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53    建設する

 城塞都市ケベントスを制圧してから一週間が経過した。

 都市の治安維持、軍隊の規律を守らせる事を徹底させて領民達の信頼を得ていった。

 今日は軍の訓練を視察すべく城外へ赴く。軍の訓練を終始見ていたが悪くはない。統率も連携も良くなってきているのだが、反乱軍との戦いを前に如何に犠牲を少なくするかが問題になっている。

 そこで俺はある戦法を進言する。


「モンシア伯爵、兵の戦い方について少しご相談があるんですが…」

「戦い方?」

「そうです。今の兵達は個々の強さを重視して戦っていますがそれだけでは被害が大きいですよね?」

「そうじゃのう、戦えば兵は死ぬ。それは今も昔も変わらん」


 モンシア伯爵もなるべく被害の出ないような戦い方を目指していたのだろう。試行錯誤の結果、戦術や陣形を駆使して味方の損害を少なくし敵の被害を大きくする事に苦労しているのだろう。

 それは悪くない。悪くはないがもっと根本的に兵達の戦い方に問題があるのだ。個々で戦うから被害が大きくなるのだ。


「まず兵を強い兵と普通の兵と弱い兵に分けます。そして強い兵と普通の兵と弱い兵で三人一組に分けます。敵兵1人対して3人で当たらせるようにします」

「ふむ。それで?」

「強い兵は敵の剣を防がせ、普通の兵は隙を突いて攻撃、弱い兵に止めを刺させるのです。これを瞬時に繰り返せるように訓練させれば被害の少ない戦い方ができる様になる筈です」

「面白そうな戦い方じゃな」


 モンシア伯爵は頭の中でシュミレーションしながら考え込んでいる。


「よしっ!やらせてみよう。」

「ええ、兵を2つに分けて模擬戦をしてみましょうか」

「そうじゃのう、今までの戦い方の隊と三人一組の隊で試してみようかのう」


 模擬戦は直ぐに行われた。流石よく訓練された兵達だ。こちらの行おうとしている戦術の意味をしっかりと把握して戦っている。結果は、三人一組の隊が圧勝した。


「流石は婿殿じゃ。面白い戦いじゃったな」

「ですね」

「では、これからはこの戦術を取り入れて戦う事にする」


 訓練の視察を終えて執務室に行くとアレクが書類と格闘していた。部屋に入るなりアレクが『おお、丁度いい所に』と言った瞬間に部屋を出ようとした。


「おい、ヴェル!」


 どうやら、逃がしてくれないらしい…。


「…何かな?アレク…」

「それはないんじゃないかな?」

「何がでしょうか?」


 恍けてみた。俺はちょっと用事を思い出したのだ。そう、急に用事を思い出しただけなのだ…。


「この前、ヴェルの為にモンシア伯爵とクゼル将軍に頼んで楽しませたと言うのに…」

「やっぱり!あれはお前達の仕業か!?」

「よかっただろ?」

「結構なお手前で…じゃなくって、大変だったんだぞ!?何かこう、葛藤とか…」

「ははは、ところでヴェル。…今、手伝ってくれと言われそうになって逃げようとしたな?」

「…ソッ、ソンナコトナイヨ?ホントダヨ?」


 しまった!動揺して棒読みだ。


「…手伝ってくれるよね?」

「…はい…」


 手伝う破目になった。仕方ない。親友の為だもの…手伝うさ…。


「ところでアレク…」

「何だ?」

「俺達ってまだ11、12歳だよね?」


 俺達はまだ子供。それなのに何故こんな事を?


