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外来人に対する『箱庭』の対応
「…済まないな、奔放な方で」
「いえ…あ、服ありがとうございました」
「ああ、いいんだ。ちょっと前にも似たような事があったし」
…似たような事?
「少し前に、結界の綻びから外界の人間が迷い込んでしまってね。妖怪に追いかけられて泥まみれで…」
「…なるほど。その人は今どこに?」
「ここでの記憶を消して、外の世界で平和に暮らしているよ。…たまにこうして入ってきてしまった人間は、特殊な例を除いて外へと帰すんだ」
「へえ…」
「ちなみに特例として、君のように記憶喪失になっている人だったり、こちらに来て妖怪に喰われたり、能力に目覚めた場合が挙げられる」
「…喰われなくて良かった」
「結構危なかったと思うよ?君が居た場所は妖怪の山だったみたいだし」
ストレートな名前だなぁ。…でも、周りに気配は感じなかったけれど。
「…視線だけは何処かで感じていたんだけど、あれは何だったんだろう」
「…視線、ね。恐らく哨戒の白狼天狗の能力で見られて…監視していたんだろうな」