閑話 クーリエ・ウィルソン その1
私の名前はクーリエ・ウィルソン。グナイスト家にお仕えするメイドです。
今日は私のこれまでをお聞きしてもらいたいと思います。
今日、私は15歳になり成人しました。
家族から誕生日の贈り物を受け取って喜びに溢れた日でした。
お爺ちゃんとお父さんからは靴をお婆ちゃんとお母さんからは洋服を弟からは木から削って作ったペンダントを貰った。
私の家は決して裕福ではない。靴は狩りで仕留めた動物の皮から作られた靴。洋服はお婆ちゃんとお母さんが縫って作ってくれた。木のペンダントは弟の手作りだ。
決して高価な物じゃないけど家族の愛が感じられる贈り物だった。嬉しかった。
成人した私はこれから仕事を探して家の為にがんばろうと思ってます。早速、働き口を探したけど300人程度の小さな村には働き口があるわけでもなく困ってしまった。仕方なく働き口を探しながら家の手伝いをする毎日を送る。
成人してから1年が経ったある日、領主のセドリック様がメイドを探しているようだったので早速雇ってもらうために面接を受けた。初めて領主様のお屋敷に入ったせいか緊張する。
奥様は私の強張った顔を見て『緊張しなくていいのよ。』と優しい言葉を掛けてくれた。村では奥様はとてもお美しくお優しいと評判でした。私も何度か交流をさせてもらった事があるので、その容姿やお優しさに憧れていたので何気ない気づかいの言葉が嬉しかった。
そんな私と奥様の様子を見て旦那様は優しい笑顔を向けていました。その笑顔についくらっときそうになったけど踏み止まりました。憧れる奥様の旦那様を好きになるわけにはいきません。
そんな事を考えていた私に旦那様は仕事の説明をした。
何でも、奥様がご懐妊されてその為の面倒と家の事を住込みでしてほしいとの事でした。他に働き口などない村でこれは絶好の好機だと思って二つ返事でメイドになる事にしました。憧れる奥様に、凛々しく笑顔の素敵な旦那様の傍で働ける事を神様に感謝しました。
メイドとして働く事は苦にはなりませんでした。家の手伝いと大して変わりはなかったからです。貴族様にお仕えすると言う事で覚える事はいっぱいあったけど奥様が優しく詳しく教えてくれたので直ぐに覚える事ができました。
憧れの奥様に教えて頂く事に幸せを感じていました。時には失敗する事もあるけどそんな時、奥様はいつも許してくれた。『次はがんばろうね。』と優しく声を掛けてくれる。まるで出来の悪い妹に良く出来る姉の優しい言葉のようでした。
そんな私はいつの間にか憧れのお姉様のように慕っていました。奥様も妹のように接してくれるようで毎日が楽しかった。
そんな日々が数ヶ月続き、奥様はついにご嫡男で在らせられるヴェルナルド様をお産みになられました。
目鼻立ちは整い、奥様に似ています。笑った時のお顔は凛々しくも優しい旦那様の笑顔に似ていて将来が楽しみな予感がしました。
お子をお産みになられた奥様の面倒、メイドの仕事、そしてヴェルナルド様のお守りなど仕事が山ほどあったけど毎日が充実した日々でした。ヴェルナルド様は全然手の掛からないお子様でした。
普通はちょっとした事で直ぐ泣くのにヴェルナルド様は全然泣かなかったのです。私の弟の時と違って戸惑いました。ヴェルナルド様は産まれてからずっと周囲の様子を観察している…そんな気がしていました。
ちょっと不気味にも思ったけど、たぶんこの子は賢いのだと思いました。何故なら一人で動き回れるようになってからの行動はいつも何かに興味を持ち観察するように行動しているからです。
でも決して危ない事をしない。この子は将来、どんな大人になるのか興味が沸いてきました。
ヴェルナルド様は私の胸がお気に入りの様子で抱き抱えあげると胸を触って『おー』と唸っています。私はその様子を見てこの子は賢いけどきっとえっちな大人になるのだろうと笑ってしまいました。
それはたぶん旦那様と奥様の夜の生活を見て思ったからです。初めてその様子を見てしまった時は正直驚きました。夜中に旦那様と奥様の寝室の近くを通りかかった時にあえぎ声が聞こえたので『ドキッ』として思わずこっそり覗いてしまいました。
旦那様の逞しい体、奥様の普段見せる事のない快楽に溺れるお顔とお二人の行為が目から離れませんでした。覗いてしまった私はその行為の最中にあろう事か一人で…その…。つい手が胸や…あそ…こに伸びてしまいました。必死に声を殺してばれないようにしてしまいました。
