54 防衛戦
先鋒戦に勝利した俺達は敵兵の遺体を回収して丁重に弔った。そして、弔い終わった頃、すっかり日も落ちていた。
明日に備えて今日は早めに寝る事にした。夜、布団に入っていると気配を感じた。気配は合計3つ。よく知った気配だった。シルヴィ、エマ、カナだ。
「ヴェル様、起きてますか?」
シルヴィは元気なく訪ねてきた。
「いえ、寝てます。ZZZZzzz」
「起きてるじゃないですか」
冗談で返すとシルヴィに突っ込まれた。
「3人共どうしたの?」
「その…」
エマも元気がなく、不安そうな声で答えようとするが言葉が続かないようだ。
「ヴェル様の傍にいたいなって思って…」
カナも弱弱しい声で思いを告げた。
「そっか、そこに立ってないで入って来て」
3人を寝所に迎え入れた。戦場で幾つもの敵の死体を見た後なんだ、怖くてたまらないのだろうと思う。
「戦場は怖いかい?」
「そうですね…。怖くないと言えば嘘になります」
「ヴェル様の傍にいれば怖かった気持ちが不思議と和らいでいきますわ」
「だから一緒に寝よう」
シルヴィ、エマ、カナは正直に自分の気持ちを答える。素直ないい子達だ。それに嬉しい事を言ってくれる。
「いいよ。こっちにおいで…ユイが寝てるからそっとね…」
「「はい」」「うん」
3人は声を小さくして答える。
「ヴェル様は怖くなったりしないのですか?」
「怖くない訳じゃないさ…。でも誰かが戦わないとこの国はいずれ無くなる。それに大切な人達を護りたいからね…」
シルヴィ、エマ、カナは俺の言葉に耳を傾けている。
「アレク、シルヴィ、エマ、カナ、ユイ、フレイム、それを取り巻く環境にいる人達…。俺の家族も護りたい」
もう大分、家族に会っていない…。セドリックは任せておけと手紙に書いていたが、正直心配だった。
エルはもう6歳か…、立派になっているのだろうか?それに、まだ見ぬユリアとミリア…。どんな子に育つのか見守って行きたい。
「この戦いに勝って、俺達が結婚したらどんな家庭になってどんな子供が産まれるかな?」
「「「っ!」」」
シルヴィ、エマ、カナは未来の俺達を想像して顔を赤くしている。
何?えっちな事でも考えちゃったの?そこんとこ、詳しくおじちゃんに言ってみ?
「もう、ヴェル様ったら不謹慎ですよ…」
「そうですわ。子供ってまだ早い…ゴニョゴニョ…。」
「ヴェル君…えっち…。」
いや、待ってそこだけ考えたの?家庭の話や子供の話なんだけど、本当にそこだけ抜粋しないでよ…。
いや、待て…。清楚な下着に包まれたシルヴィの細く柔らかい体を…。
大人の下着に身に纏い、そびえ立つ巨頭の様に存在を主張するエマの胸を…。
元気一杯なカナの張りのあるお尻を…。
いかんっ!想像するとジョニーが…。沈まれ…お前の出番はまだまだ先だ!ここで暴発するなよ…。ルチルさんの時みたいな二の舞はごめんだぜ。ルチルさん…気持ちよかったな。いや、思い出すなって…。
元気にしてるかな?ルチルさん。早くこの戦いを終わらせないとな。
そう思って早めに寝る事にした。
「もう、今日は遅いから寝よう…」
「「「はい、ヴェル様「君」。」」」
「おやすみ」
シルヴィ、エマ、カナの頬にそっと口づけをした。
3人は呆けたように『おやすみなさい、ヴェル様「君」…。』と呟いて何やらもぞもぞしている。
ちらっと横で眠るシルヴィの顔を見ると顔を朱に染めて顔をニヤ突かせている。俺に見られている事を視線で悟ったシルヴィは顔を毛布で隠してちらっと俺を見てから目を逸らして眠ろうとする。
やっべ…可愛い…。エマ、カナも顔を毛布で隠しているし…。仕方ない…寝顔を楽しみたかったが、もう寝よう。
翌日、早く起きたのでシルヴィ、エマ、カナ、ユイの寝顔を堪能してから起こす事にした。
「おはよう。シルヴィ、エマ、カナ、ユイ、フレイム」
皆、顔を覗きこまれて起こされた事にはっとして恥ずかしがっていた。
モテる男はツラいぜと心の中で呟いてみるがキャラじゃなかった。
水魔法と火魔法でお湯を用意して歯磨き、洗顔を済ませて着替えをする。俺は先に着替えて外にでるが、すかさず千里眼を発動して着替えを覗き見る。
これは魔法の悪用じゃないよ?シルヴィ達の着替え中に何か良からぬ事が起きた場合に備えての事だよ?ホントダヨ?
