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113   この気持ちは誰の所為?

眠いです。最近の平均睡眠時間4時間……よく生きてるなと思います。

 シャーリーを助け出したヴェルは3人の男たちを魔法によって拘束し、銀翼の翼の羽に縛り付けながらシャーリーを抱えて歩き出す。

 お姫様抱っこをされたシャーリーの寝顔を見ながら、「全く、世話の焼けるお姫様だな」と悪態を吐きながらも絶世の美女であるシャーリーの美しい寝顔を楽しんでいた。


 ――本当に美人だな。


 シャーリーの寝顔に見惚れているヴェルは、整った顔立ち、長いまつげ、プルンとした柔らかそうな唇にドクンドクンと胸が高鳴る。

 気付けばシャーリーの唇に引き寄せられるかのように顔が近づいていく。あと少しで、お互いの唇が触れ合いそうになる瞬間、「ん」と声を漏らしながらシャーリーの意識が戻る。と同時にヴェルとシャーリーの動きが止まる。

 それもその筈である。ヴェルからしてみれば、意識を失っている筈のシャーリーの目が開いて意識を取り戻し、そして同時に自分がシャーリーに何をしようとしていたのかを思い出したように顔を真っ赤に染めて硬直する。

 シャーリーからしてみれば、意識を取り戻して目を開けた瞬間にヴェルの顔が目の前にあるのである。そしてそれが、あと少しで唇が触れ合う距離にいるのだ。


「え?え?え?ちょ、ヴェル様!?」


 素っ頓狂な声を荒げてシャーリーは顔を真っ赤に染め上げていく。


「あ、お、おは、おはよう」


 視線を逸らしてシャーリーに挨拶をするが、顔は真っ赤っかなままである。


「お、おは、おはよう、ございます」と消え入りそうな声で挨拶を返すが、自分がヴェルにお姫様抱っこをされている事に気付いて更に顔を茹蛸のように真っ赤な顔をしている。


 あまりにも羞恥心が刺激されたシャーリーは顔を下に向けて――とは言え、ヴェルにお姫様抱っこされているので胸元辺りだが――縮こまっている。

 すると、ドクンドクンと鼓動が早鐘を打ち鳴らしている事に気付いたシャーリーは何とかして抑えようと必死に蹲っている。「ヴェル様に聞こえませんように。ヴェル様に聞こえませんように」と心の中で連呼しては心を抑え込めようと必死だったが、ヴェルの胸元に顔を埋めているシャーリーは別の鼓動を感じる。

 それはヴェルの胸の鼓動だった。その速度は激しく、力強さを感じて耳を澄ませていると、不思議と安らぎを感じ始める。ヴェルの激しい胸の鼓動を聞いて、漸く少しは落ち着きを取り戻してきたシャーリーは「ヴェル様も私の事を意識してくれている?」と思ってヴェルの顔を覗き見ると、真っ赤な顔をしているヴェルに落ち着きを取り戻してきたであろう心が慌ただしく早鐘を打ち鳴らす。

 またもやヴェルの胸元に顔を埋めるシャーリーは意を決してヴェルに話し掛ける。


「あ、あの、ヴェル様?」

「ん?な、何かな?」


 ヴェルの上擦った声色に、ヴェル様も動揺していると判断したシャーリーに悪戯心が芽生え始める。


「さっき、私に何をしようとしてたんですか?」


 ビシッとヴェルの表情が硬直した。


「ねぇねぇ、ヴェル様?な、に、を、しようとしてたんですか~?」


 甘えの入った声でヴェルに詰問するが、ヴェルは答えない。いや、答える事が出来ないでいる。

 素直にキスをしようとしてました、何て答えられる筈がないのだ。それを見越したシャーリーは更に追い打ちを掛ける。


「意識を失ったか弱い女性に、キス、しようとしてたのかなぁ?」


 わざとらしくキスの部分を強調して言うシャーリーに耐えかねなくなったヴェルは、素直に「ご、ごめんなさい」と謝る。

 そんなヴェルを見て少し罪悪感を覚えたシャーリーは「嘘です」と言葉を掛けて、更に続ける。


「助けてくれてありがとうございました」


 そう言うとシャーリーはヴェルの首元に手を廻して引き寄せるように頬に口付けをする。と同時に頭から爆発したかのようにヴェルの頭の上に煙が立ち昇るような錯覚が見え始める。


「シャ、シャーリー……い、今のは?」

「助けてくれたお礼、です」


 ヴェルの首元に手を廻したシャーリーがテヘッと悪戯っぽく舌を出して笑顔を見せる。

 やられた、と内心で思いつつ、顔を真っ赤に染め上げるヴェルは、少し恥ずかしくなったのか俯いて頬を朱に染めるシャーリーにのぼせそうになっている。


「お兄ちゃん」


 不意に声がヴェルとシャーリー向けられて、同時にビクッと体を震わせる。

 声の掛かった方向にギギギと壊れたブリキの玩具を動かすように首を廻すヴェルとシャーリー。

 黒髪の長い髪の少女ユイだった事に胸を撫で下ろしながらも、「見られてないよな?今の……」と不安が渦巻くが、このまま返事しないと不審に思われそうだったヴェルは言葉を返す。


