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Forgotten Saga  作者: 水夜ちはる
第七章・レルシェルの初陣
31/59

第2話

斜陽の王国に祭上げられた『英雄』の少女。

剣と銃と魔物と陰謀のダークファンタジー!


第七章・「レルシェルの初陣」

ついに勃発した大規模な反乱。

英雄レルシェルは王都旅団を率い初陣に発つ。

だが、味方の軍が総崩れし孤立した王都旅団は――?

 レルシェルの天幕で水音がした。白い天幕に影が映る。少女の絶妙なラインを描く肢体が薄く浮かび上がっていた。

 彼女は一人、自分の天幕の中で用意させた湯を使い、昼間の戦闘で汚れた体を拭いていた。戦場でもなるべく清潔にいたいと思うのは少女の心の表れであろうか。彼女は出征後も沐浴や湯浴みを欠かさない。ただ、彼女は自分自身だけでなく、傘下の将兵にも沐浴を奨励した。冬季ではあったが清潔さを保つことは衛生面でも伝染病などを防ぐ効果があったし、定期的にリフレッシュすることで士気を高く保つことに効果があった。特に王都旅団は王都と言う環境的に整った土地に長く留まっていたものが多く、地方出征による衛生面でのストレスを考慮しての彼女の発案であった。

「ふぅ……」

 一通り身体をぬぐい終えた彼女は一息ついて清潔なタオルを身にまとった。王都旅団は前述の通り清潔な環境を保っていたが特に彼女は配慮されていた。それは彼女自身が特に望んだわけではなかったが、彼女の部下が気を使い、頻繁に沐浴が出来るよう準備を整えてくれていた。一人で沐浴をするなど、大貴族の娘である彼女には今までない経験だったが、それでも前線で望外の清潔さを保てることに感謝した。

 その彼女の耳に天幕の入口で重いものが二つ地面に落ちる音がした。

「なんだ?」

 レルシェルが訝しげにしていると天幕の入口から二人の男が入ってきた。

 レルシェルは泡を食った。彼女はまだ半裸のままである。

「なっ! 合図をするまで誰も入るなと言ってあるだろう! 見張り、見張りは何やってるんだ!」

 彼女は顔を真っ赤にしてとにかく手に掴めるものを掴んで体を隠した。ランプの光に照らし出される体の線は少女のものでありながら、なまめかしい艶やかさがあった。

 入ってきた男の一人は口笛を吹き、もう一人の男は頭を抱えた。天幕を警備していた見張りはこの二人によって昏倒させられていた。

 服からして上級の士官であることがわかる。だがレルシェルの記憶にはない顔ぶれだった。

 それはレルシェルの陣に潜入したリシェールとアルノだったからである。

「け、卿ら何をしているのかわかっているのか! 早く出ていけ! 叩っ斬るぞ!」

 レルシェルは羞恥に顔を真っ赤にしながら掛けてあった剣を掴んで叫んだ。

「おやおや、入浴中だったとは。これは失礼をした。しかし案外小娘のような反応をするんだな」

 リシェールは肩をすくめながらもにやにやと笑ってレルシェルを見た。美しい少女が半裸で怒りに上気しながら剣を掴んでいる姿は中々絵になるな、と彼は悪趣味ながらも思った。