「…そうだな…」

「何で俺達こんな事やってんの?」

「人手が足りないし、僕は総大将だからね…」

「ここに来てからと言うもの、アレクはずっと報告書とか書類とかと戯れているよね…」

「…誰のせいだと?」


 目を泳がせつつ、鳴らない口笛を吹いてみた。


「がんばれ。次期国王陛下殿」

「言ってくれる…」

「だから手伝っているじゃん…」

「逃げようとしてたけどね…」


 目を泳がせつつ、鳴らない口笛を吹いてみた。


「それはもういいから…」


 そんな会話をしていると肩にフレイムを乗せたシルヴィとユイが部屋に来た。


「只今戻りました」

「ただいま」

「グギャ(ただいま)」

「「おかえり」」


 アレクと俺は声を揃えて返事をする。するとユイが可愛らしく『トテテ』と小走りに俺に抱き付く。

 あら、やだ、何この子?可愛い…。


「ヴェル様、今まで何していたのですか?」

「いや、ちょっと訓練の視察とか新しい戦術を試してたりとか…」

「そうですか、ユイもエマもカナもフレイムも寂しがっていましたよ?」

「ああ、ごめん」

「私も…サミシカッタデス」

「えっ?何て?」


 最後はごにょごにょ言っていたので聞き取れなかった。

 いつの頃からだろうか?シルヴィ、エマ、カナの3人は呼び捨てで呼び合っている。戦場で助け合って、仲が良くなったのかもしれないな。それとも、料理修行の時だったっけ?あれ?…まあ、いいか…。仲良き事は、いい事だ。


「なっ、何でもありません!」


 シルヴィは顔を赤くしている。たぶんシルヴィも寂しがっていたんだろうな。


「ごめんね、今日はみんなで一緒に食事をしよう」

「ええ、楽しみにしていますね」

「ん」

「グギャー(楽しみ)」


 ユイもフレイムも楽しみにしているらしい。


「フレイム、おいで」


 両手を広げて誘うと勢いよく飛び込んで来て顔をぺろぺろ舐めてくる。


「はいはい、ぺろぺろはいいから」


 ちょっと顔を引きながら頭を撫でる。

 フレイム…、顔がべたべたになってしまったじゃないか…。寂しかったのかな?


「只今、戻りました」

「戻りました」


 エマとカナが戻って来たようだ。


「「「「おかえり」」」なさい」


 4人と1匹でエマ、カナを出迎えた。


「ヴェル様、やっとお会いできましたわ」

「シルヴィが寂しがっていたよ」


 シルヴィが顔を赤くする。


「そっ、そんな事…。2人も寂しいって言ってたじゃない」


 どうやら3人共寂しかったみたいだ。そんな3人の頭を順番に撫でてやると少し顔を赤くして俯く。

 う~ん、3人とも可愛いな。


「今日は皆で食事をしよう」

「「「はい。ヴェル様「君」。」」」


 余程嬉しかったのか3人とも声を揃えて笑顔を見せる。笑顔が眩しい、何だこの笑顔は…眩しすぎて直視できない。邪な心が洗われていくようだ。


「どうしました?ヴェル様」

「いや、3人の笑顔が眩しくてつい…」

「もうっ!、ヴェル様ったらすぐそう言う事を言うんだから恥ずかしいじゃないですか」

「そうですわね。ヴェル様はお口がお上手ですわ」

「もう聞き飽きたよ」


 3人は呆れ顔で答えたが少しニヤついている。満更でもないらしい。そんな会話をしているとアレクに『はいはい、ご馳走様』と言われて仕事に戻る。その日の夜の食事は、6人と1匹揃って楽しく過ごした。





 新しい兵の戦術訓練を開始してから一週間が経過した頃、反乱軍が王城を出陣したとの報を受けた。

 こちらも急いで準備を整え、出陣する事に決まった。いくら城塞都市とは言え、民衆にも被害が出てしまうからだ。

 俺は戦場となる予想地点に一早く到着し、戦場を有利に進めるべく魔法による砦を築く任務を受けた。魔法による砦を建設するにあたって、土魔法が扱えるカナを連れて行こうと思った。実践は修行と違い、貴重な経験となるからだ。

