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115   出陣ス

お久し振りです。銀の懐中時計です。眠いです。疲れが取れません。

挿絵とか入れる方法知りません。誰か教えて下さい……。

 魔力式レールライフルの製作開始から三日が過ぎた。その間、出来上がったレールライフルを順次配布していくヴェルは、エルフたちに訓練も同時に施していた。


「このライフルはボルトアクション、つまりはこのレバーを引いて鉄の弾を入れてからレバーを戻し、目標に向かって銃口を向けてトリガーを引く。これでバットストックに内蔵された魔法陣と魔石が起動して鉄の弾を発射する仕組みになっています」

「ほお、飛び道具、という事じゃな?」

「そうです。そしてこのライフルがあれば、敵を近寄らせずに勝利する事が出来ます」

「そ、そんなにも凄い威力を持っておるのか?この、ライフル、と言う物は」

「はい。実際に威力をお見せしましょう」


 そう言うと、ヴェルはバットストックを肩に当てて目標物である木に向かって狙いを定める。

 スウっと息を吐き出して呼吸を止める。そしてゆっくりと引き金を引いた瞬間、「ズギューン」と轟音を轟かせて鉄の弾は勢いよく放たれる。

 次の瞬間には目標の木が大きく削り取られて「バキバキ」と音を奏でながら倒れていく。

 強力な電流を発生させて電磁場の相互作用によって加速された鉄の弾は、目標の木を貫いて後ろの木々たちまでもを貫通して削り取っていく。

 その凄まじい威力を目の当たりにしたエルフたちは、ただただ目を丸く見開いては唖然としていた。


「何かご質問は?」


 ヴェルの言葉に、漸く我に返ったエルフたちはヴェルの顔と破壊された木々たちを見比べては首を左右に振るばかりだった。


「ま、まさか、これほどとは……」


 驚きで言葉を失ったエルフたちを代表してモンロウは呟いた。


「しかし、このライフルには欠点があります」


 そう答えたヴェルに「え?」と視線が集まるが、更に言葉を続けて説明を始める。


「このライフルは弾を発射後、すぐには撃てない欠点があります」


 この魔力式レールライフルはボルトアクション(手動装鎮)タイプ、つまりは弾を発射した後にはレバーを引いて自分で弾を装鎮しなければならない。その間、敵から目が離れ、弾を装鎮した後に再度狙いをつける間が無防備状態になるという事だ。


「それは危険ではないのか?」

「ええ、敵から目が離れた直後に反撃を受ければ防御出来ない状態になっていますね」

「それは非常に不味い。そんな武器では満足に戦えんぞ」

「心配には及びません。考えがあります」

「考えとは?」


「まずは――」と説明を始めるヴェルに一言も聞き逃すまいとエルフたちは耳を傾けていた。


 まずは複数の列を作り並ばせる。そして先頭の列が発射後にすぐに最後列に移動する。次に二列目のエルフたちが次の敵を狙撃して最後尾に移動して三列目に場を譲る。その間、一列目はレバーを引いて弾を装鎮し、二列目は弾を発射した事で生じる銃身の熱を冷ましておく。この繰り返しを行なえば、敵に反撃の機会を与えずに連続して攻撃を続けられるのだ。

