…本当にボスなのか?
「っと。威力調整がまだまだかな。これだと怪我どころじゃ済まない」
光が収まり、黄の標的達が居た場所へと降り立つ。
「…ま、死なないように威力は調整しておいたけど…結構頑丈なんだな」
牙を剥き、焼け焦げた黒い毛皮の狼達は中心に立っている僕を威嚇している。ただ…ボスの姿が見当たらない。
(恐らく、手下の狼達に体力を削らせて仕留める算段かな)
数は、十かそこらしか居ない。さっきので深手を負ったのはもう逃げたのかな。
「ガァァァァッ!!」
「っと!飛びかかる力があるのは分かったけど…殺したくないんでね!」
武器を、虫網の形にする。
飛びかかった狼を捕らえ、力を失わせる。
ぐったりとなってはいるが、生命に危機が及ばない程度に調整してくれるみたいだ。
「っと、三匹…いや、五匹か!」
前から三匹、後ろから二匹の挟撃だ。…一度に捕らえるのは無理か。なら…
「鉄槌『爆砕波』!」
二枚目のスペルカードを取り出して、武器を変形。両手持ちのハンマーを作り、地を叩く!
「ギャンッ!?」
「ガァッ!?」
「ギッ!?」
前の三匹に、土塊の弾幕を浴びせ、戦闘不能にする。叩いた反動をそのまま使い、気を失ったまま突っ込んでくる三匹を飛び越え、二匹と対峙。…狼の数はだいたい半分くらいになっただろうか。
と、二匹はそこで止まり…姿を消した。
そして…ボスが姿を見せる。
「……グルルルッ」
「…体もかなり大きいけど、妖力がなかなかあるなぁ」
体長は三メートルほどで、身体には今までの戦いの勲章なのか、傷がたくさん残っている。
「…さてと。僕が勝ったら…もう人里は襲わないでくれよ」
ボス狼に向けて、走りだす。
向こうもそれを確認すると、一瞬のうちに目の前まで飛び、爪で薙ぎ払ってくる。
「遅いよ…!」
体勢を低くして躱し、刃の潰れた剣のようにした武器を胴に叩き込む。
「…はぁぁぁっ!」
そのまま振り抜いて、上空へと吹き飛ばした。
「さっきは避けたみたいだけど…これなら当たるだろ!光砲『サンライトバスター』!」
さっきよりも、力を込めないように。
しっかりと狙って、狼に向かって光の砲撃を放った。




