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5     師匠との出会い

 魔法の練習を開始してから、半月…。毎日、瞑想をして魔力を感じ、入念な魔力操作を欠かさず行なっている。

 水玉一発で魔力枯渇状態だった俺も、今では二十発作れるようになった。毎日、魔力枯渇まで魔法を行使しているのが良かったのか、瞑想に一工夫したのが良かったのかは分からないが、魔法の練習開始当初より飛躍的に魔力総量が上がっている。

 恐らくは瞑想に一工夫した事が、魔力総量の上昇に繋がったのだと思う。瞑想に一工夫したのは、何てない事だが、体内の魔力を魔力操作を使って体の内に留めるようにしたのだ。

 これなら、日頃から集中してさえいれば、どんな時でも瞑想と魔力操作を同時に行う事が出来る。

 日々、魔力総量が上がっていく俺を見て、『やっぱり、ヴェルはすごい!天才だわ!』と母様が燥ぎ、引き気味に父様が宥める。そして、クーリエに微笑ましく見守られている…。ちょっと恥ずかしいし、段々と母様が壊れていくような気がして怖い…。

 そんな毎日を送りながら、今日も魔法の練習だ。


「清らかなる清流に住まう水の聖霊よ、我が言葉に耳を傾け力を分け与え給え、水玉ウォーターボール!」


 しかし…こう毎日、水玉ばかり作っていると飽きてくるな。水玉を木に投げつけ見てもパシャッと水玉が弾けるだけ…。威力がまるでない。

 水玉の威力を上げれないものなのだろうか?基礎魔法でも使い方によっては武器になるかもしれない。やってみるか…。

 水玉の威力を上げる方法…水に回転を付けてみてはどうだろう?試す価値はあるかもしれない。

 まずは魔力を感じる。そして魔力操作で右手に集める。さて…ここからだ…。

 水玉を回転させるイメージを思い浮かべる。イメージだ、イメージ…。もっと回転を早く、もっと力強く…。


「清らかなる清流に住まう水の聖霊よ、我が言葉に耳を傾け力を分け与え給え、水玉ウォーターボール!」


 出来上がった水玉を見てみると、すごい回転していた。思った通りだ…思い浮かべたイメージを強く持つ事で、魔法は使用者の思い通りに形を変化させる事ができるようだ。

 後は、威力が上がっているかどうかの確認だ。

 回転を加えた水玉を木に投げつけてみた。するとガリッと音を立てて水玉が弾ける。

 ガリッ?今まではパシャッと音がしたが、今までの水玉と違う音がした。恐る恐る水玉を投げつけた木を見てみると、木が削れていた。


(ふむ…成功のようだな。回転を加えるだけで威力が上がったのなら、今度は形を変えてみてみようか。もっと細く、鋭く形を変えて回転を加えるとどうなるのか…興味深い。)


 細く、鋭くイメージを強く思い浮かべる…。そして、回転だ。もっと早く、もっと力強く…。


「清らかなる清流に住まう水の聖霊よ、我が言葉に耳を傾け力を分け与え給え、水玉ウォーターボール!」


 バシュッと音を放ち木を貫いた。

 まじ?貫いちゃったよ…。これ、やばい…。もし、人に当たったら大怪我どころじゃ済まなくなるぞ…。安全な場所でしかやらないようにしよう。

 しかし、形や回転を加える事が出来るのなら、もしかしたら他の魔法も同じ事が出来るんじゃないか?やってみるか…。

 思い浮かべたのは、弓を引くように…竹がしなるように、下から上に舞い上がれ!