 これは前世での日本の戦国時代、織田信長、徳川家康連合軍と武田勝頼が戦った長篠の戦で用いられたとされる戦術、三段銃陣だ。


「――以上です」

「なるほど、それなら連続して攻撃が出来るわけですな」

「ええ、敵に反撃の機会を与えずに連続して攻撃し、敵の数を減らすのがこの陣形の目的です」

「しかし、敵には遠距離からの攻撃する兵器があるのですぞ?」

「その点に関しましては――」


 モンロウの質問に視線を逸らしてシャーリーを呼びつける。


「何ですか?ヴェル様」

「シャーリーにはこれを背負ってもらう」


 ヴェルが差し出したのは、女王の屋敷に入口がある地下遺跡の最深部で入手した光り輝く銀翼の翼だった。


「銀翼の翼?」

「そうだ。これには術者の思考通りに動く羽が八枚ある。それを四枚づつ動かして結界を張って大砲の攻撃を防いでもらう」

「私が、ですか?」

「そうだ。これはシャーリーにしか出来ないと考えている」

「何故ですか?」

「シャーリーは攻撃には向かない。だが、女王陛下の娘であるシャーリーは他のエルフたちと違って魔力総量が多い。だからだよ」

「それだけの理由で?」

「他にもあるさ。シャーリーには度胸があると思う。こうだと考えたらすぐに行動に移すだろう?」

「そう、ですかね?」


「そうだよ」とヴェルはシャーリーの行動を思い出す。

 事ある毎に言葉と一緒に手が出る性格、「流石は脳筋の戦士長の娘だ」と妙な納得が胸にストンと落ちる。


「ま、そう言う事だから、シャーリーはその銀翼の翼を自在に扱う為の訓練をみっちり行ってもらう」


 にししと黒い笑顔をシャーリーに向けるヴェルに、若干引き攣った表情を零すシャーリー。


「ちょ、ちょっと待ってください」

「い~や、待たないね。覚悟するんだね、シャーリー」


 一歩、また一歩と後退りするシャーリーを逃がさんとばかりに詰め寄るヴェルの黒々とした笑顔に恐怖の表情を浮かべていた。


「や、優しく、優しくお願いします」

「……」

「ちょっと、何で何にも言わないんですか!?」


 シャーリーの悲鳴とも非難とも呼べる言葉を無視して、モンロウに向き直るヴェルは答える。


「何をぼさっとしてるんですか!?みっちりと射撃訓練しなさい!」

「はっ、はいっ!」

「最低でも一キロ離れた場所からでも正確に当てられるまで寝かしませんよ?」


 ヴェルの言葉に「そ、そんな」と非難するエルフたちに五月蠅いとばかりに爆風をお見舞いしながら「さっさとやれ!」と命じるのだった。




 魔力式レールライフル製作をしつつ、エルフたちの狙撃強化訓練、シャーリーの地獄の特訓を開始してから二日が経ったある日の事、ヴェルは驚愕の事実を知る事となった。

 レールライフルを装備させたエルフたちは信じられない命中率を叩き出したのだった。

 元々、弓を得意としていたエルフたちは飛び道具に自信があったのか、それとも種族的に命中補正が付いているんじゃないかと思わせる腕前だったのだ。

 慣れないとはいえ、中遠距離攻撃武器の扱いを訓練を通して巧みに使いこなせるまでに至り、今では一.五キロの距離でも目標物のど真ん中に正確に命中させるという荒業までも習得していた。更に信じられないのは、その命中率が九十%を超える精度だったのだ。

 そこでヴェルは射撃訓練よりも隊列の移動訓練に重点を置いた訓練に変更した。


「そこっ!遅い!もっと素早く動け!やり直し!」

「はっ、はい!」

「そこっ!後ろの奴の邪魔にならないように避けて動け!」

「はい!」

「そこっ!弾を装鎮する時は落とすな!迅速且つ、正確にやれ!」

「はいぃ!」

「返事をする時はイエッサー!だ!」

「「「サー!イエッサー!」」」

「臭い口から糞垂れる前にサーを付けんか!」


「あれ?どこかで同じ事を言った事があるような」と、ヴェルは妙なデジャブ感を覚えるが気のせいだと考えを手放した。


「「「サー!イエッサー!」」」


 エルフたちの返事に「声が小さい!」と爆風をお見舞いする。


「グハッ!」

「ヒ、ヒエェェ」

「た、助け……」

「さっさと列に戻れ!」

「「「サー!イエッサー!」」」


 限界まで無駄な動きを無くして効率よく動かせる事を徹底させるに重きをおいた訓練を厳しい眼差しと態度を持ってエルフたちに指導を施していくヴェルは、心の闇を曝け出すが如く鬼と化していた。


