99 どうしよう?
シルヴィ、エマ、カナのお説教を受けて意気消沈した俺は、モンロウさん宅のリビングに戻った。
いや、俺が悪いんだけど…女の人って怖いと思う…。ガクブル
「ちょっと、ヴェル様?どうしたんですか?」
リビングの隅で足を抱えながら座り込んでいる俺にシャーリーが駆け寄ってきた。
「…何でもないよ…」
「でも…、誰にやられたんですか?」
「…」
「しっかりして下さい…」
「…」
シャーリーの問い掛けに答えようとしなかった俺にシャーリーは両手を伸ばして頭を引き寄せた。
どうやら俺は、シャーリーの胸に頭を抱き寄せられているようだった。
「ヴェル様…、元気を出してください」
「うん…」
「私が傍にいますから…」
「うん…」
「ずっと傍にいますから…」
「うん…」
元気付けようとしてくれている。
シャーリー、優しい子だ。おじちゃん、涙が出ちゃうよ…。
…。
それはそうとして…、ちょっと顔が痛いんだよね。シャーリー、胸が小さいから肋骨が鼻やら目に当たってちょっと痛い。でも、そんな事言ったら殴られそうだから辞めとこうと思う。
それに…頬に微かに感じる柔らかいであろう感触をどうにかして楽しもうと思う。
「シャーリー!」
「ヴェル様!」
シャーリーの背中に両腕を回して抱きしめる。
うぅ…余計に顔にめり込んで痛い。あっ、そうか…顔を横に向ければいいんだ。うぅん、マンダム…。
『ガタッ』
「ただい…」
モンロウさんが帰ってきた。
「「「…」」」
あっ、やばっ…。
「うちの娘に何してるんだっ!」
『バコォン』
ぐはっ!これが…天罰か…。婚約者がいるのにシャーリーに手を出そうとした俺に対しての罰が降されたのだ…。
思いっきり殴られてしまった。
「ヴェル様っ!お父さん、これは違うの!落ち着いて!」
「落ち着いてなんかいられるかっ!」
シャーリーが俺とモンロウさんの間に割り込む。
「どけっ!シャーリー!」
「いやよっ!」
「何でその男を庇うんだ!?」
「それは…その……きだから…」
ん?何だって?聞こえないよ、シャーリー。
「何だって!?許さんぞ!シャーリー!」
「だったら何だって言うのよっ!?」
「ぐっ!お前はどうなんだ!?」
突然、俺にモンロウさんは言葉を投げかけてきた。
「え?あっ、はい。そうですね…」
「っ!勝手にしろ!」
あれ?考えていたらモンロウさん出て行っちゃったよ…。
何だ?
「シャー…」
シャーリーはお腹の上で両手を組みながら顔を真っ赤にしてもじもじしていた。
え?何で?
「あの…ヴェル様…。嬉しいです」
「あぁ、うん…」
何が?
「大好きです」
そう言い残してシャーリーは走って出て行った。
え?今、何て!?好き?大好き??俺を?シャーリーが?まじで?
待て待て待て…。思い出そう…。
シャーリーとモンロウさんは何て言ってた?
『ヴェル様っ!お父さん、これは違うの!落ち着いて!』これはシャーリー。
『落ち着いてなんかいられるかっ!』これはモンロウさん。
『どけっ!シャーリー!』これもモンロウさん。
『いやよっ!』これはシャーリー。
『何でその男を庇うんだ!?』これはモンロウさん。
『それは…その……きだから…。』これはシャーリー。
『何だって!?許さんぞ!シャーリー!』これはモンロウさん。
『だったら何だって言うのよっ!?』これはシャーリー。
『ぐっ!お前はどうなんだ!?』これはモンロウさん。
『え?あっ、はい。そうですね…。』これは俺。
『っ!勝手にしろ!』これはモンロウさん。
何かおかしいところはなかったか?
『それは…その……きだから…。』
…シャーリーは何て言ってた?
それは…その……きだから…、最後に何て言ってた?
大好きです?
それは…その…すきだから?
すきだから!?
それに対してモンロウさんはお前はどうなんだ?
で、俺はえ?あっ、はい。そうですね…。
…。
好きだから→お前はどうなんだ?→そうですね…。
あわわわわ!誤解されとる!?間違いなく誤解されとる!?やばい…。早く誤解を解かないと…。
「失礼します」
「え?あっ、はい?」
「ヴェルナルド伯爵、女王陛下がお呼びです」
え?こんな時に呼び出し?
「えっと、今すぐですか?」
「そうです」
くっ!まじでか!?この急いでいる時に…。
「…はい。分かりました」
女王陛下の呼び出しとあらば、すぐにでも行かないと不味いだろう。シャーリーとモンロウさんの誤解は後で解くとして、今は女王陛下のところに向かおう。
「ヴェルナルド伯爵をお連れしました」
「どうぞ。お通り下さい」
「はい」
女王陛下の屋敷の前にいるエルフに案内役のエルフの男が報告すると俺だけ通される事になった。
玄関の扉を『ガラララ』と開けると、物腰が上品なエルフの女王陛下が三つ指を付いてまたもやお出迎えをしてくれていた。
「ようこそおいで下さいました。急な呼び出しに答えて下さった事、感謝いたします」
三つ指を付いた女王陛下は上品にお辞儀をする。
その綺麗な仕草から目が離せない。見惚れてしまう。
『おっと』と思い首を横に振る。危ない危ない…。
「いえ…」
「どうぞ、お上がり下さい」
「はい…」
女王陛下をずっと見続けてはいけないと思った。
動悸が激しい。これで女王陛下に迫られたら抗う術を知らない俺は食べられちゃいそうだ。
先程、報告に来た時の部屋に通された。そこにはエルフの国の幹部らしき男達が座して待っていた。
勿論、モンロウさんもだ。モンロウさん、腕を組みながら俺を睨んでいるようだった。
怒ってるよね?どこの馬の骨とも知れない小僧が一人娘のシャーリーと抱き合っていたのだから…。
うぅ、ごめんなさい…。