「ユ、ユイか。どうしたの?セシリアは?」

「セシリアはシャーリーの家にいる。ユイはお兄ちゃんを呼びに来た」


 何かあったのか?と言いかけた瞬間に、そう言えばもう一人敵が向かってたな、と思い出したヴェルは「上手く片付けたか?」と質問をする。


「ん」

「そっか。ユイは偉いな」


「ん。褒めて」と頭を差し出すユイに両手が塞がっているヴェルはどうしたものか、と考える。

 すると頭の上に電球が光ったかのように名案が思い浮かんだ。

 腰を下ろしてシャーリーの体を支えつつ、右手でユイの頭をよしよしと撫で始める。

 シャーリーはヴェルから離れようとしたのだが、ヴェルががっしりとシャーリーを抱きとめているので離れられない。

「え?」と不審に思ったシャーリーはヴェルの顔を覗き込むと、頬に赤みを帯びたヴェルを見てシャーリーも頬を朱に染めつつ体を預け直す。

 ヴェルはシャーリーを離したくないようだった。「もう少し、あと少しだけ」とユイに聞こえないようにシャーリーに呟くとシャーリーも「はい……」と今にも消え入りそうな返事を返してもじもじと恥じらいを見せる。

 そんなシャーリーの仕草を見て、ヴェルの中のシャーリーへの思いが、愛おしさと共に増していく。


「さあ、帰ろうか」

「はい」

「……」


 ヴェルはシャーリーをお姫様抱っこしながら歩き出そうとしてユイにズボンの裾を摑まれる。

 どうしたのか、とユイの顔を覗き込むと不満気な表情だった。


 ――しまった。少々雑だったか?


 そう思った瞬間、ユイが爆弾を投下する。


「シャーリー、チューしてた」


 光の速度でシャーリーを地面に降ろしてユイを抱き抱え、ユイの可愛らしい頬に口付けを交わすと「余は満足じゃ」と言いたげな表情をヴェルに向けていた。


「さあ、ユイ。帰ろうか」

「ん」

「……」

「そう言えば、ユイは今何か言ったかな?」

「ユイは何も見てない」

「……」

「そっか、そうだよね?さあ、帰ろう」

「ん」

「……」


 スタスタと歩き出すヴェルは背中に大量の冷や汗を搔いていた。


 ――シャーリーのジト目が半端ねぇ!


 頬に口付けした事を誰かに言われて困るの?と言いたげな視線だった。ヴェルは心の中で「ですよ」と呟くが、と同時に「ごめん」と誰にも聞かせられない謝罪を心の中で呟く。

 もし、ここにシルヴィがいたら?エマがいたら?カナがいたら?と考えが過る。そして地獄の底に叩き落されるイメージが頭に浮かんだヴェルは、土座衛門も泣いて逃げ出すほどに顔を真っ青にして歩き出す。

 歩き出したヴェルの後から「ヴェル様のバカ」と小さな声で呟くシャーリーに罪悪感を覚えつつも、聞こえない振りをして帰路に着く。






 ご機嫌斜めなシャーリーと極上の満足顔をしたユイを連れだってシャーリーの家の前まで来ると、座り込んでいるエルフたちとボロ雑巾のように事切れそうなエルフ、フレイムの姿を確認したヴェルはユイに状況の説明を求めた。


「あれ、何?」

「知らない」


 さっと顔を逸らすユイにヴェルは察したように言葉を続ける。


「ユイ」

「ん」

「加減を間違えたのか?」

「……ちょっと、失敗した」


 怒られると思ったユイは消え入りそうな声でヴェルの質問に返答した。


「そうか。次からは加減を覚えような」


 しかし、ヴェルは怒らない。

 あれはどう見ても相手が悪いと判断したからだ。ユイはただ自分の身を守ろうとして魔法を発動しただけなのだ。相手は殺されても文句は言えないだろうと思ったからだ。


「ん」


 ほっとしたユイを降ろして座り込んでいるモンロウの前に立つと捕らえたエルフの男たち3人を放り出す。


「なっ、何じゃ?」

「こいつらが敵の間者です」

「何?」


 モンロウが放り出された男たちの顔を見ようと男たちが被っていた覆面を外すと見知らぬエルフの顔だった。


 ――あれ?ガガイルじゃない?


