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9話

「力を貸せだと? 断ると言ったらどうする?」


「それならば大人しく引き下がりましょう。あなた方と敵対しても我々には一つも得はないでしょうから」


 あっさり引き下がると口にする。もしかしたらこっちを油断させるためのブラフかもしれないがこの爺さんの態度を見る限りあながちウソではなさそうだ。


「どうして俺達の力を借りようとするんだ?」


「先ほども申しあげました通り先ほどの戦いの手際に興味を持ちました。愛宕様はこの国に巣食う膿を討つために動いていますが敵はどんな卑怯な手を使ってくるかわかりません。そこであなた方の知恵をお貸ししていただきたいのです」


「それは僕らがずる賢い――いや卑怯だから相手の手の内を読むことができるということなのかな? 目には目を歯に歯をって感じで」


「どう捉えるからはあなた方次第です」


 まだらの皮肉に信三はのらりくらりと受け流す。この爺さんも喰えないな。……ってかこの世界にもハンムラビ法典みたいな言い回しがあったんだな。


「どうするんだい大和? 僕は君の許嫁だから君の意思に従うことにするよ」


「なんだよ気持ち悪いな。いつからお前はそんな従順になったんだよ」


「気持ち悪いと失礼だな。僕らは将来を誓い合った仲なんだから運命をともにする覚悟ぐらいあるさ」


「……」


 俺はまだらをジト目で観察する。


 相変わらず表情の読めない顔をしてやがる。表情からじゃ本気で言っているのか何か裏があるのかどうかも読めないな。


「おや? お二人はそう言う関係でしたか」


「そうだよ」


「違うから」


 信三の言葉を肯定するまだらを俺が否定する。


「……ふむ。どうやら複雑な関係のようで」


 信三は俺とまだらの二人の顔を窺いながらそうコメントする。


「それで、力を貸していただけますか?」


「……」


 どうするか。


 正直この国に巣食う膿を討つためとか言われてもピンとこない。俺がこの国について下調べていないからわからないってのもあるけど、この国はそんなにひどい状況なのだろうか?


 けどこいつらに手を貸すとなるとまこちゃんや栞那を巻き込むことになる。相手がそんなに卑怯な連中ならまこちゃんや栞那を人質にしてくる危険性だって出てくるからな。


 そう考えると俺一人で答えを出すわけにはいかない。


「今は答えることができない。少し考える時間をもらえるか?」


「そうですか。でしたら明日の明け方までに答えをいただけますでしょうか? そちらも後処理で大変でしょうから」


「助かる。明日の明け方になったらあっちの方角にある村まで来てくれ。考えをまとめておく」


「わかりました。では明日の明け方になったらそちらまで赴きますので色よい返事を期待しています」


 と信三は言い残し森の奥へと姿を消す。


 信三の姪の時雨も一緒に姿を消すがその表情は不満さが滲み出てていた。俺らを仲間にすることは納得いってないと物語っていた。ということは俺達を勧誘したのはあの爺さんの独断ってことか。


 ともかく俺達は盗賊に捕まった人達が落ち着くまで待ってから村に戻ることにした。







「叔父貴!」


 大和達から別れて森の中をしばらく歩いたところで姪の時雨が不服そうに話しかけてくる。


「どうかしましたか時雨?」


 一方の信三はいつも通り柔和な笑みを浮かべて聞き返す。


「どうかしたやないやろ! 何であないやつらを仲間に引き入れたりするんや!」


「まああなたの言いたい気持ちはわかります。ですが愛宕様にはあの方々の力が必要なのですよ」


「んなこと言われてもわからへんわ! たかだか盗賊を倒したぐらいで過大評価し過ぎや」


「確かにたかだか盗賊ごときを倒したから仲間に勧誘したわけではないですよ。時雨はあの男の傍にいた少女の顔に見覚えはありませんか?」


 信三に言われてまだらの顔を思い出すが時雨には思い当たらず訊ねる。


「あの薄ら笑いを浮かべたやつがどうかしたんか?」


「私の記憶が確かならあの人物の顔は蛇骨の国のまだらという人物で間違いがないはずです」


「まだらやて! まだらって言うたら蛇骨の国の天才軍師やないかい」


 時雨もまだらと言う名の人物に心当たりがあった。自分とあまり歳が変わらないのに軍師として見出され呪術師としても名が知れた人物だ。


 そしてまだらという人物は歳に不相応なほどふてぶてしく悪辣な手を使う人物だという噂も聞いたことがあった。


「どうしてそんな大物がこんなところでちんけな盗賊退治なんてしとるんや?」


 蛇骨の国の敗戦後その軍師がどうなったかは戦後処理のごたごたで情報が錯そうし、まだらの婚約についても公には知られていない。


「さあ、それについては私も推測しかねますね。蛇骨の国が敗戦したことにより仕官先を求めているかと思いきや、そばにいた男を許嫁と言ったり考えが読めませんでしたからね。やはり天才軍師として名を馳せるだけあるということでしょう」


「許嫁って言うとったけどほんまやろか?」


「どうでしょうね? 我々に女性という認識を与えて実は男という狙いがあるかもしれませんよ」


「確かにあのなりなら男か女かわからへんもんな」


 時雨がまだらの身体つきを思い出しながら納得するが、すぐに新たな疑問が浮かぶ。


「けどそないなことしてどうするんや? 性別を誤魔化してどうするつもりなんや?」


「……私もわかりません。あの場で性別を誤魔化して何の得があるのやら。ですがあの天才軍師なら何か意味があるのやもしれませんね」


「あなどれないってことやな」


 まだらの思惑とは関係ないところでまだらを評価する二人。


「けどええんか? まだら言うたら悪辣な手を使うっていう話やで? 味方になったら心強いかもしれへんけど愛宕様に汚名がかかったらどうするんや?」


「その時は私が全ての汚名を被り愛宕様には一切害を及ばないようにするつもりです。それが裏切り者を出した我々一族の務めでしょう」


「……せやな」


 時雨は奥歯を噛み締め辛辣そうに返事を返した。


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