翌日から夜中に寝室の傍を通らないようにしました。しかし部屋にいても『ぎしぎし』と聞こえてくるので初めて見てしまった行為を思い出して悶々としてしまいます。
だってそうでしょう?憧れるお姉様のように慕っている奥様とイケメンで逞しい旦那様の行為を覗き見してしまったのです。忘れようにも脳裏にこびりついて離れません…。ただ黙って忘れようとして我慢して眠りにつきます。
何日かにたまには…あの…一人で…慰…ていますけど…。
メイドとしてお仕えする日々が3年も続いたある日
私は気付きました。ヴェルナルド様は、異常なまでに文字の習得速度が速い事を…。奥様は天才だわといつも仰られていました。私も同感でした。
奥様はあろう事か、3歳のヴェルナルド様に魔法を教えようとしているのです。旦那様はまだ早いんじゃないかと仰っていました。私も早いと思いました。しかし、よくよく考えてもみれば文字の習得速度が異常に速いヴェルナルド様なら、恐らくは魔法の早く週遠くしてしまうのではと…。
予想は見事に的中しました。日に日に魔力総量が増えて行っていると奥様は言っていました。やはり、ヴェルナルド様は異常です。異常なまでの天才振りを発揮していました。
私は考えるのを止めました。馬鹿らしいほどに天才振り発揮するヴェルナルド様は、私の考える遥か斜め上の存在なのだと思ったからです。将来はすごい魔法使い様になられるでしょう。
それから二年が経ちヴェルナルド様は5歳になられたので誕生日会を開く事になった。
奥様は料理に気合いが入っているご様子です。そんな様子を見て私も気合いを入れてお手伝いしました。
誕生日会で旦那様がヴェルナルド様に贈った物はペンダントでした。どこからどう見ても女物だったけど恐らく奥様との思い出の品なのだと思いました。
でも違った…。ヴェルナルド様が旦那様に言った一言が奥様をひくつかせた…。旦那様が必死に言い訳している…。初めて見ました…、旦那様があんなに必死になって言い訳している所を…。
少し笑いそうになってしまいました。旦那様と奥様の間に変な空気が流れていたのでそれを払拭すべくヴェルナルド様に贈り物を渡しました。私とヴェルナルド様の会話にその場の空気が元に戻った気がしてよかったです。
旦那様もほっとした様子でこちらを見ていたのですが奥様が『クーリエに手を出したら許さないから。』と一言仰った。その言葉に私の心はどきりとしました。私の妄想の世界では幾度となく経験した事…。
それを思い出したら恥ずかしくなってきましたがなんとか落ち着かせました。ヴェルナルド様は賢い子…。ひょっとしたら私の気持ちにも気付いているのかもしれないと思いました。
今の私の幸せはこの人達のお陰なのだと…、家庭を壊すような事はしてはいけないと思いました。この気持ちは決して告げないと決心しました。
翌年、ヴェルナルド様の弟君であるエルヴィス様がお産まれになられました。
奥様は一時、死を覚悟する事態に陥りましたがヴェルナルド様の必死の回復魔法で一命を取り留めました。よかった…本当によかったと心底思いました。
その反面、ヴェルナルド様が怖くなりました。6歳の男の子があんなにすごい回復魔法を使って命を救ったからです。ありえない…、本当にありえない事です。将来が末恐ろしくなりました。
しかし、ヴェルナルド様の師匠と名乗るお方、アルフォード様が突然にご訪問されました。
初めての魔族を見て驚きを隠せませんでした。聞けば、あの偉大なる大魔法使いのアルフォード様だと言うのです。最初は信じられませんでしたが、ヴェルナルド様の魔法を思い出して納得できました。
こんなすごい魔法使いの弟子なら納得でした。アルフォード様も奥様もヴェルナルド様を天才だと仰り、きっと将来は歴史に名を残せる魔法使いになるのだと確信しました。だから、これからもヴェルナルド様の奇怪な行動も優しく見守ろうと思います。
それからのヴェルナルド様は剣術も学び、ますます頭角を現すような気がしてきました。
しかし、剣術の才能は無いようでした。そんな中、アルフォード様があの世に旅立たれたと聞いて悲しくなりました。しかし、エルヴィス様が泣きそうになっているの見てヴェルナルド様は自分を鼓舞するかのようにエルヴィス様に答えていました。
