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46    脱出

 情報を集めた結果、自分なりの推理をアレク達に話そうと思う。

 その推理が合っていようが、間違っていようが関係ない。これは、あくまで俺の考えだからだ。後は、この推理をアレクとシルヴィに判断を仰ぎ、今後を決めて行こうと思う。

 早速、防音設備の高い宿を予約して、5人と1匹を集める事にした。王宮や魔法学校でこの話をするには危険すぎると判断したからだ。

 壁に耳あり障子に目ありだ。





 夕方、大事な話があると5人に伝えて宿を取った。しかし、5人と1匹は約束の時間より少し遅れて来る事になった。アレクが王宮で仕事があったから、エマとユイも遅れてくる事になった。

 その間、手持無沙汰になってしまうので王宮まで迎えに行く事にした。アレクは思ったより時間が掛かっているらしく、未だ姿を現さない。だから、デフィカルトの様子を見に厩舎に向かった。

 今日のディフィカルトは何だか落ち着かない様子だった。


「どうした?ディフィカルト。」

「ヒヒィィン」

「よしよし、落ちつけディフィカルト。」

「ヒヒィィン」


 どうにも落ち着かない様子だ。こんなディフィカルトは初めてだな。


「ヴェル様。ジョセフィーヌの様子も何だか変です。」


 ジョセフィーヌも同様だった。


「どうしたんだろうね?」

「分かりません、こんな事は初めてなので…。」


 他の馬達はディフィカルトとジョセフィーヌに怯えているような気がする。仕方ないな、一緒に連れて行くか。怯えているせいか他の馬達の体調が心配になってしまう。


「分かったから、ディフィカルトもジョセフィーヌも一緒に行こうな。」


 俺が一緒に連れて行くと言ったら急に大人しくなった。そんなに外に出たかったのかなと思いつつ、アレクを待っていると直ぐにやってきた。


「ごめん、ヴェル。待ったかい?」

「少しだけね。」

「ディフィカルトとジョセフィーヌも連れて行くのか?」


 アレクは、いつも調教や運動をする時ぐらいしか厩舎から出さないのに、今日はディフィカルトとジョセフィーヌを連れて行こうとしている様子が気になったのだろう。


「何か落ち着かないみたいで他の馬に迷惑が掛かるから連れてきた。」

「そっか、珍しいね。」

「だよね?」

「うん。」


 本当にどうしたんだろう?まあ、少し外に出ればその内落ち着くだろうと思いつつ、宿に向かった。

 宿に到着して、アレクの護衛について来た数人の警護の兵は外に待機してもらい、俺達は防音精度が高い個室に集まった。以前から貴族同士の逢引等に使われる宿を、ひょんな事(千里眼の時)から知った俺は此処しかないと思ったからだ。