 リシェールの表情を見てアルノは彼が何を考えているのか大体わかって頭を抱えた。

 だが、このままではこの少女は怒りに身を任せて暴れかねない。それは彼らにとっても不都合だった。

「失礼をしました。私はアルノ・デ・トリュフォー。そしてこちらはリシェール・ヴィルトール。この二つの名は王都の『英雄』の耳には届いておりますか?」

 アルノは落ち着いた口調で言った。リシェールはそれに合わせて夫人に対する礼をした。軍式の礼でなかったのはこの状況に対する彼のユーモアによる皮肉だった。

「なっ……卿らがあの反乱軍の?」

 レルシェルは驚いて二人を見た。無論彼女は敵の司令官と参謀の名は知っている。この数カ月で瞬く間に広がった二人の名だ。

「その反乱軍の二人が何故ここに?」

 二人の行動はレルシェルの理解の範囲の外だった。敵の司令官と参謀が相手の陣の真ん中で不埒な闖入者となっているのか。

「あなたに興味があるからだよ。王都で英雄となり改革の旗手ともいえる噂のレルシェル・デ・リュセフィーヌと、会って話してみたくなった。あなたの都合を聞かなかった非は詫びよう。敵味方の関係ではこうでもしない限り直接会うのは難しいからな」

 リシェールは屈託のない笑みを浮かべて言った。その表情の無邪気さにレルシェルは毒気を抜かれた。唖然とした表情でリシェールを見る。

「もっとも、このような状況でお会いするとは思いませんでしたが……」

 アルノは視線を逸らして言った。

 その言葉にレルシェルは自分の状況を思い出した。未だ彼女はタオル一枚の半裸であり、素肌の大半を晒している状態だった。

 再び彼女の顔が真っ赤になる。

 彼女は声にならない叫び声をあげ、二人を力づくで天幕から追い出した。

 息を荒くした彼女は必死で心を落ち着かせる。

「そこの二人!」

 レルシェルは天幕越しに声をかけた。天幕から叩き出された二人は頭を掻きながら彼女の声を聴いた。

「私と話がしたいと言うのだな。よかろう……少し待ってくれ。心配するな、人など呼びはしない。私も卿らに少し興味がある」

 レルシェルの声は落ち着いたものだった。天幕の外の二人は互いに顔を見合あわせ頷いた。



「待たせたな」

 レルシェルは軍服に着替え、金の髪を後ろでまとめて天幕を出た。

 天幕の外にいた二人は思わず彼女の姿に見とれた。夜目にも美しい少女が整えられた軍服に身を包み、凛然と立っている姿は有無を言わさず人を惹きつけるものがあった。

「あそこに行こう。ここでは誰かに見られては卿らはまずいだろう?」

 レルシェルは前方に見える林を指差した。確かにリシェールたちは部外者も部外者、敵の司令官が陣の真っただ中にいると知れ渡れば彼らも無事ですまない。

「いいのか? 暗がりに女性一人で」

 リシェールは冗談めかした口調で言った。

 レルシェルはそれを鼻で笑うと、腰の剣を揺らした。

「その時はこの剣で相手をするだけだ。私が女一人、この戦場にいる訳を知ることが出来るぞ」

「……それは勇ましいことで」

 レルシェルの返答にリシェールは肩をすくめた。

 三人は林の側に馬で移動した。王都旅団の野営地からも外れ、ここには天然の明かりしかない。月が彼らをおぼろげに照らしていた。

「さて、リュセフィーヌ将軍。まずは先ほどの戦いお見事。戦いぶりもそうだが、まさかあなたの軍が戦場に割り込むとは我々の戦略にも全くなかった見事な奇襲だ。見事にやられたよ」

 リシェールはそう言ってレルシェルを称えた。その声には裏が無いように思えたが、レルシェルには彼の意図はつかめなかった。

「私の戦力が卿らの戦略にまったくなかったというのは嘘だな。そうでなければ卿らがマコンまで進出して野戦を挑んだ道理がない」

 レルシェルは腕組をして言った。

 リシェールとアルノは驚いたような顔で感心した。特にアルノは深く感銘を受けた。アルノはレルシェルの戦略眼に興味を持ってかまをかけた。

「何故そう思うんです?」

「幾つか理由はある」

 レルシェルは二人の様子を伺って言った。彼ら値踏みされているのは彼女も承知の上だった。

「一つは卿らは味方を必要としている。そのためには卿らは守りきるのではなく、勝ち続けなければならない。勝利によって勢いを維持し、かつ賛同する同士を募ることが出来る。レオンに引いて守るのであれば、採ることのできる戦術は増えるであろうが、消極的である印象は拭えず、味方を得るには華々しい勝利のほうが効果的だ」