「くっ、苦しい……」

「限界、だ……」

「オゥエ……吐きそう」

「ちょ、お前吐くなよ!」

「まだ吐いとらん……出そうなだけだ」

「そこっ!無駄口を叩くな!」

「「「サー!イエッサー!」」」

「お前ら、余裕そうだな。森を十週だ!」

「ええー!」

「そ、そんなあ……」

「ウップ」

「あ゛?」


 蛇に睨まれた蛙のように威圧されたエルフたちはみるみる内に顔を青ざめさせて走って言った。

 最後のエルフだけは走っていく途中に口から何かを出していたのを見たヴェルは「気のせいだ」と見なかった事にした。


「あの?ヴェル様」

「ん?」

「大分、上手くなりましたよ」


 銀翼の翼を背負ったシャーリーは「ほらっ」と、羽たちを動かして見せた。


「まだまだ遅い。もっと早く動かせるイメージでやってくれ」

「もう、これ以上無理ですよ!?」

「無理じゃない!やれば出来る!」


 ヴェルの言葉に「無理ですよ~」と弱音を吐くシャーリー。


 ――仕方ないな。この方法はやりたくなかったんだが……。


 ふう、と溜息を吐いたヴェルはシャーリーに向かって視線を合わせた。


「おっちょこちょいで愚図で鈍間なシャーリーはお漏らししか出来ないのかな?」

「なっ!ななななななな!」


 逆上させる事にした。

 馬鹿にされた事と恥ずかしい過去を同時に言われたシャーリーは急速湯沸かし器のように頭に血を昇らせる。


 ――もう、一押しかな?


「シャーリーはこんな事も出来ないのかな?」


 そう言いながらシャーリーに近づきつつ、そのまな板を彷彿とさせる小さい胸の突起を「ツンツン」と突き始める。


「ヴェ、ヴェル様のバカーーーーーーー!」


 シャーリーの悲鳴にも似た甲高い声と共に、銀翼の翼を構成する羽たちが一斉にヴェルに襲い掛かる。


「っ!聖なる領域セイクリッドドメイン!」


 銀翼の羽たちを素早く動かせる為にシャーリーを怒らせたとはいえ、咄嗟の羽たちの動きに回避する余裕はなく、結界でこれを凌ぐヴェル。

 ビュンビュンと見失いそうになるほど素早く動く羽たちから受ける魔力弾を結界で防ぎつつ、シャーリーの体力が切れるのを待つ。

 暫く攻撃を受け続けてシャーリーが「はあはあ」と荒い息遣いをして動きを止めているところに「やれば、出来るじゃない」と冷静に言葉を紡ぐヴェルにシャーリーは「はっ」と素早く動かした羽たちに気付いた。

 実のところ、シャーリーが羽たちを素早く動かせなかったのは集中出来ていなかったからだと気づいていたヴェルは、どうやって頭の中に思い描いた思考を純粋に羽たちに伝達出来るかを考えていたのだ。

 しかし、シャーリーの頭の中には「無理だ」と余計な考えが奥底にあり、羽たちに送る筈のイメージが阻害されていたのだ。

 だからヴェルは考えた。いつものシャーリーの行動、思考パターンを読み、結果怒らせるという結論に至ったのだ。

 シャーリーの長所は素直なところ、それは言葉と一緒に手も出る事から裏付けされている。しかしそれは、短所でもある。思った事を素直に言葉に出すと同時に手を出す性格のシャーリーは、「短気」とも言えるのだ。