誰に言い訳しているのか分からないが、集中する事にした。
シルヴィの細く、しなやかな体に白い肌…。
下着を脱いで新しい下着に着替えるそのお姿は正に天使と言えるだろう。今日もまた白い清楚な下着だった。
それにしても…シルヴィの胸は少し育ったかな?前はCカップになるかならないかのぎりぎりのラインだったが今は紛れもなくCだ!すべすべの肌に纏われていく白い清楚なブラ。
眩しすぎて直視できない…。
最近のエマは少し鍛えこまれたのかウェストは細く、豊満な胸…。
そしていつもの大人の下着を身に着ける。しかも、まだ大きくなるのかと思う胸だ。前より大きくなっている気がするのは気の所為か?正直…挟まれたいと祈りを捧げてしまう。
もし、これで迫られたら俺は抗う事なく身を任せるだろう。
カナの元気一杯な肉体美は正に理想の張りと弾力がある肌を思わせる健康な肉体だ。
形のいい胸はつんと上を向きつつ、2つの突起物が小さく可愛らしい。それにも増して、特にお尻の肉付きがいい。張りがあり、大きくもなく小さすぎず、プリッとしたお尻のラインは涎が出るほどだ。
どうぞ召し上がれと言われたら、ル○ンばりに飛び込みながら服を脱ぐだろう。
ユイはまだまだ成長する前段階と言っていいだろう…。
その体は、ロリコンならたまらないほどの理想の体なのだと思う。ユイよ…お兄ちゃんは心配だ。
いつかお兄ちゃんに紹介したい人がいると言われたら、即座にユイを攫って記憶を消してからどこか知らない所でユイと隠遁生活を始めるだろう。
「ヴェル様、どうしました?」
千里眼で覗き見し過ぎて、我を忘れてしまっていた。
「いや、何でもないよ…。ちょっと魔力操作をして修業をしてただけだよ」
「流石はヴェル様ですね。どんな時も修業を怠らない何て凄いです」
「それでこそ、私達の未来の夫ですわね」
「ヴェル君、尊敬しちゃう」
「お兄ちゃん、格好いい」
皆の言葉に胸が痛い…。
俺の魔法に気付いて、わざと言っているんじゃないかとびくびくしちゃうよ。おじちゃん…心弱いのよ?いじめないでね…と思いつつ朝食を摂った。
朝食を摂り終えた俺達の元にモンシア伯爵が血相を変えてやって来る。
「婿殿!」
「おはようございます、モンシア伯爵。どうしました?」
「どうしたもない!敵が攻めてきたぞ」
「っ!」
早いな…。しかし、予想していた通りだな。
「直ぐに戦う用意を!」
「分かりました」
戦う支度を済ませた俺達は塔に登って戦況を確認した。
反乱軍が二手に分かれて北側と南側から攻めて来ているようだ。落とし穴を警戒してか、軍を二手に別けたのだろう。
ゴーレム隊を2千体北門に回し、その分南側に兵を厚くした。北側の部隊の指揮は俺とクゼル将軍が、南側の部隊の指揮はモンシア伯爵とクリューガー子爵に任せてある。
これで、何とか対応しているが、問題は正面に見えるあれだ。昨日の落とし穴の少し先に、敵軍が姿を現している。つまり三方から囲まれている形だ。
北側、南側から攻撃してくるが正面の軍は動かない。恐らく、こちら側の兵の消耗を待っているのだろう。
正面の敵軍は恐らく正真正銘の反乱軍だろう。今、北側、南側から攻撃を行っている部隊は王都で人質にされた貴族のその家族に強制して編成された混成軍だと思う。旗印がそれぞればらばらだからな。
つまり、こいつらは捨て駒だ…。北側7万、南側7万、そして正面に15万の大部隊。その数29万と言ったところだろう。