「大いなる大気を司る風の精霊よ、我が願いに応え、力を貸し与えたまえ、ウィンドウ!」


 突如として突風が下から上に巻き起こる。


「きゃー。」


 悲鳴が聞こえた。そして、俺は目撃してしまった。

 それは、白…。何物にも汚される事のない純白の白だった。

 足を肩幅まで広げて洗濯物を籠から取り出そうとしていたクーリエの下着だった。突如として舞い上がった風に、クーリエのスカートが綺麗に捲れ上がったのだ。

 白か…。うん、クーリエによく似合っている。いつも清楚なクーリエにぴったりの色だった。クーリエが穿いていたのは、ガーターベルト付の純白の白だった。

 その足は細く、しなやかそうな足から覗くヒップラインの綺麗なお尻…。プリッとしていて、手で触れたら、さぞ触り心地がいいお尻だと窺える。

 それにしても、白か…。いいな、白…。鼻血が出そう…。


「ヴェルナルド様…。」

「え?」

「そこで何をしているんですか?」


 あっ、やばい…。クーリエの顔が引き攣っている。


「え?いや、何も…。」

「それに白、白と…。」


 両手を握りしめながらプルプルと震えている。

 こっ、こらあかん!まじあかん!超あかん…。


「いっ、いや、雲は白いなと…。」

「坊ちゃま!」

「わー、ごめんなさぁい!」


 俺はそのまま走り出した。だってクーリエの顔が怖かったんだもん…。いつも笑顔のクーリエの引き攣った表情が怖かったのだ…。

 次からは、気を付けようと思う…。






 魔法の練習を初めて、既に一年…今では基礎魔法から初級魔法にレベルアップしていた。

 そして、今日も魔法の練習の日々…。

 火弾ファイアーショット水弾ウォーターショットかまいたちウィンドビースト岩の弾丸ロックバレット

 属性の違う魔法を、素早く連続で発動する練習を30セット。そして、魔法で傷ついた木々や植物にヒールを掛けて元に戻す。

 環境破壊をしたままにしたくないからね…。とは言ってもなるべく破壊しないように威力を抑えて発動してるけど…。それでもやっぱり環境破壊になるからね…。

 その後、物理や魔法耐性上昇の魔術練習を一通りこなすのがいつもの訓練メニュー。


「ふぅ、大分魔力も上がって使い切るのも一苦労だな…。」


 そろそろ中級の魔術でも練習したいなと思った矢先、ふと周囲に気配を感じた。


「誰だ!?」


 返事はない…。

 振り返って見るも周囲に人影はない。何だ?


「探知魔法サーチマジック!」


 隠れているのかと思い探知魔法を使ってみるも気配は感じ取れない。


「気のせい?」


 そう思った瞬間、頭の中に言葉が響いた。


『見つけた!』

「誰だ?」


 周囲を見回すが人影はない。


『僕かい?僕はアルフォード。偉大なる大魔法使いさ。』


胡散臭せえ…。


「自分で、偉大なる大魔法使いなどと言っちゃう胡散臭い人が何か?」

『うっわ、酷いな君は。傷ついちゃうよ…』

「傷ついてもいいから、とりあえず姿を見せたら?」

『おっと、失礼。』


 次の瞬間、目の前に青白く光が発光して人が現れた。いや、耳が尖っている。小説によく出てくる、耳が長く尖っているのが特徴な種族、エルフか?


「エルフ?」

「いや、エルフじゃないよ。僕は魔族だ。」


 魔族ってあれか?どこぞの何でも願いが叶う7つの玉を作る緑色した異星人の種族でシャツの胸元に魔って書いた人ですか?確か○ッコロだったかな?


「…ナ○ック星人ですか?」

「いや、違うよ。」


 何で知ってるんだ!?それとも、いるのか!?ナ○ック星人!?


「何でも願いが叶う7つの玉を作る種族の人ですか?」

「そんな種族がいるの?」


 やっぱり、いないのか…。ちょっと残念…。


「…いないと思います。」

「そうか、それは残念だな。」

「…ですね。…で貴方の目的は何ですか?」


 こいつは一体何者なんだ?魔族と言っていたが、俺に何の目的があって姿を現したんだ?


「僕はずっと人を探していたんだよ。ずっとずっと永い間ね…。」

「何で?」

「僕の…偉大なる魔法使いの弟子になる、相応しい人物を探していたんだよ。一万年もね…」


 なっが…。どんだけ探してんねんっ!…思わず関西弁になっちゃったよ…。


「えっ?一万年も生きてるんですか?」


 魔族は人間よりも長寿だと書物で読んだ事はあったが、そんなに長く生きるものなの?まじで?


「いや、僕はもう死んでるよ。とっくの昔にね。」


 じゃ、幽霊?


「えっ、でも目の前にいるじゃん?」

「あぁ、これは…何ていったらいいかなぁ…。死ぬ前にね、魔法を使って僕の記憶を残してそれが姿形を作っているんだ。」


 そんな魔法聞いた事ないよ。まあ、知ってる魔法なんてものは、ほとんど皆無だけど…。


「そんな魔法もあるの?」

「あるよ。僕が作り出した特別な魔法だけどね。」

「すごいな…」


 驚いているとアルフォードは続けて言う。


「だから偉大なる大魔法使いなのさ。」


 だから自分で言うなって…。


「あっ、そう…。」

「あっ、そうって…これ、すごい魔法なんだよ?」

「いや、もうすご過ぎてすごいのかすごくないのか分かんなくて…。」

「…まぁ、いいや。僕は弟子を探していたんだよ。そして君に出会えた。これは運命だよ。」


 運命なのか…。それは仕方がないな。目と目が合ったらなんとやらだ。いや、あれは違うか…。


「そうなの?」

「そうさ。僕が研究に研究を重ねて編み出した魔法を使って、一万年も探し回ってようやく君に出会えたんだから。」


 だから、どんだけ探してんねん!


「それは、どうも…。」

「だから、僕の弟子になってください。」

「弟子って、魔法使いの?」

「他に何があるんだい?」

「ですよね。」

「ですよ。」


 まぁ、自分で偉大なる大魔法使いと言い切っちゃう胡散臭い奴だけど、魔法を教えてくれるなら胡散臭くても願ったり叶ったりだ。

 正直、これから先どうやって魔法を習得して行けばいいか、手詰まり感を感じていた。母様の持っている魔法書は初級までの魔術しか書かれていなかったからだ。

 中級以降の魔法を学ぶ機会がなかった。

 だから俺は、こう答えた…。


「お願いします。」


 素直に頭を下げた。


「うん、よろしくね。」


 これが師匠との運命の出会いだった。

 運命なのか?まあ、いいか…。

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