21話
「処刑の日……ですと……」
まだらの言葉に信三がまさかと目を見開いて驚く。信三だけでなく他の二人も同様に驚いていた。まだらはそんな三人を差し置いて淡々と語る。
「そうだね……処刑場所だと警備も厳重でとてもじゃないけど愛宕家の当主を奪還できる余裕はないだろうからね。だとしたら一番警備が手薄になる移送中が一番いいんじゃないかな。大和はどう思うんだい?」
「……俺としてもそれが最良だとは思う」
最良だとは思うが最善だとは思えない。
まだらの言う通り城に潜入して救出するよりもそっちの方が遙かに成功率は高いだろう。
公開処刑となれば城内ではなく城下町のどこか……広場みたいな場所で行われるはずだ。
さすがに処刑される場所は処刑を阻まれるのを警戒して警備は厳重になるかもしれないが、その分移送中なら成功率は高いかもしれない。
もちろん敵もそれを警戒して移送を強化してくる可能性もなくはないが、城下町まで出てくるのであれば手の打ちようもある。例えば囮を使って敵を分断して注意を逸らしたり、やり方を考えれば確実に亜希を助け出せるかもしれない。
だけど……。
「そんな悠長に処刑日まで待っていては亜希様の御身に何かあったらどうするのですか!」
そうだ。亜希の命を助けられるかもしれないが亜希の身体の無事は保証できない。拷問とかされてどんなひどい目にあっているかもわからないのだ。だから助けるのなら一刻も早く助けるべきなのだ。
「せやで! 亜希様の命は無事かもしれへんが男共の慰みものになっとったらどうするんや」
慰みものって……。可能性としてはあるかもしれないが女の子の口からそう言われると思わなかった。女の子だけあってそういう想像が豊かなのだろうか?
いや……この世界じゃそういうことも当たり前にあるのかもしれない。人を殺すことだってありふれているのだからそういうことが行われるのも珍しいことじゃないのかもしれない。そう考えるとなんとしてでも早く助け出さないといけないと思う。
「そうです! 亜希様の初めては私がもらう予定なのにどうするつもりなのですか!」
……この里沙って子の頭は大丈夫だろうか? さらっと妙なことを言っていたが頭に百合の花でも咲いているのか?
いや……この世界じゃそういうことも当たり前にあるのかもしれない……いやないな。その証拠に周囲もちょっと引いている。
「ごほんっ。確かにまだら殿や九十九殿が申すように処刑される日が一番確実に愛宕様を救出できるかと思いますが、我々としては愛宕様の御身も心配なのです」
妙な空気になったのを察して信三がわざとらしい咳払いをしながら話を戻す。
「おこがましいお願いかもしれませぬがそのことを踏まえたうえでもう一度考えを練ってくれませぬか」
信三の頼みにまだらはやれやれとあきれるようなしぐさをしながら言う。
「あのね。そうは言うけれど確実を期すなら処刑日まで待った方が一番いいに決まっている。それを無理して城に押しかけて救出しても愛宕家の当主を人質として使われでもしたらどうするんだい? 最悪その場で始末される可能性だってある。別に彼らにとって愛宕家当主の首なんてそれほど価値のないものだろう。公開処刑だって一種の見せしめだ。別にその首が誰だろうと構わないんだよ。慰みものになろうが生きていれば十全だ。殺されでもしたらそれこそ本末転倒なんじゃないかい?」
まだらの言うことは正しい。
正しいが俺としては出来ることなら今すぐにでも城に殴り込みをかけて亜希を助けに行きたい。
「とは言っても僕が最終的に決めるわけじゃないし、全ては大和に任せるよ」
「俺にか?」
「そうだよ。僕は君の決定に従うと約束したからね。君がどんな選択をしようとも僕なりに最善は尽くすつもりだ。もっとも、君なら僕が思いつかないようなことを考え着いてやってのけるかもしれないけどね」
「買い被り過ぎだ」
そんなことが思いつくのなら最初から提案している。
俺の考えもまだらが考えたことと似たようなものだ。
城からの救出を諦めて処刑日に機を見計らって救い出すことぐらいしか考えつかない。
「で、どうするんだい? 無理をしてでも城から救い出すのか、それとも処刑日まで待って万全を期して救い出すのかどっちにするんだい」
選択を差し迫るまだら。他の三人も俺の返答を待っているのかジッと見据えてくる。
「……」
どうする?
無茶をするか? 万全を期して救うか。
「……すまん。まだ決められない。まだほかにも手立てがあるかもしれないからいますぐ答えを出すわけにはいかない」
「ふーん。そうかい。それもありだろう。けど時間がないことには変わりはない。悩めば悩むほど選択肢は狭まるし万全を期すこともできなくなるからね」
「わかっている。明日には答えを出せばいいんだろ」
「そうあって欲しいね」




