僕の主の昔を知る人
「……」
「虚空さんは、どんな風に紫様と知り合ったんですか?」
「俺が知り合いになったのは…俺がまだ人間だった頃だな」
竹林に入ってすぐに、質問をぶつけてみると…虚空さんはそんな風に答えた。というか…
「元々人間だったんですか?」
「ああ。…師匠が居てな、妖怪退治の手伝いをしていたんだが…風の噂にある妖怪が力を付けている、と聞いたんだ」
「…それが紫様だったんですか?」
「そういうことになるな。しかし…師匠は妖怪退治という仕事をしながら、妖怪を全て倒すみたいな事はしない人だったんだ」
「…え?」
「基本的に話し合いで解決をするような立場だな。妖怪だって生きている、無闇に殺すような事はしたくない。…思えば師匠が妖怪を倒す時は、大抵が相手が自我が無い場合か、完全に自我を失っている時くらいだったか」
話している間に、虚空さんはポケットからナイフと林檎を取り出して…切れ目を入れていた。
「食うか?」
「あ、はい。いただきます」
一切れ貰って、齧ってみる。とても甘かった。
「美味しいですね…これ、どこで?」
「俺の住んでいる場所は林檎がなる木が沢山あるんだ」
「へぇ…」
「…さて、話の続きだ。噂の場所に行ってみると、確かにそこには妖怪が居た。大きな屋敷に藍と二人で住んでいたよ。まだ藍を式神にしたばかりで、強制的に手伝いをさせられているような感じだったな」
「そうなんですか…藍様でもそんな時期があったんですね…」
「…藍を式神にするのに相当苦労したようで、紫はかなり弱っていてな。…何故か俺と師匠で少しの間住み込みで回復を手伝ってやったんだよ。その頃の話をたまにすると、結構恥ずかしがるんだよな。少しその辺の話をしてやったら、紫は面白い反応をするぞ」
「え、なんでですか?」
「…んー、紫に直接聞いてだっ!?」
「!?」
突然金属製のタライが落ちてきた。ふと上に目をやると、スキマが閉じるところだった。
「くっそ…そうか、お前あいつの従者だし…気まぐれでこっちを観察してたりするんだな…しかし、これは…やっぱり恥ずかしいみたいだな」
虚空さんは苦笑しながら頭をさすっている。…いったい何があったんだろうか。
「…あれ、なんかいい匂いがしませんか…?」
「ん…これは…ほう、今日は屋台をやってるみたいだな。少し寄って行こうか」
…こんな迷うような竹林の中で、屋台?




