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6話

 村人に連れられて村から歩くこと三〇分。俺達は森の中にいた。村人曰くこの先に盗賊達の隠れ家あるらしい。


「たったこれだけで本当に盗賊を倒せるだべか?」


 村人の田吾作は俺、栞那、まこちゃん、まだらの四人を見ながら不安そうに訊ねてきた。


 確かに俺以外は全員女性で田吾作が不安に思うのももっともだ。おまけにケガで戦力にならない少年――伊織も一緒なのだから。


「倒すだけなら大丈夫だ」


 俺と栞那の二人なら盗賊が三〇人程度いても楽勝だろう。それにまだらの忍びの珠もいるしな。問題はどうやって人質を傷つけずに救出するかだな。


「そういえばお前の呪術ってどんなことが出来るんだ?」


 森を歩きながらまだらの使う呪術について気になったので訊ねてみる。まだらがどの程度の戦力になるのかも考慮しないとならないしな。


「呪術かい? それなら君が十分知っているだろう」


 と答えるまだら。確かに俺はこいつの術をさんざん喰らって手こずらされたからな。


「あの動きを止めるやつとかだろ。不動金縛りの術ってやつ。それ以外だよ」


「あとは身体能力をあげたりとかかな。呪術って言っても実際は暗示みたいなものだからね」


「暗示ねえ?」


 あの身体を拘束する術も自己暗示の一種ということなのか。催眠術みたいなもんだろうか? プラシーボみたいな感じで思い込みを利用するみたいに。


「けどそこまで俺に教えてよかったのか?」


 幽霊の正体見たり枯れ尾花みたいに催眠術だとわかったら効果が効きにくくなるんじゃないのか?


「言ったはずだよ。僕は君の許嫁だって。許嫁の味方をするのは当たり前じゃないか。……と言っても正体を教えたからといっても呪術が完全に効かなくなるなんてことはないけどね」


「ふーん」


 こうもあっさり呪術の正体を教えたりいまいちこいつの狙いがわからないな。こいつの言葉を素直に信じるなら許嫁だから協力的ってことなんだろうけどその言葉をすべて信じていいわけじゃないし。


「あーだけど今の僕は呪術が使えないからあてにしない方がいいよ」


「は? どういうことだよ」


「これだよこれ」


 そう言ってまだらは首を指差す。正確には首に巻きつけられた首輪だ。


「それがどうかしたのか?」


「これは術を封じる封具と言われるものさ。これをつけられると術は使えなくなるんだ」


「だったらとればいいだろ?」


「これはつけた人間か作った人間しか外せないんだ。つけた人間は前の戦で死んじゃったからね。だから僕は今呪術が使えないのさ」


 困ったよと言わんばかりに肩をすくめるまだら。


「ってことは戦力としてはあてにならないってことだな」


「申し訳ないけどそう考えてもらって構わないよ」


「わかった。あんまり無理はするなよ」


 まだらとの会話が一段落つくと田吾作が盗賊の隠れ家を指差す。


「あそこだべ」


 田吾作の指差した方角には洞窟があった。あそこが盗賊の隠れ家のようだ。まあ三〇人ぐらいの規模になると掘っ建て小屋にも入りきらないし、屋敷のような建物だと目立つだろうしな。かといって野営するにしても今の時期は寒すぎる。となると隠れるのならあれぐらいの洞窟の方が何かと便利なのかもしれないな。


「さて、どうやって助け出すか……」


 洞窟の前に立っている見張りは一人だけ。しかも気が緩んでいるのか眠いようで少し意識が飛びかけている。この様子なら奇襲をしかけてすぐに寝かせることができる。


 洞窟の中の構造はわからないが洞窟の中で戦えば乱戦になるだろう。それだと人質の命も危ういから愚策だな。


 理想は洞窟の外に盗賊どもの連れ出して戦うのが一番だけど……。


 どうやって攻めようかと考えていると俺の袖を誰かがクイクイっと引っ張る。誰かと思ったらまだらだ。


「僕に策があるんだけど聞いてみない?」


「策?」


「呪術は使えないけど僕は天才軍師だからね」


 そういえば俺達はこいつの考えた策の上に踊らされたこともあったっけな。


「はいはい。で、その策ってのはどんなんだ?」


「んっとね」


 そう言ってまだらは俺の耳元に口を近づけて話す。


「ほうほう、それならこうした方がいいんじゃないか?」


 まだらの意見を聞いて俺も意見を出す。


「うん、確かにそっちの方が効果的かもね。労力も少なくて済むし」


「あの二人が策を練ったとなると盗賊の方に同情したくなるな」


「盗賊さん達が一方的にやられるのが目に見えますね」


 俺とまだらが話し合っていると栞那とまこちゃんがまだ見ぬ盗賊達を憐れんでいた。こらこら、敵に同情するんじゃない


 まあそんなこんなでまだらと策を練り合わせ終えるとその策をみんなに説明する。


「……うーん。なんというか地味だな」


「確かに地味ですね」


 説明を終えると栞那とまこちゃんがそんな評価をする。地味って言うなよ。堅実と言ってくれ。


「なんというか大和のことならもっとど派手なことをやると思ったんだが……。例えばほら、あの洞窟を爆破するとか」


「それ人質も確実に死んじゃうからな」


「わたしも大和さんの逸話を聞いていたのでもっと予想の斜め上を行くことをやるんだと思ってました」


「なに俺の逸話って?」


 そんなのあるの? 初耳なんだけど。


「え? 知らないんですか? 敵を城に押し込めて容赦なく火あぶりにしたという話とか有名じゃないですか」


 確かにそんなこともやったけどそれだけ聞くと俺が鬼畜みたいな感じじゃん。あれは勝つために仕方なくで……ってかそんな話が有名になってるんだ? そんなことが蛇骨の国の連中に知られたら怨みを買うだけ……はっ! こんな陰険なことをするとしたら紫苑のやつしかいない。俺に蛇骨の国の憎悪を集めて責任を押し付けるつもりだな。許せん。石とか投げられたらどうするんだ。


 それとなんか伊織と田吾作が俺から距離をとってるんだけど何で?


「あとは神鳥に乗って大空を飛んだって言う話もありますね」


 あれは飛んでたんじゃなくてゆっくり落下してたんだけどなぁ……。今思うとかなり無茶をしたと思う。……伊織と田吾作が俺を化物でも見るような目で俺を見ているんだけどどういうことだ。


 まあいい。とにかくやることは伝えた。後は行動に移すのみ。


「さて、盗賊退治開始だ」

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