 戦場予想地点に到着後、直ぐに土魔法による外壁を築く。高さ15メートル、幅15メートルの分厚い高い壁を瞬時に造りだした。


「城壁はこれでいいな。後は前方に落とし穴でも作っておくか…」

「いつみてもヴェル君様の魔法は凄いね」


 カナは城壁を作る俺の手伝いで隣にいた。


「土魔法がある程度できれば誰にだってできるさ」

「確かにできるかもしれないけど…、ヴェル君ほど早くできないよ」


 普通の魔法使いじゃないからね。


「まあ、詠唱無しで魔力総量に物を言わせて造ってるからね。それにカナも手伝ってくれてるから早く出来るさ」

「あんまり力になれている気がしないね」


 カナは俺が造り出した壁と自分が造り出した城壁とを見比べて落胆している。


「そんな事はないよ。手伝ってくれてるから早く出来上がったし、早く出来たら出来たらで他の事も出来るしね」

「それが罠作り?」

「そうだね。それだけじゃないけど…」

「まだ何かやるの?」

「ちょっと考えてる事も一緒に試そうかなと思ってね」


 カナとの会話をしながら巨大な落とし穴は出来上がった。


「おっきいね…」

「そう?」

「大き過ぎるよ!どれだけ!って感じだよ!」


 かなりの勢いで突っ込まれてしまった。『そう、難しいのね…』と、どこぞの背の低い美少女魔導士風に答えるが『気持ち悪い…』と女言葉に引かれてしまった。


 俺が作り出した落とし穴は直径1km四方はあるだろうか巨大だった。

 続いて考えている事を試してみる。土魔法を使って2メートル程の土人形を造る。ゴーレムだ。

 2000体程作って、同時に動かせるか試してみる。動いた。そりゃそうだ、自分の魔力で造り出したゴーレムだもの動かせない筈がない。ただ、問題だったのは数千のゴーレムを一度に動かせるか試しておきたかったのだ。

 いつも、数十体程度なら自在に動かせているのだが、2000体ともなると数が違う。動かせるか不安だったのだ。思い通りに動かせる事を確認した後、城外に伏せておいた。

 そして今度はゴーレムを指揮する為の塔の建設を行う事にした。戦場全体を見渡せないと、折角作ったゴーレムの動きが制限されるからだ。


「よし、あの地点がいいかな…」

「ヴェル様、ここに何作るの?」

「塔だよ」

「塔?」

「戦場全体を見渡してゴーレム隊の動きを最大限に動かす為の塔だ」

「へー」


 土魔法で作り出した塔は高さ40メートルはあろうか、砦周辺に一際目立ってそびえたっている。


「すっごい、高いね…」

「登ってみる?」

「うん」


 塔に登ると遠くまで見渡せた。どこまでも続く地平線…、周辺に見える森林や平原…。まさに、絶景だった。


「ヴェル君。凄い遠くまで見えるね」

「そうだね」

「景色が綺麗だね」

「カナには負けるさ…」


 そう答えてカナの肩に手を回す。


「ヴェル君…。キザったらしいよ?」

「エー…」


 ちょっと格好付けさせてくれてもいいと思うの…。折角のカナと二人きりだもん…、もうちょっと、こう…何て言うの?…いちゃいちゃしたいじゃない?


「カナ…」

「何?ヴェル君」

「今は俺達は二人っきりだよ?」

「…うん…」


 二人っきりと聞いたカナは急にもじもじし始める…。少し朱に染まったカナの顔を見ると、いつも元気な女の子が花も恥じらう乙女に見えた。

 何このギャップ…。可愛い、抱きしめちゃってもいいかしら?


「カナ…」

「ヴェル様…」


 カナと見つめ合う…。

 やばい…、心臓がばくばくいってるぞ。

 カナの顔が朱に染まり、目を潤ませている…。今は二人きりのチャンスだ。シルヴィもエマもいない…。カナとイチャラブするには最高のシチュエーションだ。

 見つめ合ったカナはそっと瞳を閉じる。

 これは!?いいよね?いいんだよね?口づけちゃってもいいんだよね?いい?いくよ?

 カナの顔に俺の顔が近づく…。そして、唇が触れそうな瞬間、


「大変です!敵軍が姿を現しました!」


 この野郎!今、いい所だったのに!邪魔しやがって…、後でヤキいれてやる!…はて?今、何て言った?