ヴェルナルド様は本当に強い子だと思いました。みるみる元気を取り戻し前に進もうとしているのです。私なら泣き崩れて何日も塞ぎ込んでいたでしょう。この子は賢いだけでなく心も強い子なのだと尊敬してしまいました。
私もヴェルナルド様のように強くなろうと思います。
それからと言うものヴェルナルド様は魔法の研究、剣術の特訓に精を出していました。
特に剣術は自分で型を作り、旦那様に認められるほどになりました。本当に将来が末恐ろしくなりました。
剣術の特訓をして一年が経った頃、魔法と剣術の合わせ技でとうとう旦那様に勝ってしまわれました。もう驚きで何も言えませんでした。
エルヴィス様はヴェルナルド様と離れたくないのかずっと傍にいる様子です。いつもヴェルナルド様にくっついています。ヴェルナルド様は少し歩きにくそうですけどお嫌ではなく寧ろ喜んでいました。
そんなある日、ヴェルナルド様がお作りになられた刀と呼ばれる武器を大事そうに持っていました。いえ、持っているのではなく牽きづっている感じですね。どうやらヴェルナルド様はエルヴィス様を説得して刀を贈られたそうです。
それからと言うものヴェルナルド様の真似をして剣術の練習や魔術の練習をしようとしています。正直、可愛いと思いました。微笑ましくご兄弟のやり取りを見守ていたそんなある日、事件が起こりました。
私の人生の中で一番の出来事でした。それは日頃から抑えていた旦那様への思いが溢れ出した日でした。
剣術でヴェルナルド様に負けた悔しさと父としての威厳と誇りの間で揺れ動いて疲れている旦那様を見て唐突に癒してあげたい衝動に駆られた事が事件の引き金でした。この幸せな家庭を壊したくない思いで必死に押さえつけたのですが、その夜…その…一人で慰めていた時でした。
一人、部屋で上半身をはだけさせ胸を揉みしだいきスカートを捲り上げて股を大きく広げて行為に及んでいた私は旦那様の事を思い描いていました。日頃から押さえつけていた事もあって久し振りの行為に夢中になってついぼそりと『セドリック様…。』呟いたその時にはっとしました。
いけないいけない静かにしなきゃと思ったら私の前に人がいる事に気付きました。その人は旦那様でした。
ノックをしたらしいのですが夢中で行っていた行為で気付かなくセドリック様と呟いた事で部屋に入る許しを得たと思って入って来たらしいのです。私は私のしていた行為が見られていたのに気付き恥ずかしくなって頭が真っ白になって動揺してしまいました。
私の恥ずかしい行為、私の恥ずかしいところから目が離せない様子でした。その恥ずかしいところを見られている事に気付いて咄嗟に態勢を変えて隠したのですがもう既に見られた後でした。
私が無言でいると旦那様は私に覆いかぶさってきました。鼻息が荒く、興奮している様子でした。暫く見つめ合ってから私はあろう事か目を瞑ってしまいました。それは接吻を求めているような感じでした。旦那様はそれをみて口づけをしてきました。私は抗う事なくその行為を受け入れてしまったのです。
この家庭を壊さないように必死に私の心を押さえつけて旦那様に手を出さないと決心していたのに…。我慢もしたけど毎晩、悶々とした体を旦那様の妄想で慰めていた私は一気に火がついてしまいました。
その後の事は成すがまま成されるがままでした。結局、最後まで受け入れてしまいました。
この日の事は夢の一時だと思い、最初で最後の夢物語だと思っていたのでしたが結局この関係を続けてしまいました。月に2回程の頻度ではあったけど、それでもいつも奥様の事が頭を過ります。
憧れる優しい女性、憧れるお姉さまとお慕いしている奥様に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたがその行為に溺れている私は一度も奥様の話はしませんでした。奥様の話をすればこの夢の一時は終わりを告げると確信していたからです。
絶対にダメと思っていてもついつい状況に流されてしまう。私は弱い、だめな女なのだと深く思いました。でもどうしてもこの関係を辞めれなかった。
奥様に何度も謝ろうとしたけど結局、言葉にできなかった…。奥様…。どうかもう少しこのままでいさせてください。
ヴェルナルド様が王都に出発されたらこの関係を辞めて旅に出ようと考えました。
旦那様と奥様にけじめをつける為に…。