 アレク、シルヴィ、エマ、カナは何でここなの?と思ったらしいが俺が大事な話があると言った事で納得したらしい。


「さて、今日集まってもらったのは俺が推測した荒唐無稽な話なんだが、妙に信憑性があると判断したからそれを聞いて貰う為に集まってもらった。」


 前置きを置いて推測した事を順を追って説明していった。

 エマもカナも『考え過ぎじゃない?』と言っていたがアレクとシルヴィだけは妙に冷静に聞いていた。思い当たる所があるのかもしれない。

 そう思って2人に重い声で尋ねる。


「心当たりがありますね?」

「「…。」」

「沈黙は肯定と受け取ります。」


 俺は更に続けた。


「その昔、と言っても数年前になるでしょうか、グスタフは殺されかけた。違いますか?」

「「…。」」

「殺されかける前と後では、アレク達とグスタフの間に態度に変化があった。違いますか?」

「「…。」」


 どうやら図星の様だ。


「これからどう…」


 これからどうしますか?と尋ねようとした所で護衛の兵が慌てて飛び込んでくる。


「アレックス殿下、大変です!」


 護衛の兵士は凄い剣幕で怒鳴り込んだ。その様子を見てアレクは叫んだ。


「何事だ!?」

「第二王子グスタフ様、謀反!国王陛下は捉えられ幽閉されました!王都の重要拠点が制圧され、王城は陥落!敵兵が此処に迫っています!直ぐにお逃げ下さい!」

「「「「「っ!」」」」」


 一歩遅かったか!こうなれば悠長な時間はない!俺が王宮に助けに向かおう…いや、待て。王宮には恐らくあの使用人がいるだろう。

 あの使用人は魔法使い。それも、俺と同等、或いはそれ以上に強い魔法使い。アレク達を連れたまま、あの男と戦う?無理だ。アレク達を守りながら戦える相手ではない。

 じゃ、どうする?ここは一旦引いて、アレク達の身の安全を確保してから行動を起こすべきだろう。なら、今は王都の脱出を図る時だ。


「俺が前衛を務める。俺の後にアレク、シルヴィ。エマ、カナ、ユイはその後ろに続け!」

「わかりましたわ。」

「うん。」


 エマとカナは動揺を隠せない様子だったが俺の指示に素直に従った。


「アレク、行くぞ!」

「…。」

「アレクどうした?」


 シルヴィはアレクを見つめ、アレクは微動だにしない。いや、震えていた。


「僕は…行けない…。」

「っ!ふざけるなっ!」


 アレクの思わぬ言動に怒りを感じた。


「俺が此処にいるのはお前達の護衛なんだぞっ!」

「分かっている。だからシルヴィは連れて行ってくれ…。」

「何を訳の分からん事を言っているっ!」


 アレクは動く気配さえしない。


「僕のせいなんだ。僕のせいでグスタフは謀反を起こしたんだ。」

「いいや、それは違うぞ!アレク。」


 俺は否定した。


「アレクとグスタフ、シルヴィの事はベハインド公爵のせいだ。恐らく彼が裏で糸を引いている。グスタフは乗せられたんだろう…」

「それは分かっている。そうじゃないんだ…。」

「たぶんアレクはグスタフと仲直りしようとがんばったんだろ?それでもグスタフとの仲が引き裂かれた事を気にしているんだろ?」

「何でそれを!?」

「お前の性格を知っているなら分かり切った事だ。たぶんそれもベハインド公爵が邪魔してるはずだ。アレクは行動が読み易いからな。」


 冗談交じりではあるがアレクの心理を読み取った。


「今、ここでアレクが討たれればベハインド公爵の思う壺だ。ならここは逃げ延びて公爵を討ち果たし、国王陛下とグスタフを取り戻せ!」


 その言葉にアレクはやっと重い腰を上げた。


「わかった。ヴェルを信じる!」

「じゃ、行くぞ!」


 その掛け声で全員が指示に従う。

 外にはすでに兵士達が交戦を開始していたが分が悪かった。護衛の兵士達は敵兵の数の多さに苦戦して全滅した所だった。


「アレクがもたもたしているから…」


 カナが呟く。


「すまない…。」


 アレクは絶望を感じ取っていた。


「過ぎた事だ。俺に任せろ。」


 そう言って風の刃を発動する。周囲にいた敵兵達は次々とその首を切り落とされ倒れていった。


「シルヴィはジョセフィーヌにアレクはディフィカルトに乗ってくれ。ディフィカルト、アレクを頼んだぞ。」

「わかった。」

「わかりました。」

「ヒヒィィン」

「行くぞ!。」


 再度、俺の掛け声で一斉に走り出す。

 途中何度か同じ様に交戦するも、俺の魔法でその場を切り抜ける。馬借り屋で馬車を無理やり調達し、ディフィカルトとジョセフィーヌに牽かせ、荷台にアレク達を乗せて出発する。

 途中、敵兵達に遭遇するも魔法を駆使して王都を脱出すのに成功するのであった。

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