「何だと?」

「はっ!敵軍が姿を現しましたっ!」


 何ですと?敵軍ですと?あっ、そっか…。ここ戦場だった…。そして、俺達は戦場に砦を築きに来たんだったな。忘れてたよ…。

 カナといちゃいちゃするのに集中しすぎて忘れてた。

 そっか…、邪魔したのは…グスタフとベハインドの野郎かぁ~!


「全軍、配置に付け!」


 目にもの見せちゃる!


「はっ!」


 カナは突然の兵の言葉に背を向けて胸を押さえている。見られたと思って動揺しているのだろう。


「カナ…」

「…何?ヴェル君」


 恥ずかしくてこちらを向いてくれないカナに一言。


「続きは、また後でな」

「っ!もうヴェル君!」


 『ははは』と茶化すように言ってからカナに指示を出した。


「カナ。兵達に命令あるまで決して砦から出ない様に伝えておいてくれ」

「うん、分かった。じゃ、行ってくるね」

「おう!任せた」


 カナは塔の階段まで走り出した所で俺を呼ぶ。


「ヴェル君!」

「ん?」

「大好きだよ!」

「っ!…俺もだ!」


 カナの突然の告白にびっくりしたが、俺も告白で返すとカナは遠くからでも分かるほどに顔を真っ赤にして階段を降りて行った。

 う~ん、可愛いな…。

 さっきの続きを想像してから、敵軍を睨みつける。数は、およそ1万5千と言ったところか。こちらは5千…数にして丁度3倍か。この前の逆だなと思いつつ、敵を引き付ける事にした。

 反乱軍はゆっくりと行進を開始してから突撃を開始し、攻撃してくる。十分に引き付けた後、魔法によって落とし穴を発動する。

 大きな地響きの音が響き渡り、反乱軍は飲み込まれていく。目の前に突如出現した巨大な落とし穴に5千の兵を失った反乱軍は突撃の勢いを無くし立ち止まった。


「よしっ!今が好機」


 そう呟いて、2千のゴーレム部隊を一斉に操り始める。

 5千の兵を突然、目の前で失った敵軍は動揺して動きを止める。そこにゴーレム部隊を横撃させて陣形を崩させる。敵軍は陣形を崩しながらも反撃を開始するが、魔法で作り出したゴーレム部隊は堅く、剣や矢を通さない。

 次々と攻撃を仕掛けるゴーレム部隊に成す術も無く、蹂躙され、死体の山を築き上げていく。これ以上の被害を避けるために、敵軍は退却を余儀なくされていた。


「何とかなったね」

「私達、何もしてない…」

「被害が無くて良かったじゃないか」

「ヴェル君、強すぎ…」


 カナは呆れ顔だった。何も俺が強い訳じゃない。俺は魔法でゴーレムを動かしていただけだったからだ。ゴーレムを倒せない敵が弱いだけだ。まあ、助かったけど…。

 今回の先鋒戦は敵兵7千5百人を打ち取った大勝利で幕を閉じた。


「ところでカナ…」

「何?ヴェル君」


 戦った直後に言うのも何だけど…。


「さっきの続きをしないか?」

「もうっ!ヴェル君!」


 思いっきり、背中を叩かれてしまった…。あれ?続きしてくれないの?おじちゃん、ショックだよ…。

 あんなに乙女モードのカナを見れるチャンスなんてあまりないんだからさ、もうちょっと二人っきりを満喫しようよ…。


「…ちょっとだけだからね…」


 カナは顔を朱に染めながら、小声で語り掛ける様に呟く。その言葉を聞いた俺は、全身に電流が走ったように感情が昂る。

 やべぇ…、まじ可愛い…。うん、行こう!直ぐに行こう!とカナの手を引いて塔に登ろうとすると兵が駆け寄ってきた。

 嫌な予感がする。


「申し上げます。アレックス殿下率いるモンシア伯爵軍9万5千の兵がご到着されました!」

「…。」


 アーレークー!もうちょっと、後でこいや!空気読めや!このイケメンが!死ね!


