そんな素振りは無かった
自分から見て、右側からの斬撃を受け止めつつ、左手から弾を撃つ。近距離での戦いなので、射程は極めて短い。
妖夢さんはそれを避け、更に斬撃を加えてくる。
(思った以上に…速い。注意してないと攻撃がどこから来るか分からなくなる)
姿を目で追うのは難しいほどに、妖夢さんの速度は上がっていた。
「黄、何突っ立ってるのよー」
「ふふ、妖夢も結構本気で戦ってるみたいね〜」
…おそらく紫様と幽々子様には、妖夢さんの姿が見えているんだろう。妖夢さんだけが動いて、僕が止まったままいなしているだけ…という構図が目に映っているんだろう。
「仕方ない…ふっ!」
「くっ…!?地面を?」
地面を殴りつけて、敷かれていた砂利を巻き上げて姿を見えにくくする。高速で動いている分、砂利がぶつかるのも軽いダメージにはなるだろう。
「捉えた!」
「くっ、しまった…!」
その間に、僕が後ろに回り込み…刀を押さえようとした、その時だった。
「がっ、は…!?」
思い切り吐血した。腹が焼けるように熱い。傷は一つもついていないのに。
「え…?」
「黄!?」
「…何が起きたの?紫、黄は身体が弱いとか…」
「そんなはずないわ、というか…初めてよこんなの!」
「黄さん、大丈夫ですか!?」
「ぐ、げほっ、がっ…」
喋ろうとするたびに、血を吐いてしまう。
意識が急激に遠のく中で見たのは…泣きそうな紫様の姿だった。




