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閑話    カナリエ・グランネル

 僕の名前は、カナリエ・グランネル。アルネイ王国、王宮筆頭魔法士であるクエン・グランネル子爵の孫娘。

 僕には悩みがある。真剣な悩み…。

 王宮筆頭魔法士の孫娘でありながら、魔法が使えない。僕の周囲には、お爺様の後を継げるように、期待と羨望の眼差しがあった。

 でも…、僕はそれを裏切ってしまった。魔法が使えなかったからだ。

 それでも、何とかして魔法を使えるようになる為に、お爺様に特訓をしてもらったけど、それでも魔法が使えなかった。

 体の中にある魔力を感じる事ができるのに、魔力を操作する事ができなかったのだ。

 もどかしい…、悔しい…、どうする事もできなかった。

 それでも、笑っていようと思った。周囲の期待を裏切った僕ができる事は、笑う事しかできなかった。人前では笑い、一人の時は泣いていた。

 そんな毎日だった。

 でも、ある日の事だった。お爺様が仕事で遠い所に行こうとしていたのだ。

 僕は無理を言って、お爺様に着いて行く事にした。家には痛くなかったから…。

 そんな僕を察してかは分からないけど、お爺様は笑って許してくれた。

 お爺様の仕事が終わり、連れられて向かう先は、片田舎の村だった。人口は300人ぐらいと、お爺様は言っていた。

 此処は、長閑でいい。

 王都にいた僕に向けられるのは期待の眼差し…。此処には、それがない。期待の眼差しがない。哀れみの眼差しがない。

 久し振りの開放感を味わった気分だった。

 そんな村の中で、僕は知ってしまった。

 この村には、僕と同い年ぐらいなのに、すごい魔力を持ち、すごい魔法を扱える少年がいる事を…。

 驚きを隠せなかった。すごい羨ましかった。でも、それと同時に感じたのは、自分の無力感。そして、絶望だった。

 僕と同い年ぐらいの少年の名前は、ヴェルナルド君。

 かっこよかった。魔法を使う時の仕草、真剣な表情、そのどれもが魅了して目が離せなかった。

 どうしたら、こんなすごい魔法が使えるんだろう?どうしたら、こんなすごい魔法使いになれるんだろうと頭の中が一杯だった。

 ヴェルナルド君が使ったすごい魔法を見て、お爺様は必死に弟子にならないかと誘っていた。

 羨ましかった。僕も、あんなに必死でお爺様に言われてみたかった。

 でも、無理な事は分かってる。魔法が使えないから…。魔法が使えないと分かった時の、お爺様の残念そうな顔を見た時から、分かっていた事だった。それでも、夢は捨てきれなかった。

 ヴェルナルド君は、お爺様に両肩を?まれて苦痛に耐えているようだった。

 お爺様、止めてあげてと言おうとした時だった。

 すごい人が、現れた。

 昔、お爺様にご本を読んで貰った時の話に出てきた人だった。

 魔法を極め、魔神を倒して世界を救った英雄。偉大なる大魔法使いのアルフォード様だった。そんな人が、ヴェルナルド君の魔法の師匠だと知って、驚いた。

 いや、そんな事よりも、憧れの大魔法使いが目の前に現れた事に、興奮していた。もう、何が何やら分からなくなってきていた。

 そんな中、お爺様は僕とヴェルナルド君を残して、ヴェルナルド君の家に消えて行った。

 お爺様は、僕の事をヴェルナルド君に任せたようだった。

 ヴェルナルド君は、僕を見てどうしたらいいのか分からなくて、戸惑っていたようだった。

 あんなにすごい魔法を使う魔法使いなのに、オドオドしていた。

 その瞬間、僕は分かっちゃった。ヴェルナルド君は、きっと女の子と接した事が無くて戸惑っていたんだって。

 すごい魔法を使えるすごい魔法使いは、完璧な人だと思っていた。でも、違った。すごい魔法を使えるすごい魔法使いのヴェルナルド君は、完璧じゃなかった。

 そう思ったら、急に体が軽くなった。ヴェルナルド君が可愛く見えた。

 だからかな?ヴェルナルド君を呼ぶ時に、ヴェル君って呼んじゃったのは…。だって、かっこよくて可愛かったから。

 ヴェル君も嫌な筈がないって言ってくれた。それに…、僕の事を可愛いって言ってくれた。きゃー。可愛いって、可愛いって。


 コホン…。だから、ヴェル君に素直になろうと思った。だから、魔法を教えてほしいってお願いした。悩みも打ち明けた。

 そしたら、ヴェル君はこう言ったの。『わかったよ。カナちゃん。いや、カナ…。僕が魔法を教えてあげる。絶対に魔法使いにしてみせるよ。』って言ってくれた。

 僕の事、カナってカナって、きゃー。


 コホン…。絶対に魔法使いにしてみせる、って言ってくれて嬉しかった。だから、信じてみようって思った。

 魔法が使えない原因を捜してみてくれた。

 探してくれてる途中、ヴェル君の手が僕の胸に触れて…。ちょっ、ちょっと恥ずかしかったけど我慢した。

 でも、魔法使いになる為に胸を触ってもいいか聞いて来たから、思わずえっちって言っちゃった。

 そしたら、ヴェル君が慌てちゃって可愛かった。

 ヴェル君がエッチな気持ちで、胸を触っていたんじゃないって分かってる。真剣な顔で原因を捜してたから…。でも、ちょっと疑っちゃった。だから、何度も聞き返しちゃった。

 そしたらね、ヴェル君は『俺を信じろ!カナ!』『俺を信じろ!カナ!』『俺を信じろ!カナ!』ってきゃーきゃー。ヴェル君かっこいいー。


 コホン…、ヴェル君を信じてよかった。信じたからこそ、魔法が使えるようになった。僕は嬉しくて、興奮して、思わずヴェル君に抱き着いちゃった。

 ちょっと、はしたなかったけど、いい思い出になっちゃった。その後、大変だったけど…。お爺様の馬鹿…。

 ヴェル君は、僕の恩人だ。だから、ヴェル君のお嫁さんになろうと思う。お嫁さんになったら、ずっとヴェル君の傍にいて、尽せるから…。だから、お嫁さん宣言しちゃった。

 お爺様は反対したけど、関係ない。もう、決めた事だから。

 でも、帰らなきゃいけない。ヴェル君と別れるのは嫌だけど、お爺様に魔法の勉強をしてもらうんだ。だから、帰る。

 でも、ヴェル君をもっと身近に感じたいから、言っちゃった。ヴェル君が身に着けている物をくれない?って…。すごい恥ずかしかったけど、勇気を出して言っちゃった。

 そしたら、ヴェル君がペンダントをくれた。使い込まれたペンダントだけど、嬉しかった。

 すごい綺麗な花模様があしらわれたペンダント。ヴェル君からの初めての贈り物。大切にしようと思う。

 でも、自分で着けるよりも、ヴェル君に着けてもらいたかったから、お願いしちゃった。ヴェル君は嫌な顔せずに、ペンダントを着けてくれた。優しかった。

 だから、思わず…、


 ちゅ~しちゃった。きゃーきゃーきゃー。

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