああ、ただい…」


 返事を待たずしてシルヴィとユイに抱き着かれてしまった。嬉しいが、今は遠慮してほしい。恥ずかしいから…。


「2人もただいま、アレク、フレイムもただいま」

「おかえり、ヴェル」


 俺に抱き着く2人を見て、優しい笑みを浮かべてアレクは答えた。シルヴィとユイは涙ぐんでいる。


「ちょっと2人共、人眼が気になるから後でね…」


 俺の言葉にはっとした2人は慌てて飛び退く。もう少し、このままでもよかったかなと考えているとアレクが口を開く。


「南方制圧、ご苦労様。今日は僕達に任せてゆっくり休むといい」

「ああ、そうさせてもらうよ」


 それを言い残してシルヴィ、エマ、カナ、ユイ、フレイムを連れて部屋に戻る。


「さあ、おいで…」


 さっきの続きをと言わんばかりに両手を広げてシルヴィ、エマ、カナ、ユイを誘う。エマとカナを仲間外れにしちゃ可愛そうだから一緒にね。


「「「…」」」

「ん」

「グギャ(おかえり)」


 あれれ?抱き着いてこない。ユイとフレイムだけ?さっきまであんなに必死に抱き着いてきたのに?

 諦めかけたその時、シルヴィは正面にエマは右手にカナは左手から優しく抱き着いてきた。よく見ると顔を赤らめている。

 可愛い。心行くまで抱き着くがいいさ、と思っていると直ぐに体を離す3人。ちょっと寂しいな。


「改めましてお帰りなさい、ヴェル様、エマ、カナ」


 エマ、カナと顔を見合わせて答える。


「「「ただいま、シルヴィ、ユイ」」」

「グギャ(おかえり)」

「フレイムもただいま」

「グギャ(うん)」


 フレイムは俺の肩に飛び乗り頬ずりしてくる。

 ちょっと重い。


「フレイム、ちょっとでかくなった?」

「グギャー(うん)」

「そうかそうか、皆の護衛、ご苦労様」


 フレイムに労いの言葉を掛けておいた。

 それから3ヶ月間は5人と1匹はいつでもどこでも行動を共にした。まるで会えなかった日を取り戻すように…。

 正直嬉しいのだが、いつも傍にいるため、見せびらかせて歩いているように思われちゃう。などと考えているとフレイムが兵達が食事している所に飛んで行った。

 どうやら兵達に食事を別けて貰っているらしい。そんなフレイムを見てシルヴィが駆け出す。


「こら、フレイム。ダメですよ」

「グギャ(えー)」


 シルヴィに叱られて、心なしかフレイムはシュンとしている。


「シルヴィア様、いいんですよ」

「しかし…」

「俺達はフレイムちゃんが可愛くて食事を別けているだけですから」

「ありがとうございます」


 屈託のない笑顔が兵達に向けられると兵達は魅了されたようになっている。そりゃそうだ、誰だってシルヴィの屈託のない笑顔を見れば魅了される。俺もそうだもの…と思っていたら兵達と視線が合う。

 視線が合ったら兵達は一斉に俯く。あれ?何で??と思っているとシルヴィとフレイムが戻って来て申し訳なさそうにシルヴィが答えた。


「ヴェル様は兵達に恐れられていますから…」

「え?何で??」


 首を傾げると今度はエマが答える。


「ヴェル様は火竜を倒し、この内乱では負け無しの武勲を挙げられていますから。それに…魔法使い達を鍛え直しましたでしょう?」

「…」


 まあ、いい…。それはいいとして火竜の子供であるフレイムは怖くないの?俺、フレイムに人気で負けてるの?

 そう思った瞬間、カナがフォローする。


「えっとヴェル君。フレイムはシルヴィの傍にずっといて姫を守る騎士的な立場とシルヴィの笑顔とでマスコット的な感じなんだ。」

「いつから?」

「城塞都市ケベントスを攻略した辺りからかな…」


 そんな前から?俺、気付かなかったよ…。そっか、シルヴィは治癒魔法が使えるから積極的に兵達の前に立たせてあったからな。それにあの笑顔だもの、そうなるわな。

 ちょっと寂しくなって、エマとカナに抱き着く。


「ちょっ、ちょっとヴェル様。兵達が見てますわ…」

「そうだよ。それは夜にね…」


 夜ならいいのか…そっか夜ならいいのだ。

 エマとカナは顔を赤くする。シルヴィはちょっとやきもちを焼いている様子だ。


「シルヴィもこっちにおいで」

「はい、ヴェル様」


 嬉しそうにシルヴィは俺の体に密着する。胸を押し付けて…。うへへ…。

 ユイも真似して俺に抱き付く。フレイムは僕も僕もって感じで俺の肩に乗っかってくる。

 …重い…。今日も平和だ…。






 さりげなくエマとカナを抱きしめる振りをして少しだけ胸を触っていたのは内緒だ。

 エマもカナも気付いていた様子だったが顔を赤くして身を任せてくれた。えへへ…。

 このまま卒業・・できる日までのカウントダウンをしながらゆっくりと愛を育もうと思う…。

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