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23    魔法が使いたくて その1

 入学式から一ヶ月が経ち、それなりに学院生活に慣れてきた。

 入学当初は、大変だった。特別生が、俺しかいないクラスは意味が無いので、魔法専攻科とホームルームを一緒にする事になったのだが、15名のクラスで特別生が俺一人と言う事で、浮きまくっていた。

 クラスにカナがいた事が、唯一の救いだったかもしれない。

 興味本位で、攻撃魔法の授業に参加し、お手本でファイヤーボールを全力で的に当ててくれと、教師に言われて試したのだが、的を含む周囲15メートルは轟音と共に木っ端微塵に吹き飛んでしまった。

 教師、カナは勿論の事、攻撃魔法に参加していた生徒達は、唖然とその惨状を見つめ、轟音を聞きつけた一般教養科の生徒達は『何事だ?』と言わんばかりの勢いで、校舎の窓からこちらを見ている。


「すみません。やり過ぎました。」


 教師に謝ったが、最初から全力でと言った教師も自分に落ち度がある事を悟って『あっ、ああ』としか言えなかったようだ。

 その日から1週間は全生徒から畏怖と奇異の眼差しにさらされ、話も碌に出来ないままであったが、数少ない友達に助けられた。

 アレク、シルヴィ、エマ、カナだ。

 4人は休み時間になると、俺の所まできて世間話をする。あそこの食事は美味いとか新商品が出たから一緒に行こうとか誘ってくる。その話を聞いて、クラスの生徒達も少しづつではあるが、話をしてくれるようになった。

 そんなある日、いつもの4人は魔法を教えてほしいと俺に頼んできた。


「魔法を?」

「そうだ。頼むよヴェル。」

「ヴェル様。よろしくお願いします。」

「ヴェル様。お願いしますわ。」

「よろしく。ヴェル君。」

「それはいいんですが、カナは兎も角として、3人は魔法が使えたっけ?」

「使えないよ。」

「使えませんわね。」

「私も、経験はありません。」


 じゃ、だめじゃん…。魔法書には魔法使いは貴重だと書いてあったが、この3人に魔法適正なんてあるのだろうか?


「カナから聞いたけど、魔法が使えなかったのに、ヴェルが魔法を使えるようにしてくれたって言ってたぞ。」


 ああ、そんな事もあったな。懐かしいな。その時、カナの胸を触ったんだっけ?カナの胸を触るなら、今触りたいな。

 そう思って、カナの胸をチラ見した時、カナと視線が合った。そして、カナも胸を触った事を思い出したのか、恥ずかしそうにもじもじしていた。

 うん…。やっぱり結構、膨らみがあるな…。


「ヴェル様?聞いてますか?」

「ん?ああ、聞いてるよ。」


 危ない危ない…。シルヴィが不審に思ってる。


「では、放課後でいいですか?放課後、王宮の俺の部屋で行いましょう。」


 一応、カナの時の事があるので、他の人がいないところで行う事にした。


「部屋で?まあ、それで構わない。」

「はい。よろしくお願いします。」

「どうぞ、よろしくお願いしますわね。」

「よろしくね。ヴェル君。」


 4人は真剣だった。それにしても急に何故と思ったが、4人の真剣さが伝わってきたので素直に了承しておいた。

 放課後、皆を伴って王宮にある俺の部屋に向かった。


「わあ、ここが、ヴェル君の部屋なんだね。」

「カナ。恥ずかしいから、あんまり見ないで。」

「男の子の部屋に入ったのは、これで2回目だね。」


 2回目?カナ…。誰の部屋に入ったんだ!?気になる…。こんなにキュートな可愛いカナを部屋に入れる男は誰だ?変な事されてないよね?されてないよね?


「ん?誰の部屋に入ったの?」

「んふふ。知りたい?」


 うぜえ…。知りたいけど、うざい。


「くっ。いや…、いい。」

「ああ、嘘嘘。冗談だよ。」


 他の男の部屋に入ったのがか?