対して、こちらは10万、さあどうしようかね。このままでは悪戯に兵を消耗するだけで手詰まりになってしまうと思った所に伝令役の兵が来る。
「申し上げます!」
「どうしました?」
「北側より押し寄せて来た敵兵の後方に新たな部隊を確認しました。その数10万」
敵の増援か?いくらゴーレム隊を配置しているとは言え、北側の敵軍の総数は17万。数に物を言わせれば不利になってしまう。
「敵の増援か!?」
慌ててアレクが伝令役の兵に問いただす。
「旗印はグランネル子爵の物とお見受けします。」
グランネル子爵…生きていたか。いや、まだ判断するには早すぎる。もしかしたら子爵は死んでその子供が後を継いだのかもしれない。
「お爺様、生きていてくれたのですね!」
カナは涙を流し、喜んでいる。
「…そうだな…」
俺は警戒して答える。カナはグランネル子爵の軍と聞いて安心しているようだが、まだ味方と決まったわけではない。もしかしたら反乱軍側に取り込まれた可能性だってある。一概に味方と断定は出来なかった。
続いて、新たな伝令役の兵が駆け寄ってくる。
「グランネル子爵の軍と思われる部隊は北側攻略中の反乱軍に襲い掛かりました」
どうやら味方らしい。懸念は杞憂に終わったか…。いや、まだ分からない。味方に偽装しているかもしれないし、何よりグランネル子爵の姿を確認していないのだから…。しかし、これは好機かもしれない。
そう思い、広範囲にグランネル子爵の魔力探知を行った。すると反応有り、グランネル子爵の軍の方向だ。意を決して伝令役に命令を出す。
「よし!北側の兵は討って出てグランネル子爵の軍と協力して敵軍を殲滅せよ」
「「はっ!」」
俺の命に伝令役の兵は同時に答えた。
北側の守備はアレクとクゼル将軍、シルヴィ、エマに任せてカナと出陣する事にした。実際にグランネル子爵の姿を見るためだ。何より真意の程が分からない以上、こちら側から接触して確かめる必要があったからだ。
直ぐ様、命令通りに兵は動いて北側の敵軍に攻撃を開始した。俺とカナはグランネル子爵と接触する為にゴーレム隊を突撃させ、グランネル子爵の軍に向けて道を切り開いた。
「グランネル子爵っ!」
「お爺様っ!」
グランネル子爵の姿を見て呼びかける。
「おお、婿殿それにカナリエも無事だったかっ!」
「グランネル子爵こそ、ご無事で何より」
「お爺様、よかった…」
カナは実際に姿を見て感極まった様に涙を零す。
「今まで何処にいたんです?」
「うむ、王城を脱出したまではよかったのだが追っ手を振り払うのに苦労して何とか自分の領内に辿り着いたが時間が掛かってしまった」
グランネル子爵領は王国の北側に位置する。道はあまり整備されているとは言えないから相当苦労しただろう。
「それで何とか軍を編成し、周囲の貴族連中にも参加する様に頼んだんだが、ここまで来るまでに骨が折れたぞ」
「それは心中お察しします。とりあえずグランネルの子爵の軍はこのまま南側の兵も殲滅して下さい」
「心得たっ!然らばごめん」
快く了承してくれたグランネル子爵は部隊を連れて南側に転進した。
一度、砦に戻って考える。北側、南側はこれで何とかなるだろう。問題は目の前の15万の大軍だ。
あの大軍をどうにかしないと不味いな。殲滅させるか、退却させるか…。殲滅って言っても今のところ、どう攻めようか悩むな。じゃ、退却させるにはどうすれば?