 シャーリーに顔を向けると知らない名前を呟く。


「ククル、エバンラ、モンシー」


 そしてボロ雑巾のようになっている男を見て「グランノ?」と首を傾けながら呟いていた。

「え?誰それ?ガガイルは?」と思いつつシャーリーに話し掛ける。


「シャーリー。ガガイルは?」


 ヴェルの質問にシャーリーは「えっと……その」と苦虫を嚙み潰した表情で歯切れ悪く答える。


「と、途中で別れました」


 途中で別れた?と不審に思ったヴェルは更に質問をする。


「で、な、に、を、していたんだ?」

「えっと……それは、その……」

「シャーリー!」


 それはまるで恋人が浮気をしている状況を目撃して問い詰めているようだった。


「実は……ガガイルに告白されて……」


「告白、だと……」と何故か軽いショックを覚えるヴェルはプルプルと震えだす。


「で、でも、断りました。好きな人がいるからって断ったんです。本当です。信じてください」


 必死で言い訳をするシャーリーの言葉を無視して、モンロウに向き直るヴェル。


「モンロウさん、こいつらの事は任せました」

「う、うむ」


 眉間に皺を寄せたヴェルの威圧感に蹴落とされたモンロウは頷いて了承した。


「ユイ、行くぞ」

「ん」


 スタスタと歩き出すヴェルとユイに続いてシャーリーも歩き出してシャーリーの家に入って行った。

 そして広場に残されたエルフたちとフレイム、扉の前に陣取るクーパーを前に、すっかり家に帰りそびれたモンロウは泣きそうな声で呟く。


「そこ、儂の家……」











 不機嫌なままでシャーリーの家に帰って来たヴェルは一言も言葉を話す事もなくリビングのソファに腰を下ろす。

 そんなヴェルを見て、ユイもシャーリーも言葉を失っている。

 ヴェルの心の内では分かっている。これはただの嫉妬であると言う事に、そしてその怒りにも似た感情が誰の所為でもないと言う事を。

 しかし、その感情を何処にぶつけていいか分からないヴェルにとってはどうする事も出来ずにいる。


「お帰りなさいませ」

「「ただいま」」

「……ただいま」


 ユイとシャーリーに遅れて挨拶を交わすヴェルの不機嫌さに不審に思ったセシリアは言葉を続ける。


「あの、どうかなさいましたか?」

「……何でもないよ」

「嘘、ですわね」

「……どうして、そう思う?」

「顔に書いていますよ?まるで好きな子が違う男性に告白を先にされて嫉妬しているかのような顔ですわね」


 どんな顔だ!?と喉まで出掛った突っ込みを飲み込み、「何故知っている?」と言葉を返す。


「情けない。たかが告白を先にされただけで、女の腐ったような女々しさを曝すとは英雄ヴェルナルドの名が泣きますわよ?」

「っ!何だと!?」


 売り言葉に買い言葉、痛い所を突かれたヴェルは感情を露わにしてセシリアに言葉を言い放つ。


「だったらシャキッとしなさい!貴方はここに何しに来られたのですか?エルフの国を救いに来られたのでしょ!?だったらつべこべ言わずに働きなさい!」


 セシリアの返答に言葉を詰まらせるヴェルは思い出したかのように行動を開始する。


 ――そうだった。俺は此処に遊びに来たわけではなかった。


「お待ちなさい!」

「何だよ?」

「謝る相手がいるんじゃないですか?」


 どこにぶつけていいか分からない感情を事もあろう事かシャーリーにぶつけていたと気づいたヴェルは素直にシャーリーに謝罪の言葉を述べる。


「シャーリー、その……ごめん」

「いえ、その……私も不快に思わせてしまってごめんなさい」

「シャーリーが謝る事じゃないよ。全部、俺の勝手な思い込みで嫉妬していただけだから」


 嫉妬していた、との言葉に頬を朱に染めつつも、もじもじと乙女モードに変身するシャーリー。


「いえ、その……私、嬉しいです。ヴェル様が嫉妬してくれて、その、あ、ありがとうございます」


 何がありがとうございますなんだ?と首を傾げるが、シャーリーの仕草に愛くるしい思いで心が満たされる。

 俺は何て馬鹿なんだろう、と反省してシャーリーに話しかける。


「俺、頑張るよ。エルフの国の為、シャーリーの為にも」

「ヴェル様」


 見つめ合うヴェルとシャーリーを尻目にゴホンと咳払いをするセシリアに、はっと我に返る2人。


「二人の世界に入るには、まだ早い時間ではないでしょうか?」

「「ご、ごめんなさい」」

「よろしい」


 その後、全員が全員の顔を見渡して笑い声が木霊した。


「じゃ、行ってくるよ」

「「「いってらっしゃい「ませ」」」」


 セシリアのお陰で気分がすっきりしたヴェルは、意気揚々と女王の下へと歩き出した。





















 ――それにしてもセシリアって、結構肝っ玉がすわってるのな。


「アレクもいずれは尻に敷かれるな」と考えが浮かび、うしししし、と汚らしい笑い声が木霊した。

次回の更新日は、ちょっと不明。会社への提出書類の進歩状況が遅れているのと更に増えたのと……。執筆している時間がない?分かりません……可能な限り頑張ります。それと……また改稿しようとプロローグから少しづつ弄ってます。アップするのはいつになるか分かりませんが、なるべく早くに出来るように頑張ります。

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