「ヴェル君の部屋だよ。村に居た時の。」

「ああ。そう言えば、一緒に寝たね。」

「ヴェル様!今の話は、本当ですか!?」

「カナさん、もっと詳しくお聞きしたいですわね。」


 あっ、やべ。うっかり口が滑っちゃった…。シルヴィ、そんなに威圧しないで、怖いから…。エマもカナに詰め寄らないの。カナは楽しそうに話さないで…。アレクも、そこで笑ってないで何とかしろ。


「ちっ、小さい時の話だよ。」

「…。」


 シルヴィの目が怖い…。これは、余計な事を言わない方が身のためだな…。


「そんな事よりも、魔法が使えるか見てみるから、こっちに並んで。」

「ヴェル様!誤魔化さないで下さい。」

「カナさん、後で詳しく。」

「はあい。」

「おう。」


 こいつら、何しに来たんだ…。


「誤魔化してないから、何もなかったから、早く並んで…。」


 話を誤魔化すように、4人を並べた。


「俺もまだ、魔法の修行の途中なので、誰かに教える経験はありません。分からない事が、あれば質問してください。」


 前置きを言ってから魔法の指導を始める。


「まずは、4人とも瞑想をして下さい。」

「わかった。」

「わかりました。」

「わかりましたわ。」

「僕も?」

「カナも久しぶりだから、ちょっと見てあげるよ。」

「うん。わかった。」


 4人とも、座って瞑想を始める。

 カナは魔法が使えるので、直ぐに魔力を感じる事ができた。昔見た時よりも、魔力総量が格段に上がっていて驚いた。流石は、王宮筆頭魔法士の孫娘と言ったところかな。カナ自身も、相当努力したに違いない。

 次に、魔力を感じたのはシルヴィだった。カナ程、魔力を感じなかったが、それでも一般的な魔法使いの魔力総量より、ややしたぐらいだ。10歳で、これほどの魔力があるなら、大したもんだ。

 次はアレクだった。魔力は感じるが、一般の魔法使いよりは劣っている。まだ11歳だから、これからに期待だな。

 しかし、エマからは魔力を感じなかった。そこだけ聞いていたら、魔法使いになれないだけだと思うだろう。しかし、全く魔力を感じないのはおかしい。魔力はどこにでもあると師匠は言っていた。だから、全く感じないのはおかしかった。


「カナは十分に魔力が育っているね。」

「本当!?」

「ああ。相当努力したんだね。」

「うん。がんばったよ。ヴェル君に追いつく為にね。」

「そっか。」

「うん。」


 カナは褒められて喜んでいる。扱いやすいな。いや、根が真面目なだけかもしれないが…。


「シルヴィは10歳で、一般の魔法使いと同じぐらいか、やや少ないぐらいの魔力があるから、魔法が使えたらきっといい魔法使いになると思うよ。」

「本当ですか?」

「うん。」

「早く魔法使いになりたいです。」

「なれるかどうかは、わからないけどね。」

「何とかして下さい。」

「善処します…。」


 何とかって…。何とかなるかもしれないが、分かんないよ?


「アレクは、魔力が低い方だけど、11歳でこれだけあるなら、今後に期待だな。」

「そうか。がんばるよ。」

「おう。」


 問題はエマだな。


「エマは…。」

「…?私は、どうですか?」

「うん。魔力が感じない。」

「魔法使いになれないと、言う事ですわね?」


 普通に考えたら、そうなんだけど…。ちょっと、よくわからないな。


「よくわからない。」

「どう言う事ですの?」

「魔力が全く感じないのは、変なんだよ。」

「変ですの?」

「魔力とは、世界の至る所にあるって知ってるよね?」

「はい。」

「それは、人間の体内にも同じ事が言えるんだけど、全く感じないって言うのはおかしいんだよ。」

「何故でしょう?」

「それは、調べて見ないとわからない。」

「調べて頂けますか?」


 そうだな。調べてみないと、どうする事もできないしな。


「わかった。でも、ちょっと時間が掛かりそうだから、アレク達を先に見てやってもいい?」

「かまいませんわ。」

「じゃ、アレク。ちょっとこっちで横になってくれるか?」

「わかった。」


 そう返事をして、ベッドに横になるアレク。


「じゃ、そのままの態勢で魔力操作をしてみてくれ。」

「わかった。」


 アレクは、静かに魔力を操作しようとするが、魔力が流れていかない。

 やはり、思った通りだ。カナの時もそうだったが、体内に蓄えられた魔力が堰に阻まれて封じ込められているかのようになっている。この堰を何とかしないと魔力が操作できないようだ。

