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111   攫われる

お待たせしました。なかなか時間が取れずに書き上げるのに時間が掛かりました。

 静かな森の中、木陰に隠れてキョロキョロと見渡す四人の男たちがいた。


「大丈夫なようだな」


 スラリとした長身のエルフが、周囲に人影が無いか確認してから口を開く。


「そうだな。しかし、不味い事になったな」


 次いで口を開いたのは、筋肉質のエルフだった。


「まさか、シャーリーがティアラを持って帰って来るとはな」

「どうなってるの?これじゃ、苦労してティアラを盗んだ意味がないじゃないか」


 弓を肩に掛けたエルフが困惑顔で呟く。


「どどど、どうしよう。このままじゃ、いずれバレちゃうよ」


 小柄なエルフが慌てて口を開く。


「落ち着け、そんな事よりも今はあの少年の方が問題だ」


 長身のエルフが場を制し、言葉を続けた。


「あの少年、ヴェルナルドと言ったか……彼の魔法は強力だ。それに強い」

「確かにまだ子供だと言うのに、あの小さな体からは恐ろしいまでに強さを感じる」

「じゃ、どうするの?僕たちで何とか出来るとは思えないけど?」

「ひっ、人質でも取る……とか?」


 場に沈黙が訪れる。

 女王の目を他に引き付けてティアラを盗み出し、バーナム王国軍を誘い込んだまでは良かった。後一歩、バーナム王国軍を森に侵入させてエルフの国を壊滅させようとした所で邪魔が入った。

 ヴェルナルドの登場だ。彼の強力な魔法でバーナム王国軍は指揮系統を失い、壊滅寸前まで追い込まれて撤退したのだ。ヴェルナルドさえ来なければ、エルフの国は壊滅し、四人のエルフたちの計画は成功するはずだったのだ。

 しかも、その際に見せた強力な魔法が四人のエルフたちの脳裏に焼き付き、恐れを抱かせている。そんな人間を見るのは初めてだった。そしてその相手が敵になると分かっていれば、どの様に対処しなければならないかを決めなければならない。


「……それしか、ないかもしれないな」


 最初に沈黙を破ったのは長身のエルフだった。


「それしかないのだな?」

「彼と正面切って戦えるか?」


 筋肉質のエルフは一瞬逡巡するも、答えは直ぐに出た。っと言うよりも、誰が強力な魔法を自在に扱う魔法使いと戦いたいだろうか?答えは否である。


「……無理だろうな」

「だろうね」

「た、戦う他にはないの?」

「……ない」

「うぅ……分かったよ」


 四人のエルフたちの答えは決まった。

 早速、行動を開始すべく動き出したのだった。











 女王と重臣たちとの会議が終わったヴェルナルドとシャーリーは、バーナム王国の少女セシリア姫とユイが待つモンロウ宅に到着した。


「「ただいま」」

「おかえり」


 ヴェルナルドの姿を視認したユイは、いつも通りトテテと可愛らしく小走りに抱き付きながら挨拶を返す。


「お帰りなさいませ」


 ユイの後から姿を見せたのはセシリア姫だった。

 実の兄に殺されそうになって落ち込んでいた筈のセシリア姫だったが、表情には笑顔が戻っている。


「もう、調子はいいのかい?」

「ええ、お陰様で。それに、ユイちゃんも居ましたから」


 そう言うと、セシリア姫とユイは顔を見合わせて「ねー」「ん」と何やら親し気に言葉を交わしていた。

 いつの間にこんなに仲良くなったのだろうか、と思いリビングの机の上を見ると本が置かれている事に気付いた。


「これは?」


 本を手に取って中を見てみると、どうやら子供向けの絵本の様だった。


「それは、シャーリー様の部屋にあった絵本ですわ」

「へぇ~、絵本、ね」


 エルフ年齢80歳、人間にしてみれば20歳の女性が、未だに子供向けの絵本を持っている事に可愛らしさを感じてシャーリーに視線を送ると、恥ずかしさからなのか赤みを帯びた表情でもじもじとしている。


「シャーリー様、大切な御本を許可なく持ち出して申し訳ありません」

「い、いえ、大丈夫ですよ」


 セシリア姫の謝罪に赤みを帯びた顔で言葉を返すシャーリー。

 まだ恥ずかしいのだろうか、少しもじもじとした仕草が伺える。


「そ、それとセシリア姫。姫君なのですから、私の事はシャーリーと呼び捨てで構いませんよ」


 お前も姫君だろうが、と喉まで出かかった突っ込みを飲み込み、シャーリーとセシリア姫を暖かく見守る。


「でしたら、私の事もセシリアとお呼びください」

「え?いや、でも……」

「よいのですよ、シャーリー。私たち、お友達でしょう?」


 え?いつ友達になったの?と困惑顔でこちらに視線を送ってくるが、ニヤニヤとした表情をしているヴェルナルドを見て諦めた様にはぁっと溜息を吐いて答える。


「そ、そうですね。お友達です」

「お友達なら、呼び捨てでも構いませんよね?」

「は、はい。セシリア姫……」「セシリア」

「はい。セシリア」


 少々強引だったが、友達になれたようだ。


 ――それにしても、セシリアって結構強引な性格をしている?


 一国の王女なのだから、少々我が儘に育ったとしても可笑しくはない。

 シルヴィも強引だしな、と内心で思いつつシャーリーとセシリア姫を暖かく見守っていると、


「……何ですか?ヴェル様。気持ち悪い」

「き、気持ち悪いって何だよ?」

「さっきからにやにやして気持ち悪い。本当に気持ち悪い」


 ――気持ち悪いって……まだ、さっきの事怒ってるのか?


