よく分かる精霊入門
「はぁ、はぁ…ごめんなさいね、まさか人型の精霊が居るなんて思わなくてね…」
「はぁ…」
「…ん、人型の精霊がどれだけ凄いか知らないって感じね。もしかしてそれを調べに?」
薬を吸い、顔色は悪いが幾分か落ち着いたパチュリーさんは、深く椅子に腰掛けてぐったりとしている。しかし、その目は輝いていた。
「ええ、そんなところです。精霊についてはよく知らなくて」
「…ん、わかった。小悪魔、精霊に関しての初歩の本をもってきて」
「分かりました」
パチュリーさんは、使い魔として契約している小悪魔さんを呼び、命令する。
「さてと、小悪魔が来るまでの間、ちょっと観察させてね…」
「フラーウム、パチュリーさんの所に行ってあげて」
「はーい」
「…ふむ、土属性みたいね…でも、人型にしては魔力が少ないような」
「ん、元々は黄の中で過ごしてるんだ。僕がそのまま出てたら結界に影響するって」
「ちょっと待って、精霊を体内に取り込んでるの…?」
「そうなりますね」
「…確かに、貴方の得体の知れない力の中に同じ魔力を感じるわね。…普通だったら精霊を取り込むなんてしないわよ」
え、そうなのか…?
「普通は、そのまま召喚して魔法を撃たせるか、召喚した後に宝石なんかに入ってもらって、それを媒体に魔法を撃ったりするのよ。…あ、来たわね」
「こちらですね?」
「ええ、ありがとう。元の仕事に戻ってちょうだい」
パチュリーさんの手元にある本は、表紙に魔法陣の書かれた仰々しいものだ。
文字も書かれているようだが、読めない。
「…どうやら貴方は読めないようね。挿絵も入ってるから、それを見せながら説明するわ」
「はい」
「まず、精霊は基本的に一つの属性に特化していて、他の属性と混ざることは無いわ。…そして、精霊にはランクがあるの」
「ランクですか…下級とか、上級とか?」
「ええ。まず下級精霊。召喚のすると…こんな風に色付きの火の玉のような感じで出てくるわ」
パチュリーさんが示した所には、確かに火の玉が幾つも浮かんだ絵が描かれている。
「次に、中級精霊。これを召喚すると…」
「虫、だとか…小さめの生物の形みたいですね」
「ええ。例えば火属性の中級精霊は火を吐くトカゲだとか、そんな風に知性があまりない生物の形をとるようになる。…この流れだと、上級精霊はどうなるか分かるかしら?」
「…ある程度知性のある大きな動物、ですか?」
「その通り。比較的哺乳類とかが多いわね。しかも大型の…獅子だったり、角鹿だったり」
「…あれ、でも人の形のが…?」
「…上級精霊の中でもトップクラスの魔力を保有しているものは、人型をとるらしいのよ。私も召喚しようとしたけど…難しかったわ」
「召喚の方法が難しかったんですか?」
「魔法陣を何重にも書かないといけないし、詠唱…呪文って言った方がわかりやすいかしら。半日とかかかるのよ」
「…ああ、何と無くパチュリーさんが召喚できなかった理由が分かりました」
喘息の発作が起きて、途中で途切れてしまうとか…そんなところだろう。
「一度召喚して、契約さえしてしまえば…後はその力を自由に使えたりするわ。威力は精霊が自ら放つのとは劣るし、自分の魔力も消費するけど」
「…自分の中に取り込まない理由って、何なんです?」
「考えたら分かると思うわよ。…容量がそれほど無い身体に強大な魔力の塊が入ってみなさい。すぐに破裂するわ」
「あー…」
「貴方の場合は…なんなのかしらね?その力に底が見えない上に、精霊の魔力がこれでもかって凝縮されて包まれている…ふざけた力だわ」
…視線が痛い。嫉妬してるのかな…。




