瘴気の主
森の中は、異臭がずっと漂っていた。
木の根元や、幹には血がベットリと貼り付いてて…沢山の獣の骨が転がっていた。
「…こいつはなかなか酷いね。…容赦は要らないか」
武器は籠手の形にして、両腕に装備してある。
虫網型や、剣だとここでは取り回し辛いと思ったからだ。
「…先に進むにつれて、異臭がだんだんと濃くなっていくな。…取り返したとしても、ここにはもう住めないかもしれない」
ここまで濃いと、異臭というよりも瘴気とした方がいいかもしれない。
森に入る前に、身体の表面に張り付くようにバリアをしておいたので、影響は殆ど無いけれど、生身では入りたくは無い。
「……」
少し開けた場所に、これ以上無いほどの地獄みたいな光景が広がっていた。
血の池の中心に、異形の熊が立っていた。
腕が六本あり、それぞれの爪は真っ赤に染まっていた。
何故か四つもある目が、僕を捉える。
「…こいつ一匹でここまで…」
「…ゴァァァァァッ!!」
一瞬で目の前に三本の腕が迫ってきていた。
「ぐっ!?」
なんとかガードしたものの、そのまま吹き飛ばされて木に叩きつけられる。
「…痛てぇ。よくあれだけの数逃げられたな…」
…いや、狼たちは本当に大きな群れだったのだろう。ここに着くまでに…おびただしい数の骨が転がっていた。恐らくこいつに肉の全てを食い散らされたのだろう。
「流石に、生け捕りは無理だろうな…本気で殺るか!」