「カナ…」

「…うん…。お預けだね…」


 残念そうに答えるカナの頬に兵達に分からないように、そっと口づけをしてアレク達を出迎える為に移動する。

 カナは呆けた感じで、その場に少し佇んでから俺を追ってきた。そして、可愛らしく俺の腕辺りの服を『ちょん』と摘まんでいる。やっべ…、興奮しそうと思いつつ、アレク達を待った。

 アレク達の姿が見えるとカナは手を『すっ』と離して冷静を装う。少し名残り惜しいが、こんな所をシルヴィとエマに見られると気まずいのかもしれない。俺も説教を喰らいそうだし…。


「ヴェル!もう戦闘が終わったって聞いてびっくりしたよ。急いで駆け付けたのに…」

「俺の魔法を駆使すればあんな相手は取るに足りないさ…。もう少しゆっくり来ればよかったのに…」

「何か棘があるな…」


 そう言ってからアレクはカナの顔を見ると『ははぁ~ん』と納得した顔をしていた。その顔が憎らしい…一発殴ってやろうかと思ったが、ここは我慢した。シルヴィ達にチクられたら死ぬからだ…。

 カナの顔を見ると少し顔を赤くしている。カナ…そこで顔を赤くしてたら、イチャついてたのがアレクにばれるだろうが…。いや、もうバレてるけど…。シルヴィ達が来たら元に戻ってよね…。怖いから…。


「ヴェル様!ご無事ですか?」

「ヴェル様。心配致しましたわ」


 噂をすれば何とやらだ…。シルヴィとエマが小走りにやってきた。


「ああ、大丈夫だよ」

「それを聞いて安心しました」

「よかったですわ。胸を撫で下ろしました。…カナ?どうかされましたの?」


 エマ、そこは突っ込まないで…。カナ?大丈夫だよね…?


「ううん、何でもないよ。それにしても皆遅いよ」

「ごめんなさい。これでも急いで来たんですよ」

「そうですわ。お爺様に頼み込んで急いで来たと言うのにもう戦いが終わってるなんて驚きでしたわ」


 上手い!カナ…、話を切り替えたな。後で頭を撫でてあげよう。


「あはは、ヴェル君の魔法凄かったよ」

「ヴェル様の魔法を見てみたかったですね」

「そうですわね」


 3人は俺の魔法に花を咲かせているようだ。


「婿殿。お手柄でしたな」

「いいえ、相手がすんなり退却してくれてよかったですよ」


 モンシア伯爵達はこちらに向かっている間に先鋒戦が開始されたとの報を受け、急いで来たらしいが到着した時には既に終わっていた事に驚愕していたそうだ。先鋒戦は僅か1時間にも満たない時間で戦いは終わり、味方は被害なく反乱軍は7千5百を失う結果だったからだ。


「それにしても凄いですぞ。此度の戦い、直ぐ様敵を追い返すその手腕は神妙ですな」

「ちょっと試したい事があったので実験台になって貰っただけですよ」

「1万5千の敵兵を実験台にするなんて、婿殿は恐れを知りませんな」


 『がはは』とモンシア伯爵は笑い飛ばしている。


「ヴェルは本当にすごいな。もう、ヴェル一人ででも勝てそうな気がする…」


 アレクは信じられないと溜息を付いている。

 いや、それは無理だって…。俺だけで勝てるなら戦争の意味がないし、被害が出ないならそうするけどこっちの身が持たないよ。


「そんな事はないよ。魔力が尽きれば終わっちゃうよ」

「でも、まだまだ魔力に余裕があるのでしょう?ヴェル様」

「まあね」


 シルヴィも呆れた様子だったがそれと同時に『流石、ヴェル様』とも言っていた。

 今回の先鋒戦はこれで終わりだが、次はいよいよ本体が来る事だろう。次はどうするか伯爵と相談しておくか…。

 とりあえず、落とし穴に落ちた敵兵の装備と遺体の回収を兵達に命じておいた。いよいよ、本格的に戦いが始まる。今はただ、勝利を信じて戦うだけだ。






 それにしても、今日のカナは可愛かったな…。いつも元気一杯のカナが、もじもじして乙女の恥じらいを見せる。もうね、『ギュッ』と抱きしめたくなっちゃうよね。

 うへへ…。

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