 怒らせる事によって、「無理だ」と思い込んでいる考えを「怒り」でいっぱいにして羽を動かせる。それがヴェルの答えだった。


「出来た!本当に出来た!ヴェル様、私出来ました!」

「やったじゃないか!流石、シャーリーだよ。シャーリーなら出来ると信じていたよ!」


 嬉しさのあまりか興奮したシャーリーはヴェルに抱き着いて喜びを表に表す。

 ヴェルもシャーリーが銀翼の羽を使いこなせるに至った事を喜んだ。


「もしかして、ヴェル様?」

「ん?何だい?」

「銀翼の翼を素早く動かせるために私を怒らせたんですか?」

「まあね。シャーリーは絶対に無理だと思い込んでるから動かせなかったんだよ。だから、違う事に集中させればいいと思ったんだ」

「そう、ですか。ありがとうございます、ヴェル様」

「いや、いいって。シャーリーが頑張った結果だよ」

「そうですね、でもヴェル様?」

「ん?」

「女性の胸を突くなんて――」


 プルプルと震えだすシャーリーの言葉に「あ、やばい」と直感するヴェルの頬に激しい痛みが駆け抜ける。


「痛ってぇ……」


 頬を擦りながら呟くヴェルに「当然です!」と強烈なビンタをお見舞いしたシャーリーはプンスカと怒りながら言葉を返して立ち去って行った。


「キッ、キッ、キッ、キサマー!シャーリーに何をしたー!?」


 ヴェルの後からけたたましい叫び声と共にモンロウが駆け寄ってくる。

「あ、やばい。また面倒な人が来た」と内心で思いつつ、自分が悪いので何も言えずに説教を受けるのだった。




 きっかり一時間、モンロウの説教を受けたヴェルはすっくと立ちあがり、この場に注目していたエルフたちにこれまでの鬱憤を晴らすように言い放った。


「何見てやがる!全員、森十週だー!」


 爆風で追い立てられたエルフたち御一行様は、その日夜遅くまで全速力で森を駆け抜けたのだった。











 バーナム王国の進軍状況を伝令から逐一報告を受けていたヴェルは、行動を開始した。


 ――いよいよ、明日にはバーナム王国軍が迫りくる。そろそろ次の一手を放つ時だな。


 ヴェルはモンロウに指示して、レールライフルの命中率が極めて高いエルフたちを五千人選り分けて別部隊に編成させつつ、三万五千人のエルフ兵を集結させた。


「いよいよ、明日にはバーナム王国軍が到着する。これはエルフ王国の、エルフ族としての種の存続が懸かった戦いだ!気を引き締めろ!今まで訓練した事を油断なく行えば勝てる!信じて戦え!」

「「「「「おおー!エルフ王国に幸あれ!女王陛下に忠誠をー!」」」」


 ヴェルの地獄とも呼べる厳しい訓練に耐え抜いた――いや、耐えるしかなかった――エルフたちを奮起させつつ、ヴェルの後に控えるラメラ女王にバトンをタッチする。


「ラメラ女王、お言葉を」


 ヴェルの言葉にスゥっと息を吸い込み始めるラメラ女王に「何だ?」と思っていたヴェルに衝撃が走る事となる。


「お前たちぃ!我等が住まう神聖なるエルフ王国がバーナムの阿呆どもにコケにされたんだ!この落とし前はキッチリと形をつけたりぃやぁ」


 極道である。

 遺跡調査、バーナム王国への対応策、レールライフル製造、それに伴うエルフたちの訓練とシャーリーの特訓で目まぐるしくも忙しい日々の中で忘れていたエルフ王国と言う極道の存在を。

 頭の中に追いやった筈の事実を目の当たりにして思い出したヴェルは、眩暈がしつつも内心では分かっていた。

 女王ラメラは姐さんであると、エルフ組の――何代目なのかは分からないが――姐さんである。

 そしてラメラ女王の言葉を聞いたエルフ組の構成員たちは「うぉぉぉ!やったりますよ」「タマ取ったる!」「覚悟せいや!バーナムの糞虫どもがっ!」と興奮した様子で決意を露わにする。

 ふらふらする頭を抱えながら蹲るヴェルに「どうかされましたか?」とラメラ女王の言葉が掛かるが、「お前の所為だろうが」と心の内で叫びつつも「いえ、何でもありません」と言葉を返した。


「それでは、ラメラ女王。行ってまいります」


 そう言うヴェルを肩越しに「行ってらっしゃいまし」と火打石を背中に「カッカッ」と鳴らして見送るラメラ女王に溜息を漏らしながらも、エルフ組構成員三万五千人を引き連れて進軍していった。


 ――さあ、ここが天王山だ。


 うんざりした気分を振り払うが如く、ヴェルは覚悟を決めたのだった。





















 ――シャーリーもいつかはああなるのかな?


 ヴェルの不安が降り積もるばかりだった。

次回のお話は、いよいよエルフたちとバーナム王国軍との戦いを描こうと思っています。

たぶんね……。

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