 リシェールとアルノは頷いた。レルシェルは後ろ髪を払うと言葉を続けた。

「次にレオンから離れたマコンに戦場を選んだ理由は、私の戦力を除外したかったからだろう。すでに王国軍主力と卿らの戦力は大きな差があったが、そこに私の王都旅団が加わればさらに戦力差が広がる。各個撃破もしくは主力に対して戦力と戦意の漸減が目的であろう」

 レルシェルは二人の様子から自分の考えが間違っていないことを知り、満足そうに微笑んだ。

 なお、一方でオーギュストがレルシェルを待たずマコンで戦端を開いたことはレルシェルは否定的に思っていない。王国旅団を加えずともオーギュストの持つ戦力はリシェールたちの倍であり、戦端を開くに十二分な条件だといえる。問題点は派手な勝利を目指し、奇策を講じたことによりそれを逆手に取られたことにある。正攻法でぶつかり合えばやはりリシェールたちは撤退を余儀なくされただろう。

「だが、私は仲間はずれにされるのが嫌いなんだ。無理やりパーティに駆けつけたんだ」

 レルシェルはにやりと笑って言った。

 リシェールとアルノは目を合わせて互いに肩をすくめた。

「なかなかお人が悪い。斥候を飛ばして戦場を把握していたのでしょう?」

 アルノの声にレルシェルは目で肯定した。

 レルシェルは戦場に着く以前から頻繁に斥候を飛ばし、敵味方の情勢をきめ細やかに手に入れていた。マコンでの会戦が確実となり王都旅団がそれに間に合わないことを知ると同時に、味方の布陣に危険性を感じた彼女は騎兵のみを本体から切り離し、その高速性を持って戦力の一部を戦闘に間に合わせたのである。王国旅団の騎兵戦力がさほど出なかったことはリシェールたちにとって幸運だったともいえる。

「他にも卿らの内部には細かな理由はあるだろうが、大きくこの二つが今日の戦いの理由だな」

 リシェールは感嘆の息を漏らした。

 確かな戦略眼、勇敢で的確な前線指揮は十八歳の娘とは思えない。しかも彼女は今回が初陣なのだ。それに加え王都では統治能力はすでに評価されている。無論それらは彼女の能力のみがなせることではない。彼女の部下が彼女を信頼し手足となって動いているからこその成果だ。十八歳にしてそれを成し遂げているのだから、彼女の人望は計り知れない。

「それで……卿らは私と話がしたかったのだったな。戦略について談義に来たわけではないだろう?」

 レルシェルの言うことはもっともでリシェールは頷いた。リシェールは一度アルノに目配せをする。アルノはすばやく頷いた。

「単刀直入に言おう。あなたを仲間に引き入れたい。我が陣営に加わらないか?」

 リシェールの言葉にレルシェルは軽く驚いた表情を作った。だが、さほど驚いたわけではない。なんとなくではあったが、彼女はそれを予測していた。彼女の精神は慢心と程遠い位置にあったが、彼女は自身がある程度の評価を受けていることを自覚していた。過大評価されていると彼女自身は思っていたのではあるが。

 レルシェルは軽く笑って言った。

「これほど真っ直ぐな調略もないな。私は簡単に旗を変える様な人間に思われていたと言うことか?」

「いや、そうは思わない。だが、あなたが我ら革命勢力に加われば、民衆の世論は一気に我らに傾く。革命は時を待たずして成立するだろう」

 リシェールは強く言った。彼らは共和制への革命を最終目的にしている。フェルナーデ王家を見限り、特権階級の搾取から民衆を救うことを旗印にしていた。

「それにあなたは旗と言ったが、あなたと俺たちが掲げている旗はそう変わらないと思うのだがな」

 リシェールの言うことは陣営の話ではない。掲げる目標のことだ。レルシェルもまた王都で改革派の最右翼として見られている。困窮する民衆を救うという目標に対してレルシェルとリシェールらでは方法は違えど、目指すところは同じであった。