 カナの時と同様に、体の中心線を軸として、堰の二ケ所にゆっくりと穴を空けていく。すると、アレクの体から魔力が揺らめき始める。

 成功だ。これで、アレクも魔法が使えるだろう。


「おお…。体から力が沸いてくるようだ。」

「恐らく、これで魔法が使えるようになると思う。おめでとう。アレク。」

「ああ。ありがとう。ヴェル。」

「ただし、いきなり魔法は使わないようにね。危ないから。」

「わかった。じゃ、それまでは何をしたらいいんだ?」

「瞑想と魔力操作の練習をして、魔力を鍛えるのと、魔力を蓄える訓練をしといてくれ。」

「わかった。」


 アレクは、自らの魔力が漂う姿に興奮を抑えきれていない様子だった。


「じゃ、次はシルヴィだね。」

「はい。よろしくお願いします。」


 アレクと入れ替わるようにシルヴィが横になる。

 俺のベッドに美少女が寝転んでいる姿を見ていると、何か変な気分になってくるな…。まあ、それはいいとして、始めよう。始めるって、変な事じゃないよ?ちょっと胸を触っちゃうけど、決して変じゃないよ?疚しい気持ちは、これっぽっちも…、ない…、よ?ホントだよ?


「ちょ、ちょっとヴェル様。」

「ん?」

「そこは…。」

「あっ、うん。ごめん。嫌かもしれないけど、少しだけ我慢してくれる?」

「嫌なわけ…、寧ろ…、いえ。はい。わかりました。」


 何だ?寧ろ…、何だ?そこまで言ったら、最後まで言ってくれよ。気になっちゃう…。

 恥ずかしさからなのか、顔を赤く染めていくシルヴィは実に可愛かった。本当に、変な気持ちになっちゃいそうな気がしてきたので、続きを始める。

 カナ、アレクと同様に、同じ作業を繰り返した。

 シルヴィの体から魔力のオーラが漂う。しかし、アレクよりも力強く、そして綺麗なオーラを放っていた。


「すごい。これが、魔力のオーラなんですね。」

「うん。でも、無理はしないでね。」

「はい。ヴェル様。」


 シルヴィもアレクと一緒に嬉しそうにしている。


「じゃ、次はエマ。」

「はい。よろしくお願いしますわ。」


 ここからが、問題だ。何故かエマだけは魔力が感じないのだ。その原因を突き止める必要がある。

 それにしても、エマが横になった姿を見ていると、思う事がある。何だこの膨らみは!?普段から、その大きさを主張しているエマの双丘は、見事の一言に尽きるが、横に寝そべっているにも関わらず、その存在を主張し過ぎている。横になっても形を変えず、柔らかそうな、そして、張りのある弾力を、これでもかと見せつける。

 俺は、思わず『ゴクリ』と唾を飲んだ。


「ヴェル様…。どこを見ているんですか?」

「ヴェル君?」


 世界に亀裂が入った。

 言い表すならば、『ビシィ』と音を立てて、ガラスにヒビが入った時のような感じで、俺の視界に亀裂が入った。

 シルヴィの声は重かった。凍り付くような冷たさを持っていた。カナは笑顔だったが、目が笑っていない。怖い…。


「いっいや、どうしたものかと、ちょっと考えていただけなんだ!本当だ!許してくれ!」

「何を許して欲しいんですか?」

「ヴェル君、ちょっと向こうでお話ししようか?」


 待って待って待って…。シルヴィ、レイピアを抜かないで…。カナ、引っ張らないで…。

 ぎゃー!




 自主規制




 その日、少年の悲痛な叫びが、王宮内を木霊した。

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