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20話

 三人から城の作りの話を聞く限りだとここの城――天竺城の郭は梯郭式ていかくしきと呼ばれる作りで出来ている。


 本丸を海に面した北側に配置し、その周囲を囲う様に二の丸が配置され、その二の丸を囲う様に三の丸が配置されている。そしてそれぞれの丸の間には海から海水を引いてその海水が堀に流れ、外濠、中濠、内濠と呼ばれている。


 三の丸にある外濠は海から直接船が出入りできるようになっているのだとか。そのため外濠は横幅がかなり広く二〇メートル以上あるらしい。それに伴って橋も可動式らしい。


 そして外から三の丸に行くには橋が六カ所、三の丸から二の丸まで行くには橋が三カ所、二の丸から本丸に行くには橋が一カ所しかないらしい。


 つまり中に進めば進むほど侵入経路が減っていって敵に見つかりやすくなると言うことだ。だが逆に考えれば中から出るのなら脱出経路は増えるわけでもある。


 亜希が捕らえられていると予想されるのが二の丸らしい。三の丸にも地下牢はあるが、ここ何十年かはろくに使われていないらしいので二の丸で間違いないようだ。


 そんでもってその地下牢があるところが二の丸の中でも本丸寄りにあるらしく侵入するのは難しいとのこと。


 亜希を助けるためには天竺城へ侵入して三の丸を抜け二の丸のさらに進んで本丸の手前まで入り込んでから脱出をしなければいけない。だがそんなことをしていたら亜希を助ける前に殺されるのが関の山だ。どう頑張っても侵入してから救出する前でに一時間以上かかる。


 見つからず侵入できればいいのだけど……。


 なんて考えていたらまだらが天井を見上げてくノ一の少女の名を呼ぶ。


「珠」


「……」


 まだらに呼ばれて天井からスッと下りてきた珠。どうやら天井裏に潜んでいたみたいだ。神出鬼没だな。


 珠の登場に他の三人が驚いた表情を浮かべながらまだらの顔を見る。


「彼女は僕の忍びだ」


 まだらは説明がめんどくさいのかそれだけ言うと珠へ話しかける。


「君なら天竺城の二の丸まで誰にも気づかれずに行くことは可能かな?」


「……」


 静かに首を横に振る珠。


「そっか。君で無理なら無理そうだね」


 とまだらは一人納得する。どういうことなのか俺らに説明する気はないようだ。けど専門家がそう言うのだからそうなのだろうか?


 少し納得しかねるけどこれだけの城がたやすく侵入できるようにできているわけがないか。それなりに忍び対策とかもしているはずだ。


「それなら海から侵入することはできないのか?」


 本丸から侵入してそこから一気に脱出。それなら敵が亜希に何かする前に迅速に行動すれば無事に救出することができるかもしれないが……。


「難しいんじゃないかな。海に面している以上そのことを考慮して城を建てたはずだね。なんたってこの城は築城の名手で名高い明石白築あかししろつくが築城したわけだし」


 と言ってまだらは肩をすくめる。


 誰だか知らないがその明石って人物はそれなりに名の知れた人物のようだ。他の三人はそうだと言わんばかりに頷いている。珠は相変わらず無表情だから何を考えているかわからないが。


 ともかく海から侵入するのも難しいってことか。


 まともに侵入することもできず海から侵入することもできずどうしたらいいもんか……。


「うーん、そうだな。それならいっそのこと城から救出するのは諦めた方がよさそうだね」


「なっ! 何を馬鹿なことを言っているのですか! 亜希様を救出するのを諦めるなんてありえません」


「せや!」


 まだらの意見に反論する里沙と時雨。この二人は仲が悪いみたいだけど亜希を助けたいって気持ちは本当なのだろう。


 一方まだらそんな二人を見て肩をすくめておどける。


「やれやれ、僕は城から救出するのは諦めたの方がいいとは言ったけど救出自体を諦めるなんて一言も言っていないんだけどな」


「つまりどういうことでしょうか?」


 と信三も気になったようですかさず訊ねる。


「つまり守りの堅い城を攻めるよりも守りの手薄な時に攻めた方がまだいいかと思うんだよね」


「守りが手薄な時といいますと? あの城内にいる以上亜希様が地下牢から出されることはないと思いますので手薄になることはないかと」


「何を言ってるのさ。あるじゃないか彼女が城を出る機会が一度だけ」


「それはいったい……?」


「彼女の処刑が行われる日に決まっているだろ」


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