 レルシェルは目を細めた。

「私は評価されているのだな」

 リシェールは頷いた。

 しばらくレルシェルは沈黙した。そしてリシェールを真っ直ぐに見て言った。

「だが、それは受け入れられない。私は革命を善しとしない」

 静かだったが鋭い声だった。

 リシェールは眉を潜めた。

「何故だ。王への忠義のためか?」

 レルシェルは小さく頭を横に振った。

「もちろん、我がリュセフィーヌ家は王国開闢以来の臣だ。忠義は誰よりも深い。だが、それだけではない。革命に至れば王国各地で様々な血が流れるであろう。その血は貴族や将軍だけのものではない。民衆が戦いに巻き込まれ血を流すことになる。たとえ時間がかかろうとも争いなく改革を進めるべきだ」

 レルシェルの言葉にリシェールは彼女が安定した時代の君主や領主であれば、心優しき名君になれただろうと思った。

「民衆を巻き込みたくない、か」

 リシェールは低く呟いた。

「民衆を巻き込んで何が悪い」

 リシェールの鋭く言った。その鋭利さにレルシェルは大きな目を見開いて驚いた。

 民衆を巻き込むことに彼は罪悪を感じないというのだろうか。

「民衆は権利と自由、そして富を欲しがっている。だが、それを自らの手で勝ち取ろうというものは少ない。長い間権力者に飼いならされてきた結果だ。あなたのような善良な権力者による改革も良いだろう。一時は民衆を救う。だが、それではやはり飼いならされているに過ぎない。権利、自由、富、欲しいのであれば自らの手で勝ち取らねばならない。欲しければその手で掴むべきだ。たとえ血と汗に塗れても。与えられたもので満足しているのでは幼子と同じだ」

 リシェールは鋭い目つきでレルシェルに向かって言った。レルシェルはリシェールの言葉に驚きの表情のまま言葉を返せずにいた。

 大貴族の娘として生まれ、英雄として騎士団長に就任したレルシェルにとっては、民とは与えるものであり、従ってくれるものだった。彼らは守るべきものであり、弱きものであり、自ら剣を取って立ち上がる存在ではなかった。

「欲しいものというのは自ら手に入れてこそ、本当の価値がわかるものだ」

 リシェールは静かに言葉を締めくくった。

 レルシェルは愕然と彼の言葉に立ちすくんでいた。

 リシェールは彼女を見つめ続けたが、その彼の方を叩いたのはアルノだった。

「彼女には理解が出来ないかもしれない。それは彼女が悪いわけじゃない、リシェール」

 アルノの口調はリシェールを慰めているかのようだった。

 アルノはレルシェルを見ると言葉を続けた。

「それでも私たちはあなたに来て欲しい。改革派で民衆の支持があるあなたが革命に加われば、それこそ全土で民衆は立ち上がり、現王権は崩れ去る。そうすれば戦いも最小限で済む。それに……あなたには悪いが、現状の王権で王国の復活はありえない。根から腐ってしまった木は倒れるしかない」

 レルシェルはアルノの言葉を聞きながら、視線を地面に落としていた。金色の髪が落ち表情を隠す。月の光では彼女の表情を読むのは困難だった。彼女はその闇の中、唇をかみ締めていた。

 彼女の脳裏には一人の少年の姿があった。出会った頃のフェデルタだった。

 ヴァルディール戦役で難民の子として連れてこられたその少年の瞳は暗く、表情は冷たかった。家も家族も失い、感情さえもなくしてしまったようなあの表情をレルシェルは覚えている。