「なあ、アレク…」
「どうした?ヴェル」
「大軍の急所って何だと思う?」
「大軍の急所か…」
真剣に考え込むアレクと俺は同じ答えを出した。
「「食糧か…」」
同時に言葉を発した事に俺とアレクは目を見開き視線が合う。
それだ!早速、広範囲探知魔法による敵の配置を調べた。探知に反応有り、正面敵軍の後方10kmの距離と言った所か、敵の守備兵は手薄のようだ。
「じゃ、アレク…。ちょっと言ってくるね」
「行くってどこに?」
「敵の食糧貯蔵庫…」
「…無茶するなよ…」
「ああ、また後でな」
透明化の魔法を発動して敵本陣を一気に素通りして、敵食料貯蔵庫に向かった。
目に前に食糧貯蔵庫が見えてくると土魔法による、5千のゴーレム部隊を作り出して強襲を掛ける。突如、目の前に現れたゴーレム部隊によって、攻撃を受けた敵兵達は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。
突然の援軍と兵糧を奪われた反乱軍は、退却を余儀なくされて引いて行った。敵軍が退却したのを確認してから、モンシア伯爵に食料を運び込めと伝令を出す。暫くして伯爵軍の輜重隊が到着し食料を確保した。
「只今戻りました」
「ヴェル!」
「え?父様!?」
「何だ?ヴェル。親父の事を忘れちゃったか?」
忘れるはずない…。って言うか、何でここにいるの?
「いえ、そう言う訳では…。ここに父様がいるのに驚いただけです。今までどうしてたんですか?」
「ああ、王都で反乱が起きたって聞いてな、領地にも反乱軍が攻めてくるかもしれないと思って避難したんだ。そしたら案の定、攻めてきやがった。避難してて正解だったよ」
「それはよかった。家族は無事なんですね?」
「ああ、今はロドリゲス殿の所に匿ってもらっているよ」
誰ですか?聞いた事があるようなないような。
「ロドリゲス殿?」
「グランネル子爵の嫡男殿だ。カナちゃんの親父さんだな」
え?そうなの?と思いグランネル子爵を見やると頷いていた。
カナの父はロドリゲスでげすでげす。ごめん…。気を取り直してカナの父はロドリゲスでげ…『ごほん』…ロドリゲスと言うらしい。
「グランネル子爵、家族を助けて下さってありがとうございます」
「いや、カナと婚約が決まって一度お会いしたいと思っていた所だったし、不幸中の幸いじゃな」
「それは…どうもご迷惑をお掛けします…」
本来はこちら側から尋ねなければいけない所なのに、匿ってもらうって…。この状況じゃ仕方ないか。
「いやいや、いいのじゃよ」
「それで、父様は家族の事は任せろと言っておきながら、グランネル子爵の家に家族を任せて此処に来たと?」
「いや、それは…その、家族の安全も確保できたし、ヴェルの力になりたいと思ってだな…」
「冗談ですよ。父様に会えて安心しました。ずっと音信不通で心配だったので…」
最後に会ったのは、何時以来だったか?ああ、浮気の仲裁の時か…。手紙では遣り取りしてたけど、反乱が起こってからはずっと音信不通だったし連絡の取りようが無かった。
「そうだな…。こんな状況じゃ仕方ないだろ…。それに僕は元冒険者だぞ?剣術の腕と魔物狩りの功績が認められて騎士爵位を貰ったんだ。腕に覚えがあるから役に立つぞ」
「ええ、期待してます」
こんな状況になってまでも助けに来てくれるなんて嬉しい限りだ。
「それにしても、婿殿はお手柄でしたな」
モンシア伯爵は両手で俺の手を掴み、ぶんぶんと上下させる。興奮しているようだ。
「いえ、ゲランネル子爵の援軍がなければ危ないところでしたよ」
「いや、あの戦況下での兵糧奪取の機転は恐れ入りました」