 軽くショックを覚えつつ、シャーリーの癖に何だよ、と呟く。


「なっ!どう言う意味ですか?」

「どう言うもこう言うもないよ。そのままの意味だよ」

「だから!それは、どう言う、意味ですか!?」


 ずかずかと詰め寄って両手で胸ぐらを掴んでくるシャーリー。


「仮にもエルフの女王の娘だろ?少しはセシリアを見習ってお淑やかさをだね……」

「なっ!」

「ふふふふ」


 シャーリーと話していると、不意に笑い声が聞こえた。

 思わず、シャーリーと同時に振り向いてみるとセシリアが笑いを堪えている様だった。


「す、すみません。あんまりにもお二人が、その、仲が宜しい様なので思わず、つい……」


 ――俺とシャーリーが仲がいいだと?いや、言葉を上手く濁して言ったな。


「ちょっと、ヴェル様!ヴェル様が変な事言うから笑われちゃったじゃないですか」

「いや、元はと言えばシャーリーが気持ち悪いって言うからだろ?」

「むむむ……」

「ふふふ、あっ、すみません」

「あ、いえ、お気になさらずに」

「お恥ずかしい所をすみません」


 再度のシャーリーとの遣り取りに笑われてしまったヴェルナルドとシャーリーは、今更ながら気恥ずかしさを覚えて顔を赤くして言葉を返した。

 その後、何も言えずに場に沈黙が訪れる。

 この空気どうしよう、と思っていると、シャーリーの肘がヴェルナルドの脇腹を突く。


「何だよ?」

「ちょっと、何か話してくださいよ」

「シャーリーが言えよ」


 とヒソヒソ話をしていると、入り口の扉をコンコンとノックする音が聞こえる。

 場の沈黙を破るチャンスが到来した、とシャーリーに視線を送ると、こちらの意を汲んだのか頷いてから入り口に向かう。


「どなたですか?」

「俺だ。ガガイルだ」

「ガガイル?ちょっと待ってね」


 そう言うとシャーリーはヴェルナルドに視線を向ける。

 開けてもいいかの確認の視線だろう、と納得したヴェルナルドは考える。

 出来るだけ、セシリアの存在を他のエルフたちに知られたくないヴェルナルドは、女王陛下とシャーリーにだけセシリアの身分を伝えていた。

 ガガイルは森の北東の遺跡を調査する際、ヴェルナルドを尾行してきた人物だ。恐らくは警備関係の仕事に就いているのだろう。遺跡で助け出したセシリアの存在も――身分は知らなくても――知っているだろう。

 ガガイルがモンロウ宅に来たと言う事は、俺かシャーリーに用があるのだろうと察したヴェルナルドはシャーリーに頷きで返す。

 扉を開けてもいいと無言の許可を得たシャーリーはガガイルを招き入れる。


「どうしたの?ガガイル」

「いや、ちょっとシャーリーに相談があってな」


 そう言いつつ、ガガイルはヴェルナルド、ユイ、セシリアの顔を確認する。

 何だ?と内心で思いつつもガガイルとシャーリーの会話を聞く。


「いいけど……今じゃないとダメなの?」

「……頼む」


 ガガイルの真剣な表情にふうっと溜息を漏らして「分かったわ」と言葉を続けた。


「ヴェル様、少し出てきます。後をお任せしても?」

「ああ、いいよ。ここで待ってるから」

「じゃ、行ってきます」


 そう言って、シャーリーとガガイルは出かけて行った。

 さて、どうしようかな、と考え込んでいるとセシリアが話しかけてきた。


「それにしても……」

「ん?」

「いえ、シャーリーがエルフのお姫様だとは驚きました」


 まあ、そうだろうな、と内心で思いつつ、今までのシャーリーの事を思い出す。

 いつも明るく、慌てん坊なところがあるシャーリーだ、一国の姫としての気品が感じられない事に苦笑しつつも答える。


「言動と行動がお姫様らしくない?」

「いえ、そう言う事ではなくてですね……あの、その、何て言うか……はい」


 セシリアも何とかしてフォローしようと言葉を捜してはいるが、結局は見つけられないまま頷いたようだ。


「まあ、姫としてではなく、戦士長の娘として育てられたからなのかな?でも、いい子だよ」

「はい、それは分かっています。裏表のない正直な方なのですね。そして接していてとても暖かい気持ちになれます」

「そうだね。それが、シャーリーの魅力の一つだね」

「ふふ」

「ん?何かな?セシリア」

「ヴェルナルド様はシャーリーがお好きなのですね」


 ――え?俺が、シャーリーを好いている?


 セシリアの言葉にえ?え?え?と困惑していると、不意に扉にカッと突き刺さる音が聞こえる。

 何だ?今の音は?まるで弓を射られて様な音だな、と考えが脳裏を過る。

 周囲を警戒しつつゆっくりと扉を開けると矢が突き刺さっていた。そして矢には矢文が括りつけられている。

 矢文の内容を確認すると


『シャーリーは預かった。返してほしくば指定した場所までヴェルナルドお前一人で来い。この事は誰にも漏らすな』


 どうやら、シャーリーは何者かも手によって拉致られたようだ。

 嫌、犯人は分かっている。ガガイルだ。

 しかし、何故彼がと思いが過るが今は言われた通り行動するしかないようだ、と判断してユイにセシリアを任せてモンロウ宅を出て行った。





















 それにしても……お漏らしはするは、セシリアに姫らしからぬと思わせるは、今度は攫われるとかどうなの?


 ――シャーリー……不憫な子

次回の更新も遅そうです。

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