 戦乱はあのような子供をいくつも生んでしまう。民衆を巻き込めば、あのときのフェデルタのような子供が溢れ返るだろう。それは彼女にとって許しがたきことだった。

「レルシェル様!」

 レルシェルたちから見てやや小高い丘から声がした。丘の上には小さなざわめきとたいまつの炎が幾つかうごめいていた。声の主はアンティウスで、天幕での異常を知った彼は慌ててレルシェルを捜索していた。

「ちっ、時間をかけすぎたか」

 リシェールは舌打して言った。アルノも首を横に振ってため息をついた。

 二人は馬に跨り逃走しようとした。

「待て」

 レルシェルは顔を上げて言った。

「私は卿らの考えには共感できない。民衆を巻き込んで革命を成す事は私には無理だ。多くの罪のない者たちが血を流さなければならないとすれば、それは私の目指す道ではない。綺麗ごとかも知れないが、民を守るのが騎士たる私のとるべき道だ!」

 レルシェルの言葉は強かった。翡翠の瞳が真っ直ぐとリシェールを捕らえていた。月光が反射した瞳は純度の高い宝石のように透明で、彼女の言うきれいごとが言葉だけでないようだとリシェールは錯覚した。

「なるほど、それはそれで一つの正義だな」

 リシェールは納得したような表情で軽く笑った。レルシェルは大貴族の娘でリシェールは平民の出自である。考え方に天と地の差があってもおかしくない。だが、双方の理屈と正義はレルシェルもリシェールも理解していた。

 二人の間に笑みの交換が生じた。共感は出来ない、同じ道を行くこともできない、だが、二人はお互いを理解できた気がした。

「レルシェル様! ご無事ですか?」

 アンティウスは配下の将兵を待機させ、単騎でレルシェルたちに近づいた。万一レルシェルが人質にとられていた場合、敵を刺激させないためだった。

「アンティウス……勝手に陣を抜け出してすまない。ちょっと客人が来ていたのでお相手をしていたところだ」

 レルシェルは肩の力を抜いて言った。

「客人? こんな夜更けに?」

 アンティウスは怪訝そうな表情でリシェールたちを見た。

 レルシェルはやや悪戯っぽい表情を浮かべるとリシェールたちを紹介した。

「反乱軍の司令官のその参謀、リシェール・ヴィルトール殿とアルノ・デ・トリュフォー殿だ。卿も名前は知っているだろう?」

 レルシェルのか皮肉っぽい口調にリシェールたちは軽く噴出した。もちろん、表情を白黒させて驚いたのはアンティウスである。

「なっ、何故その二人がこんなところに……」

「どうも私に興味があるようで、私をスカウトにきたらしいのだ」

 レルシェルは緊張感のない声で言った。もちろん意図的にだ。

「くっ、どういうことだ!」

 アンティウスは腰の剣を抜こうとした。だが、それをレルシェルが手で制した。

「待て、アンティウス。話は決裂したよ。私と彼らでは行く道が違いすぎた」

「しかし!」

 アンティウスは怒りを露にして叫んだ。

 それを見てリシェールが微笑んで言った。

「リュセフィーヌ殿。あなたはよい部下をお持ちのようだ。この時代、主君に忠義を尽くす騎士は貴重だ。大切にされよ」

 レルシェルは振り向いてリシェールを見ると誇らしげに頷いた。

「ああ、私には過ぎたる部下だ。このアンティウスが私の傍にいる限り、私はどこまでも戦える気がするのだ」

「レ、レルシェル様?」

 レルシェルの言葉に裏はない。だが、アンティウスは思わずその言葉に動揺した。

 リシェールは二人を見て大きく笑った。

「深夜の無礼、申し訳なかったリュセフィーヌ殿。今夜は楽しい夜だった。次会うときは戦場かもな!」

 リシェールはそう言うと馬をあおり南方に向けて走らせた。

 レルシェルたちは視線で彼らを追った。リシェールたちは一度も振り返らずその場を立ち去った。レルシェルに微塵の未練もないかのように。


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