グランネル子爵に恐縮されてしまった。
「いえ、グランネル子爵が援軍に駆けつけてくれたからこそ、出来た事です。子爵こそ、褒められるべきです」
そう聞いて、モンシア伯爵はグランネル子爵に礼を述べた。
「こちらの被害は2万に対して、反乱軍は14万の兵と29万人分の食料か。大戦果ですな」
モンシア伯爵はがははと笑い声を上げた。
今、気付いたがカナはグランネル子爵に抱き着いていた。どうやら感動の再開は見逃したらしい。
「カナ、よかったね」
カナに向き直り答えた。
「うん、私の自慢のお爺様です。絶対に生きていると信じてました」
カナは涙が止まらない様子だ。家族と離れ離れになり生死も分からない状況だったから不安で一杯だったのだろう。
「それにしてもお爺様、お父様とお母様はご無事ですか?」
グランネル子爵の生存に安堵していて、他の家族の事を聞き忘れていたみたいだ。それだけグランネル子爵を信頼している事が見て取れた。
「ああ、ロドリゲスもマリアンヌも無事だ」
母はマリアンヌ、美人そうな名前だ。カナは美少女だから美女なのだろう予想出来る。
「よかった、それで今どこに?」
「ロドリゲスは北方の守備に付いている、マリアンヌは領内の維持に努めてもらっている」
「そうですか、早くお会いできるように祈っています」
「ああ、そうしてくれ」
カナは希望に満ち溢れた表情だ。可愛い女神様のようだ。
「それにしても婿殿が参謀とは驚きましたぞ!」
唐突にグランネル子爵は答え、俺の話になった。
「いや、モンシア伯爵に無理やり…」
「それは無いでしょう。婿殿は幼いながらも歴史に深く精通し、軍の指揮は勿論、我が軍の行動を決めているではありませんか」
モンシア伯爵に煽てられて照れてしまう。
「いや、ちょっと考えれば誰でもできますよ」
「またまたご謙遜を、そのちょっとが凄いのですぞ」
このままよいしょされ続けられそうなので話題を変える事にした。
「そんな事よりもこれからの事を考えましょう」
「う?うむ」
「そうですな」
モンシア伯爵とグランネル子爵は頷いた。
「ヴェル様照れてますね」
「照れ隠しに話題を変えてますわね」
「ちょっと可愛い」
ひそひそ声でシルヴィ、エマ、カナは語らっている。聞こえてんだよ!恥ずかしいからやめて…。
「今回の戦いで我が軍の被害は2万で残り8万、グランネル子爵の10万の援軍で総勢18万になりました」
「そうじゃのう」
「ふむ、でどうすると?」
「はい。これで漸く反乱軍と正面を切って戦える数となりましたが懸念事項があります」
数が増えれば増える程、指揮系統に混乱が生じる恐れがあるからだ。それを説明すると『してどうすると?』モンシア伯爵、グランネル子爵は尋ねる。
「この機会を好機として南方の反乱軍側に取り込まれた所を攻めましょう」
「大敗した反乱軍は今なら攻めてこないと?」
「その通りです、数としてはあまり減ってはいないかもしれませんが29万人分の兵糧を奪ったのです。直ぐには行動できないでしょう」
モンシア伯爵は深く考え込む。
「よし、婿殿を信じて許可しよう」
「ありがとうございます」
「それでここの守備は誰が?」
「ここにはモンシア伯爵とその兵8万を残してグランネル子爵とその兵10万で一気に片付けてきます。もし、敵が攻めて来ても絶対に討って出ないで下さい」
「籠城せよと?」
「そうです。時間稼ぎをしてください」
「心得た」
「腕が鳴るのう」
モンシア伯爵、グランネル子爵は思い思いに返事した。
明日からの出陣に備えて早めに就寝しようと思う。すると、セドリックが部屋を訪ねてきた。
「少し、話せるか?」
「いいですよ、父様」